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【THE REAL】アルビレックス新潟・大武峻が背負う使命…勝ち点1の重みを新天地に伝えるために

オピニオン コラム
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右足に残るシュートが当たった感触


シュートが当たった痕を、アルビレックス新潟のDF大武峻は試合後も覚えていた。必死に伸ばした右足のすねの部分をかすめた、FC東京のFWピーター・ウタカの一撃はコースを微妙に変えて飛んでいく。

タイミングを狂わされたのか。何度もファインセーブを演じてきた守護神、守田達弥も動けない。無情にもゴール右隅に吸い込まれていく弾道を、大武はピッチにはいつくばりながら見つめるしかなかった。

「防ぎたい失点でした。そんなに強いシュートじゃなかったけど、僕たちのブラインドになってキーパーには見えなかったんじゃないかと。それで逆を突かれた感じになってしまったので」

僕たちのもう一人とは、7月13日に電撃加入したMF磯村亮太のこと。ともに名古屋グランパスで今シーズンの開幕を迎えた2人で挟み撃ちにする刹那に、昨シーズンの得点王に右足を振り抜かれてしまった。

FC東京のホーム、味の素スタジアムに乗り込んだ7月30日のJ1第19節。前半12分にMFチアゴ・ガリャルドが頭で叩き込んだ先制点を、6連敗中だったアルビレックスは体を張って守り続けた。

守田は前半35、38、41、後半11分と4度も相手の決定機を阻止。新天地における初陣となった189センチの大武も、190センチのソン・ジュフンとのコンビで高く、険しい城壁を最終ラインの中央に築いた。

だからこそ、後半21分に犯した判断ミスが悔しかった。最終ラインとボランチの間でMF米本拓司の縦パスを受けたウタカが反転して、アルビレックスのゴールへ向かってきた直後だった。

「あのときだけボランチとの間に入られてしまったし、何よりもその後に中へ切れ込ませてしまったことが僕のなかではミスだと思っている。あそこで中ではなく、縦に行かせていたら。最後は何とか触りましたけど、ああいうふうにゴールされちゃったので」


ウタカに突かれてしまった一瞬の隙


縦に抜け出さざるを得ない状況を作り出していれば、ウタカはそのままの体勢から利き足とは逆の左足でシュートを放つか、あるいは切り返して右足にもち替えるかの二者択一を迫られていた。

いずれにしても、対面にいた大武が食い止めていた可能性が高い。しかし、ほんの一瞬ながら、ペナルティーエリア内の左から右へドリブルさせる隙を与えてしまった。こうなると主導権はウタカに握られる。

いつ、どんなタイミングで右足を振り抜かれるかわからない。危険を察知した大武は、とっさにスライディングタックルを繰り出した。以心伝心というべきか。磯村もウタカの後方から右足を伸ばしてくる。

しかし、残念ながらウタカのほうが一枚上手だった。ブロックに飛んでくる大武と磯村の姿を視界にとらえたうえで、それまで思い描いていたプレーをとっさの判断で変えていた。

「本当はもう少しボールを前へ運ぼうと考えていたんだけど、相手が2人も止めにきていたから早目にシュートを打った。あの位置からなら味方のブラインドになって、相手のキーパーも僕のシュートが見えづらかったはずだからね」

大武が後に「しまった」と心のなかで呟いたブラインドを、ウタカはまさに利用していた。元ナイジェリア代表がもつ技の前に同点とされたアルビレックスに、勝ち越し点を奪うチャンスは巡って来なかった。

最後は引き分けで勝ち点1でも得られれば、という戦い方に徹した。実際にその通りになった。7試合ぶりとなる勝ち星は逃したが、連敗を6で止めたことをポジティブに受け止めたいと大武は力を込める。

「アウェイということで、今日みたいに最後は勝ち点1でもいい、というくらいに割り切って戦うのもひとつの手だと思います。今日もそれほどいい内容とは僕は思っていないし、まだまだよくなるはずなので」


