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【THE REAL】ハリルジャパンへの推薦状…柏レイソル・伊東純也のスピードと成長への貪欲な思い

オピニオン コラム
伊東純也 参考画像
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スピードと存在感で防いだ失点と敗戦


ボールに触ることなく失点を防いだ。存在感で最悪の事態を阻止した。雨中の激闘となった、16日の明治安田生命J1リーグ第26節。50メートル走で5秒8を誇る伊東純也の快足が、柏レイソルを救った。

キックオフ前の時点でレイソルが3位で、対する横浜F・マリノスが5位。上位戦線への生き残りをかけた激突はレイソルが後半終了直前に追いつき、1‐1で5分間のアディショナルタイムに突入していた。

迎えた49分。マリノスにビッグチャンスが訪れる。敵陣の右サイドでパスを受けたMFマルティノスが、利き足の左から絶妙のスルーパスを一閃。ターゲットのMF齋藤学が、最終ラインの裏へ飛び出した。

マークするのは、後半途中からポジションを右サイドバックに一列下げていた伊東。パスが出る直前に自身の左側をチラリと見て、齋藤の存在を確認していた24歳は、わずかながら遅れて齋藤を追走する。

それでも、瞬く前にマリノスのキャプテンにして「10番」との距離を詰めていく。日産スタジアムのカクテル光線に映えるレイソルの黄色いユニフォームが、幾度となく右後方から視界に入ってきたのだろう。

「伊東純也の足が速いから、彼の前に出ようかなと思った瞬間、キーパーが前に出てきているのが見えていなくて。僕の力不足ですね」

齋藤が思わず天を仰いだ。伊東のスピードを意識するあまり、レイソルの日本代表GK中村航輔が飛び出してきていることに気がつかなかった。中村が伸ばした右手にボールが弾かれ、失点の危機を回避できた。

勢いあまってそのままゴールまで走っていた伊東は、左ポストに背もたれながら大きく息をついた。敗戦と4位転落を防いだ価値ある走り。最大の武器とするスピードについて、試合後にはこう言及している。

「自分の特徴でもあるので、上手く使っていけたらいいなと思っています」


右サイドハーフから右サイドバックへ


うっぷんを晴らした場面でもあった。伊東と右サイドバックの小池龍太からなるレイソルの右サイドは、マリノスがストロングポイントと自負している、左サイドのトライアングルに前半から圧倒され続けた。

左サイドバックの山中亮輔と齋藤で形成される縦のラインに、左利きのトップ下・天野純が巧みに絡んでくる。特に山中は昨シーズンまでレイソルに所属し、1年間だけながら、伊東と苦楽をともにした仲だった。

「僕とリュウ(小池)のところで数的優位を作られて。齋藤選手と天野選手、そしてヤマ(山中)で3対2みたいなかたちになって、上手くやられて難しい試合になった、というのはありますね」

開始わずか9分。左タッチライン際を攻め上がった山中のクロスを味方が弾き返すも、こぼれ球を拾った齋藤に豪快なミドルシュートを叩き込まれて先制された。齋藤は24試合目にして待望の初ゴールを決めた。

中村の好セーブに救われたものの、前半アディショナルタイムにも冷や汗をかかされた。3人のパス回しで完全に右サイドを崩され、最後は山中の折り返しに齋藤が完璧なタイミングで右足を振り抜いた。

レイソルの下平隆宏監督は、後半からマイボール時にはキャプテンのボランチ・大谷秀和を最終ラインに下げた。3バック気味にしたうえで、左右のサイドバック、ユン・ソギョンと小池を高い位置に張らせた。

たとえば右サイドは小池、伊東にFWハモン・ロペスが絡むことで数的不利を解消できた。それでもゴールが奪えないと見るやFW大津祐樹を投入。小池が交代を告げられ、伊東が右サイドバックに回った。

「ウチがずっと押し込んでいた展開だったので。攻撃面では右サイドに張ってクロスを上げる、あるいはボールを中につけて入っていくという指示だったので、それほどサイドバックという意識はなかったですね」


