日本コカ・コーラ所属選手として世界の競泳界を牽引しながら、2016年4月に現役を引退。その後も「コカ・コーラの顔」としてオリンピックムーブメントを推進させることに意欲を見せてきた。2017年7月17日から放送が開始された同社のテレビCMにも“コカ・コーラ チーフオリンピック担当オフィサー”として出演している。
北島さんへのインタビュー後編では、引退後の活動や2020年東京五輪についての考えを聞いた。(聞き手はCYCLE編集部・大日方航)
インタビュー前編:北島康介が抱いている夢…次世代の選手に託す想い
---:現在、3年後の東京五輪に向けて期待されていることはありますか?
北島康介さん(以下、北島):日本選手の活躍は第一ですけれど、そこでスポーツが人の心にリアルに触れる部分に期待したいです。観ている人を感動させたり、悔しがらせたり。そういう感情を出せるのがスポーツ。こういった部分を含め、2020年に向けて熱量が高まっていってほしいと思います。選手は活躍すること、出場することに必死なので、今からプレッシャーをかけることは、僕の個人的意見としてはかわいそうだと思います。
どこの場所で行われても「オリンピックはオリンピック」という気持ちは選手の中にあると思いますが、「東京」という場所で行われることが、選手たちの背中を少しでも後押しできるような大会になってほしい。確かに「お祭り」でもありますが、「真剣勝負」という場でもあるので、見る側も真剣に見届けてほしいな、という気持ちです。
---:楽しみにしている競技、選手は?
北島:水泳をやっていたので、そこは外せません。しかし、新種目のスケートボードやクライミングなど、新しいスポーツを楽しめるのが2020年だと思います。以前から活躍していた選手が活躍してほしいというのはもちろんありますが、まだ時間もあるので、新しい選手が出てくる可能性もあります。2020年以降も活躍するような息の長い選手を応援していきたいと思います。
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---:競泳をしていたことが、人生に役立っていると思うことはありますか?
北島:色んな逆境にも負けない精神力だったり、ケガをして試合に出れないことだったり。自分はオリンピック二大会で金メダルを獲得しているので順風満帆に思われがちですが、やはり間の4年間には苦しい時期もありました。
そういう経験がこれからもいきていくのかな。何より周りの人が自分の背中を押してくれたので、また違った形で応援してもらえるような、そんな生き方をしていきたいと思います。
---:現役時代には見えなかったものが見えるようになったことは?
北島:それはあんまりないですかね。身体の負担とか、自分のことを考える毎日だったので。だから周りのことをより考えるようになったりとか、そういうのはあります。あまり自分をコントロールしなくてよくなった。少しラクになったといえばラクになったかな。
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---:現在目標にしていることはありますか?
北島:何かしらスポーツには関わっていきたいです。ただ、指導者には向いていないので、指導者にはならない(笑)。
子どもたちと水泳で触れ合ったりする活動は現在もしていますが、本当の指導はプロフェッショナルがいる。そういう指導者たちを育てていきたいと思います。また、自分もお世話になったトレーナーさんたちの知識をもっと日本から発信していき、バックヤードで選手をサポートしてくれる人たちをもっと世界に出していくようなことをしたいと思っています。
●北島康介(きたじま こうすけ)
1982年9月22日生まれ、東京都出身。5歳から水泳を始める。2000年シドニー五輪男子100m平泳ぎで4位入賞。アテネ五輪、北京五輪の男子100m・200m平泳ぎで二大会連続2種目で金メダルを獲得。2016年4月の日本選手権を最後に現役を引退。2014年6月より東京都水泳協会の理事を務め、2015年1月より自身の名を冠した競泳大会「KOSUKE KITAJIMA CUP(北島康介杯)」を開催。現在は「コカ・コーラ チーフ・オリンピック担当オフィサー」としても活動している。
取材協力:日本コカ・コーラ