【THE REAL】浦和レッズ・槙野智章が感じた手応え…らしくない不細工な完封勝利の先に待つ逆襲 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】浦和レッズ・槙野智章が感じた手応え…らしくない不細工な完封勝利の先に待つ逆襲

オピニオン コラム

槙野智章 参考画像
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前後半を通じて放ったシュートはわずか4本


お世辞にも華麗なサッカーとは言えない。特に後半に至っては、浦和レッズが放ったシュートは26分のMF武藤雄樹の1本だけ。その後はアディショナルタイムを含めて、実に25分近くも主導権を握られ続けた。

それでも自分たちのゴールだけは、最後まで割らせなかった。体を張り、投げ打ち、傷ついては苦悶の表情を浮かべ、イエローカードをもらっても、前半19分にMF柏木陽介があげた値千金の先制弾を死守した。

レッズらしくない、と言われてもかまわない。どんな形でもいい。勝利をむしり取り、なおかつ相手を零封した先に新たな希望の灯が見えてくる。不退転の決意を胸に秘めながら、DF槙野智章は戦い続けた。

「正直言って、皆さんが考えている以上に、僕たちはプレッシャーを感じていた。そのなかで結果と内容とが伴い、連続失点していた試合を止めることができた。もっともっと直さなきゃいけないところもありますけど、ここからが再出発になるはずですし、今夜くらいは勝利の余韻に浸りたいと思っています」

不退転の決意を胸に秘めて戦う
(c) Getty Images

敵地・山梨中銀スタジアムに乗り込んだ9日のJ1第21節。キックオフ前の時点でレッズはリーグトップの47得点を叩き出し、対するヴァンフォーレ甲府はリーグワーストのわずか11得点にあえいでいた。

しかし、終わってみればレッズが放ったシュートは4本だけ。必死に記憶を紐解いてみても、これだけ攻めあぐねた90分間は思い出せない。試合後に公式記録も見た槙野も、さすがに驚きを隠せなかった。

「放ったシュートが4本というのは、攻撃を掲げるチームとしてはいただけない数字です。それでも今日に限っては相手をゼロに抑えることが、僕たちに求められたテーマのひとつでもあったので。パスをつなげそうな場面でもしっかりクリアする割り切りというか、明確な判断が非常によかったと思う」

ピンチになりかけた状況で声を出し続けた90分間


キックオフからわずか3分。左コーナーキックのこぼれ球を拾ったヴァンフォーレが仕掛けたカウンターは、リスクマネジメントを怠らなかった槙野が繰り出した、スライディングタックルによって阻止された。

自分たちのパスミスからピンチを招いた同33分。右サイドに開いてパスを受けたFWウィルソンにペナルティーエリア内へ侵入されてしまったが、強烈なシュートは槙野が腹の部分で必死にブロックした。

4分後にはFWドゥドゥの後方から危険なタックルを一閃。イエローカードをもらい、敵地のスタンドから「槙野、この野郎、謝れ!」と罵声を浴びせられても、その後のプレーが消極的になることはなかった。

「それが本来の僕の持ち味でもあるし、仕事でもあるので。気持ちの入ったプレーを見せ続けることで試合の流れも、そしてスタジアムの雰囲気もグッと変わる。逆にそういうプレーができなければ勝ち点3も、ましてや無失点というものもついてこないと思っているので」

前節の大宮アルディージャとの「さいたまダービー」を、埼玉スタジアムのスタンドで観戦していた。7月29日の北海道コンサドーレ札幌戦で一発退場となり、リーグから1試合の出場停止を科されていたからだ。

試合は2‐2で引き分けた。リーグ戦における連続失点は「14試合」に伸び、順位も8位と変わらなかったが、槙野の目にはそれほど悲観的な内容には映らなかった。改善すべき最後のピースが見つかったからだ。

「足りなかったのは結果と、あとはちょっとしたミスが失点につながっていた。ピッチ上の全員がコミュニケーションを取れるように、チーム全体をオーガナイズすることも僕の仕事だった。疲れて運動量が落ちたとき、押し込まれたときに何をしたらいいのか。そこの声掛けを明確に、バランスよくできたと思います」