さらに成長を遂げた先にみすえるA代表


ヴァンフォーレ甲府からレイソルに移籍した昨シーズン。当時のミルトン・メンデス監督から、シーズン開幕前に右サイドバックへの転向を告げられた。もちろん、伊東にとっては青天の霹靂だった。

もっとも、メンデス監督は3試合で辞任。ヘッドコーチから昇格した下平監督のもと、いまも主戦場するとする右サイドハーフに戻った。それでも、スクランブルな状況では右サイドバックの経験も生きてくる。

何よりも攻撃面で、今シーズンの伊東は飛躍的な成長を遂げている。8月13日の清水エスパルス戦では、自陣中央でのボール奪取から、自慢のスピードを駆使して60メートルを疾走してゴールネットを揺らした。

もっとも、神奈川・逗葉高校時代から、自らに「速いだけの選手とは思われたくない」と言い聞かせ続けてきた男は、続く同19日のガンバ大阪戦ではたとえるなら「柔のプレー」で非凡さを存分に見せつけた。

カウンターから右タッチライン際でロングパスを受けると、縦へ突破すると見せて中央へ旋回。戸惑うガンバの守備陣をさらに翻弄するかのように、左足でカーブをかけた、芸術的な一撃をゴールに吸い込ませた。

最終候補にまで残ったものの、出場資格のあった昨夏のリオデジャネイロ五輪代表には入れなかった。レイソルでさらに心技体を磨き、結果を出し続けた先に、新たなチャレンジの舞台が待っていると信じている。

リオデジャネイロ五輪出場は逃す
(c) Getty Images

「いまはリーグ戦に集中しています。ここで結果を出せなければ、そこには呼ばれないと思っているので。チームが優勝できるように頑張っていけば、おのずとそこも見えてくると思っています」

伊東が言及した「そこ」とは、もちろんA代表のことだ。突出したスピード。攻め上がってからの攻撃のバリエーションの多さ。前線からプレスをかけ続けられるスタミナ。すべてが及第点に近いと言っていい。


ヴァンフォーレ甲府に抱く感謝の思い


直近のハリルジャパンでは、右サイドハーフか右ウイングで31歳の本田圭佑(パチューカ)、23歳の久保裕也(ヘント)、そして22歳の浅野拓磨(シュツットガルト)がプレーしている。

ワールドカップ予選で初めて勝利し、6大会連続6度目の本大会出場を決めた8月31日のオーストラリア代表戦。先発に抜擢された浅野は先制弾を決めて、チームを勢いづけるヒーローになった。

浅野も四日市中央工業高校、サンフレッチェ広島、いま現在はドイツを舞台に爆発的なスピードで勝負している。意識することは、と聞かれた伊東は「特にないです」と苦笑いしながらこう続けた。

「拓磨もスピードを武器にして、ワンチャンスをものにしたところはすごいと思いました」

マリノスとはちょっとした縁がある。中学進学前にジュニアユースの入団テストを受けるも、不合格となった。逗葉高校から進んだ神奈川大学では、3年と4年を関東大学リーグの2部で戦った。

それでも2年間で27ゴール&18アシストをマーク。ヴァンフォーレへの入団を勝ち取り、1年目の2015シーズンにJ1で見せつけたスピードが、レイソルからのオファーを手繰り寄せた。

マリノスの件は「全然意識していないですね」と屈託なく笑う。一方で入団からわずか1年で、最後は快くレイソルへ送り出してくれたヴァンフォーレには、いまも大きな恩を感じている。

だからこそ、レイソルで確かな結果を残すことで感謝の気持ちを伝えられる。マリノス戦では後半に主導権を奪い返し、終了間際に同点に追いつき、冒頭で記した伊東のスピードでドローにもち込んだ。

首位・鹿島アントラーズとの勝ち点差は「8」に広がったが、まだ直接対決を残す。だからこそ、もう負けられない。スピードに絶対に自信を寄せ、貪欲に成長しながら、伊東がレイソルを力強くけん引しいていく。

柏レイソル 参考画像

《藤江直人》

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