【THE REAL】川崎フロンターレ・森谷賢太郎が魅せた意外性…驚天動地のゴールが際立たせる強さ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】川崎フロンターレ・森谷賢太郎が魅せた意外性…驚天動地のゴールが際立たせる強さ

オピニオン コラム
川崎フロンターレ・森谷賢太郎 参考画像
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韓国代表の守護神を翻弄したスーパーゴール


宙高く舞う無回転のボールが、揺れているのがはっきりとわかった。しかも、向かって右の方向へ大きく曲がり、ゴールの倍近くある高さから急降下してくる。それも、スピードを加速させながら。

セレッソ大阪のゴールマウスを守って9シーズン目を迎え、韓国代表の守護神も拝命したキム・ジンヒョンもなす術がない。192センチ、82キロの体を必死に伸ばしても、まったくボールに届かない。

川崎フロンターレのホーム、等々力陸上競技場に駆けつけた2万4225人の大観衆を驚愕させたスーパーゴールが決まったのは9月30日の明治安田生命J1リーグ第28節の後半13分だった。

敵陣のほぼ中央でボールを受けたフロンターレのMF森谷賢太郎が前を向いた瞬間、ゴールまでの視界が開けた。セレッソのボランチ、山口蛍と秋山大地もアプローチをかけてくる気配がまったくない。

距離にして35メートルはあっただろうか。まさかシュートを打ってくるとは、セレッソの誰もが思っていなかった。キム・ジンヒョンも大きく前へ出ていた。だからこそ、森谷には閃くものがあった。

「トラップしたときにパッと前が開けたので、これでシュートを打ったらどうなるかなと思って。(鬼木達)監督からも『チャンスがあれば、どんどん打っていい』と言われていたので」

迷うことなくモーションに入り、右足を思い切って振り抜く。夜空を切り裂いていく弾道には、味方も戦慄を覚えていた。大黒柱の36歳、MF中村憲剛は自身のツイッターで試合後にこう呟いている。

「あのシュートはちょうど横から見ていたけど意味のわからない軌道を描いていました」


揺れて、曲がって、落ちながら伸びてきたボールは右ポストに当たり、そのままゴールネットに吸い込まれた。この夜に生まれたフロンターレの5ゴールのなかでも極上の一撃に、誰もが酔いしれた。





不規則な軌道を生み出した高度な技術と勇気


偶然から生まれたゴールではなかった。意識して、狙って遠い距離から蹴った。5‐1で快勝した余韻が残る試合後の取材エリア。大勢のメディアに取り囲まれた森谷が、自信を込めて言い切った。

「いままでもチャンスがあれば(蹴ってきた)。打たなきゃ入らないので。ボールのどこに足を当てたらどういうシュートが飛んでいくのか、というのは練習のなかでもだいたいつかめているので」

2年前の11月7日は浦和レッズ戦で、昨年10月22日にはサンフレッチェ広島戦で、それぞれ豪快なミドル弾を決めている。しかし、森谷によれば「今回とは蹴り方がちょっと違う」という。

「ちょっと当たり損ないみたいな感じなんですけど、ああいうほうが意外と不規則みたい(な軌道)になるというのは、自分のなかで何となくコツみたいなものをつかんでいたので。いろいろな球種(のシュート)を蹴れるほうが、プレーの幅も広がってくると思っているので」

レッズ戦もサンフレッチェ戦も、ペナルティーエリアのちょっと外側からの一撃だった。距離にして20メートル弱。ゆえにボールの芯を、強く押し出すような蹴り方でゴールを打ち抜いた。

翻ってセレッソ戦における距離は前述した通り。練習では何度も成功させているとはいえ、実戦のピッチで、あえてボールの芯を外した蹴り方を演じるには高度な技術と勇気が必要になってくる。

「カッコよくそう言えればいいですけどね。まあ、そういうシュートがいいところに飛んでくれて、結果的に入ってよかったです。今シーズンはまだ2点目なので、もっともっとゴールを取れるように練習から頑張っていきたい」