気合いの入ったプレーでチームを鼓舞
(c) Getty Images

ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督への恩返しを


槙野の退場で数的不利に陥ったコンサドーレ戦は、最終的に0‐2で完敗した。一夜明けた7月30日。ミシャの愛称で親しまれ、2012シーズンから指揮を執ってきたミハイロ・ペトロヴィッチ監督が解任された。

当然のように、レッズ全体にかつてないほどの激震が走った。特に槙野にとっては、プロとしてスタートを切ったサンフレッチェ広島時代を含めて、トータルで実に10年間も師事してきた恩人でもあった。

ただ、いつまでもショックや悲しみを引きずるわけにはいかない。勝利することが、レッズを蘇らせることがペトロヴィッチ監督への恩返しにもなる。コーチから昇格した、堀孝史新監督の戦術を体に叩き込んだ。

「ミシャがどうこうじゃないですけど、堀さんになってから、僕と森脇(良太)君の両ストッパーが、皆さんも見てわかるようにそれほど高くない位置を取るようになりました。実際に相手にボールをもたれたときには中に絞る。だからこそ、センターの遠藤航の両脇のスペースが狙われないようになった。

バランスという意味で少しずつ、少しずつ変わってきているなかで、やはり結果を出さなきゃいけない。最後はクロスに対して体を張る、投げ出すといったところで守れたのはよかったですけど、まだまだ満足することはできない。もっとよくなるし、もっとよくしていかなきゃいけないと思っています」

Jリーグチャンピオンシップで鹿島アントラーズに屈したものの、年間総合順位では1位を獲得した昨シーズン。強さの源泉となったのは攻撃力以上に、リーグ最少の28失点で踏ん張り続けた堅い守備だった。

翻って今シーズンは、すでにリーグワースト3位タイとなる38失点を献上している。メンバーは変わっていない。ならば、必ず立て直せる。その第一歩が無失点試合となるからこそ、泥臭く体を張り続けた。

新天地・ドイツへ旅立つ関根貴大のために


ヴァンフォーレ戦は実力を認めてきた後輩、MF関根貴大のラストゲームでもあった。ドイツ2部のインゴルシュタットへ移籍する決意を固めた関根から、ケルンでプレーした経験をもつ槙野は相談を受けた。

「言葉と文化について、ですね。インゴルシュタットは南に位置するので、方言などもあって北のケルンなどとは全然違う。シンプルなドイツ語を覚えてもまったく違う挨拶が返ってくる、という話はしました。もちろん、時間が解決するだろう、というアドバイスも含めてですけどね。

結果論ですけど、彼がヨーロッパへ行くことは僕のなかでは想定内でした。頼もしい挑戦だし、ファンやサポーター、そして僕たちにも寂しい気持ちはある。それでも彼の活躍が刺激に、エネルギーにもなる。僕たちも負けないように、もっと上へ突き進んでいかないと」

今後も関根貴大と切磋琢磨
(c) Getty Images

ドイツへ旅立つ前夜のヴァンフォーレ戦で、関根は先発した。誰もが可愛がってきたからこそ、勝って有終の美を飾らせたかった。無失点という結果も添えて、憂いを断ち切らせて新天地へ送り出したかった。

後半13分のピンチでは、GK西川周作がこぼれ球に詰めたDF新里亮と激しく接触しながらゴールを死守。背後のカバーに走り、最後は体を投げ出して転がったMF菊池大介ととともに苦悶の表情を浮かべた。

終了間際には、キャプテンのMF阿部勇樹が接触プレーで頭部から出血。それでもテーピングを巻く応急処置だけで、すぐにピッチへ戻った。チーム全体が無骨に戦い続けた。槙野が力を込める。

「多少は納得のいかない不細工な展開だったけど、今日に限ってはお許しを、という感じですね」

レッズらしさをかなぐり捨ててでも、勝ち点3にこだわった価値ある一夜。勝利する喜び、相手を零封する快感を思い出したレッズが期す捲土重来が、残り約3分の1となったJ1戦線を盛り上げる。

《藤江直人》

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