アルビレックスから届いた2度目のオファー


アルビレックスから獲得のオファーが届いたのは、5月下旬が2度目となる。最初は昨シーズンのオフ。大武は熟慮した末にグランパスに残留して、自身にとって初めてとなるJ2で戦う覚悟を決めた。

「やはり僕たちがJ2に落としてしまったので。だからこそ、グランパスをしっかりとJ1に上げたい、という意気込みとともに残ったんですけど。その力にはなれなかったので」

昨シーズンは出場20試合、プレー時間1637分と3年目でともに最高の数字を記録した。一転して前川崎フロンターレ監督の風間八宏監督体制になった今シーズンのグランパスで、大武は居場所を失った。

ピッチに立ったのは、先発フル出場したジェフユナイテッド千葉との第3節のみ。以降はリザーブに一度入っただけで、ベンチ外を強いられる日々が続いた。そして、再びアルビレックスから声がかかった。

福岡大学4年生だった2014シーズンからJFA・Jリーグ特別指定選手して登録され、J1の舞台でも起用してくれたグランパスには深い愛着を抱いていた。それでも、完全移籍で去ることに迷いはなかった。

「試合に出たいという思いもありましたけど、だからといって移籍した先で試合に出られる保証というものもない。それよりもアルビレックスから必要とされている、ということをしっかりと感じられることができたので、それに惹かれて移籍という決断を下しました」


第3節を最後に、アルビレックスはJ2への降格圏内にあえいでいる。呂比須ワグナー新監督が初陣を飾った、5月20日の北海道コンサドーレ札幌戦が現時点で最後の勝利。順位も最下位から抜け出せない。

リーグワースト2位の13得点以上に深刻なのが、ワーストの40失点と崩壊した守備。キャプテンのDF大野和成もけがで長期離脱している。後がない危機で救世主を託されたことを、24歳の大武は意気に感じた。


新天地・アルビレックスで与えられた使命


昨シーズンのJ1で16位に終わったグランパスは、クラブ史上初のJ2降格を余儀なくされた。15位を争った相手はくしくもアルビレックス。最終的な勝ち点は30で並び、得失点差でわずかに後塵を拝した。

だからこそ、無念の涙を流すとともに、後悔の思いも頭をもたげてきた。たったひとつでもいいから負けを引き分けにできていたら、どんな形でもいいから勝ち点1をもぎ取っていたら、と。

そのアルビレックスの一員となったいま、昨シーズンに味わわされた教訓を生かすことができる。勝利に見放され、自信を喪失しかかっているチームを最後尾から鼓舞することがまず大事になる。

「6連敗中のチームだったので、アウェイで勝ち点1をしっかり取れたことはプラスにとらえたい。僕自身は昨シーズン、勝ち点1に泣いたので、その重みというものも知っている。ただ、勝ち点3を取れた試合でもあったので、満足はしていない。しっかりと反省しながら、次の試合に生かしていきたい」

大武の移籍が発表された6月23日から約3週間後に、ザックジャパンに招集されたこともある26歳のボランチ・磯村も完全移籍で加わることが決まった。勝ち点1の重みを知る、心強い仲間が増えた。


「昨シーズンのグランパスと、今シーズンのアルビレックスを直接比較できるわけではないですけど。それでも残留争いをしているチームは、失点が多くなってくるとどうしても精神的にきつくなってしまう。僕に与えられた使命は、失点をできるだけ減らすかだと思っています」

J1残留圏内の15位・ヴァンフォーレ甲府との勝ち点差は7と開いているが、リーグ戦はまだ15試合も残っている。2004シーズンから戦ってきたJ1の舞台に立ち続けるために。居場所を得るチャンスを与えてくれた感謝の思いを力に変えて、大武はアルビレックスのゴール前で体を張り続ける。

《藤江直人》

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