横浜F・マリノスから移籍して5シーズン目。9日前に29歳の誕生日を迎えたばかりの森谷が「シュートの球種ですか? ちょっとわからないですね」と屈託のない笑顔を弾けさせた。


戦線離脱を強いられた「10番」の思いも汲んで


なかなかピッチに立てない日々が続いた。セレッソ戦がキックオフされる前の段階で、出場試合数は半分に届かない「12」に、そのうち先発はわずか「2」に、プレー時間は「460分間」にとどまっていた。

主戦場とするボランチのファーストチョイスは、エドゥアルド・ネットと昨夏のリオデジャネイロ五輪代表の大島僚太。しかし、前節のヴィッセル神戸戦の後半途中で、大島が故障でピッチを去った。

左太もも裏の肉離れで、全治まで約2ヶ月を要すると診断された。バヒド・ハリルホジッチ監督も注目し、日本代表への再招集も検討するほどパフォーマンスがあがっていた矢先のアクシデントだった。

「けがをして一番辛いのはやっぱり(大島)僚太だと思うので。試合前にも『頑張ってほしい』と言ってくれましたし、そういう僚太の思いも汲んでプレーしました。ボールにどんどん絡んで、リズムを作るのが自分の特徴。守備でも走って、球際でも強くいくことを心がけました」

嫌なジンクスも吹き飛ばした。フロンターレの日本人選手として、初めて「10番」を託されて2年目になる大島が先発に名前を連ねなかったここまでの5試合で、2敗3分けとひとつも勝てていなかった。

「周りの人たちはそのように比較すると思うし、僚太がいないからダメだと言う声もあると思う。もちろん自分のなかでは、そういう考えはなかった。チームのみんなで戦っていこう、という思いが強いので。その意味でもチャンスをもらった選手が、やらなきゃいけなかった。

自分はプロなので、試合に出ているときも、出られないときもサッカーとしっかり向き合わなきゃいけない。今年はそういう姿勢を、シーズンの最初から自分のなかで貫けている。ファンやサポーター、家族。いろいろな人たちのおかげだと思っているし、だからこそ勝ててよかった」

森谷賢太郎 参考画像
(c) Getty Images


クラブ悲願の初タイトルを獲得するために


大島だけではない。ガンバ大阪から移籍して1年目で、すでに自己最多の9ゴールをあげて、攻守両面で欠かせない存在となったMF阿部浩之も右ひざ骨軟骨損傷で約1ヶ月の戦線離脱を強いられた。

シーズンも終盤戦に近づいてきた正念場。蓄積されてきた疲労と相まって、予期せぬアクシデントに見舞われるケースも少なくない。だからこそチームの総合力が問われると、中村も力を込める。

「チームとしてのベースはあるわけだから。誰が入ってもハードワークするところ、球際で激しくいくところ、ボールを動かすところや握るところはぶれていない。いろいろな選手が出ながらも自分たちらしさを出せるようになっているし、そこからそれぞれが個性も出せていると思う」

森谷でいえば、最大の個性は敵味方の虚を突く、意外性に富んだミドルシュートとなる。チーム内に理想的な循環が脈打っている証であり、ゆえに失速していくこともない。

キックオフ前の時点で、首位を走っていた鹿島アントラーズがサガン鳥栖に苦杯をなめたという情報が入っていた。2位という順位は変わらないが、残り6試合で勝ち点差は「8」から「5」に縮まった。

日本代表戦でJ1が中断される間には、ベガルタ仙台とホーム&アウェイで戦うYBCルヴァンカップの準決勝が4日と8日に待つ。立ち止まっていられないとばかりに、森谷も気持ちを切り替えている。

「チームを楽にできたとは思うけど、自分のゴールはおまけみたいなもの。チーム全員でしっかり走って、勝てたことがよかった。これからも、ひとつひとつ戦っていきたい」

これまでにJ1とYBCルヴァンカップでそれぞれ3度、そして今年元日の天皇杯でフロンターレは2位に甘んじてきた。悲願の初タイトル獲得へ。森谷が放ついぶし銀の輝きが、今シーズンのフロンターレの強さの象徴となる。

《藤江直人》

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