【THE INSIDE番外編】インターハイには将来の関取候補が勢ぞろい…野球のドラフト候補を見る感覚にもなる | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE INSIDE番外編】インターハイには将来の関取候補が勢ぞろい…野球のドラフト候補を見る感覚にもなる

オピニオン コラム
安定した強さを示した鳥取城北・石岡君
安定した強さを示した鳥取城北・石岡君 全 25 枚 拡大写真
2017年の南東北高校総体。相撲競技の会場は、宮城県の湯治で知られる鳴子温泉郷にある鳴子スポーツセンターだった。

東北新幹線の古川駅から乗り換えて、陸羽東線(通称「奥の細道湯けむりライン」)を30分ほど乗り鳴子温泉駅のひとつ手前、鳴子御殿湯駅で降りる。すると、駅舎のすぐそばにその建物がある。

陸羽東線は極端に列車の本数が少なく、2時間に一本くらいしかないので、しっかりと時刻を確かめて乗車しないといけない。しかし、下車したら、すぐそこに見えるので誰でも迷うことなく会場に行くことは出来る。そういう意味では、交通の便はともかくとして立地は悪くはないのではないかとも思う。

鳴子御殿湯駅からの眺め

普段は、長閑で山と緑しかないような場所であろうが、この3日間だけは、大きな身体の高校生たちが多く集まってきたのだ。そして、スポーツセンター前の広場に仮設テントと土俵が設けられて、そこが稽古場に設定されていた。稽古場では、「パチン!」という身体と身体のぶつかる音や、「よしっ!」という気合を入れる声などが聞こえていた。そんな雰囲気で独特の緊張感を醸しだしていた。

試合前の緊張感というのは、どの競技でもそれぞれの雰囲気があるのだが、何となくラグビーとボクシングの両方の空気が感じられて、相撲は様式美を大事にする一種の日本文化ではあるが、格闘競技なのだということを改めて認識させられた。

そして、この会場には何年か先の大相撲で確実に幕内で相撲を取っているであろう関取候補や、もっと上の三役や大関などにもなっていき、やがては角界を担っていく期待の選手も多くいるはずである。そんな可能性を思うだけでもワクワクしてくる。ある意味では、好々爺許攸のドラフト候補に、将来のプロ野球選手、スター選手をイメージしていくのと同じだともいえるのではないだろうか。

そんな目線をもって選手たちを見ていくと面白い。まずは、その血筋からも一級品と思われるのが、日体大柏のスカラグチャー・ビャンバスレン君だ。日体大柏は団体戦の出場を拓大紅陵に阻まれていたので個人戦のみの出場となったが、個人決勝トーナメントの決勝まで進出した。決勝は史上初の同じモンゴルからの留学生同士の対決となったが、135kgと体格にも恵まれているアマルサナー君に立ち合いのもろ手突きで慌てさせられて主導権が握れないまま押し出された。しかし、投げ技の力はさすがだった。

準優勝のビャンハスレン君(日体大柏)

準々決勝では、ここまで健闘していた花田秀虎君(和歌山商)を上手投げで下すのだが、その際に示したガッツポーズの右腕の上げ方などは、朝青龍のそれに酷似していた。この先の進路が注目される逸材であることは間違いない。

そのビャンバスレン君を決勝で下した鳥取城北のアマルサナー君も、もちろん将来の関取候補だ。相撲の上手さという点では、今でも幕下中位くらいで通用するのではないだろうか。大学進学後に角界入りするのであれば、学生相撲でタイトルを取って付け足しでの登場が期待される。相撲の完成度という点では一番であろうか。

同じ鳥取城北の石岡弥輝也君も安定感は十分だった。団体戦では最もキーとなる3人目として戦う中堅を務めたが、ひとつも落とさなかったのはさすがだ。落ち着いた立ち合いと、落ち着いた出足。それでいて消極的ではなく、攻撃的に踏み出していくという相撲。大相撲で言えば、玉鷲や千代翔馬の相撲に似ているという印象だった。

血統の良さという点で言えば、埼玉栄の納谷幸之助君は外せないだろう。祖父があの昭和の名横綱・大鵬で、父親は元関脇貴闘力だ。型にハマったら盤石の強味を見せていたが、父親同様にと言ってはいけないかもしれないが、時に無造作に引いてしまう癖が出て、自らを窮地に追い込む場面も見られた。しかし、そのあたりはこれからの稽古で修正していくところであろうか。体格もしっかりとしていて本人も大相撲入りを目指しており、高校から直接大相撲入りが見込まれそうだ。

埼玉栄では、齋藤大輔君も素材力の高さが光った。2年生で190cm130kgという身体。高校生の相撲の選手としては非常にバランスが取れているという感じだが、あと1年でまだまだ成長しそうだ。相撲ぶりも落ち着いているという感じだった。また、手計富士紀君も190cm140kgというサイズで文句なしだ。3年前には全国中学生大会で優勝という実績があり、その素材力の高さは早くから評価されていた。ただ、この大会の個人戦では、優秀32選手を決めるトーナメント戦で敗退してしまった。

他には、チームとしても初のべスト4入りで健闘した足立新田は千代大龍の出身校でもあるが、羽出山将君の素質の良さが光っていた。192cm140kgという体格も文句なしである。相撲の取り口も落ち着いていて、どっしりとした安定感があった。大学相撲へ進んでも即戦力になるのではないだろうか。

しかし、足立新田は羽出山区だけではなかった。むしろ、二見颯騎君、今関俊介君という選手が、身長は170cmそこそこで、体重としても100kg前後の選手が、機敏な動きで良い相撲を取っていたのが印象的だった。大相撲の石浦を思わせるように筋肉質だった。

足立新田・二見颯騎君

高校相撲の場合、あまりにも体格的に大きすぎるよりは、むしろ筋肉質でハンマー投げや、ラグビーのFW1列目の選手みたいな体格の選手で足腰が強ければ、土俵際でこらえる力も発揮でき、勝負強い相撲が取れるのではないだろうか。

また、団体戦の1回戦で、金沢学院の前田悠翔君相手に「いぞり」の大技を見せたのは岐阜農林の田畑奨次郎君だった。172cm95kgだが、相撲を続けていけばそのポテンシャルは高そうで、宇良のような力士になっていくかもしれないという期待がもてる。

高校相撲の選手たちは、これから大いに伸びていく余地があるだろう。だから、今の段階でどうのこうのとは言えないのだろうけれども、素材の宝庫であったことだけは間違いない。ここにいた選手たちの何人かが、大学相撲に進んでいくであろうし、直接大相撲入りするかもしれない。

個人戦の上位に入っていた選手は、実力的にも三段目の上位か幕下の下位あたりの力は十分にあるのではないかと思う。

《手束仁》

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