【村田諒太 再戦へのゴング vol.3】ノックアウトのチャンスを逃さないために | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【村田諒太 再戦へのゴング vol.3】ノックアウトのチャンスを逃さないために

オピニオン コラム
【村田諒太 再戦へのゴング vol.3】ノックアウトのチャンスを逃さないために
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村田諒太(帝拳)の右腕が有明コロシアムを沸かせた。ロープ際に追い込んだアッサン・エンダム(フランス)の顔面をとらえ、ダウンを奪ったのだ。

4回に起きたこの瞬間は村田優勢に思えたが、しかしWBA世界ミドル級王座決定戦は最終12回までもつれ込んだ末にエンダムの判定勝ちとなった。

・前回の【村田諒太 再戦へのゴング vol.2】ボクシングは己の存在を示すもの

村田諒太選手 撮影:五味渕秀行

チャンスがあればノックアウトを狙う


5月20日に行われた前回のエンダム戦で、村田はあと一歩詰め切ることができていなかった。パンチを受けても驚異的な回復力で試合を続行することで知られるエンダムへの警戒と、自身のスタミナも考慮して試合展開を考えていたことが、結果的に裏目に出てしまった。

世界レベルの相手と12回まで戦える、自分のパンチが通用するなど手応えこそ感じたが、チャンピオンベルトを手にする夢は閉ざされてしまった。それもあって8月3日にエンダムとの再戦が発表されると、帝拳ジムの浜田剛史代表は「完全決着をつけなければならない。今度はノックアウトも狙う。前回の練習もいい内容だったが、今回はそれにプラスしてノックアウトを狙う練習も付け加えようと思っている」と鼻息も荒く宣言した。

村田はその記者会見で「ノックアウトばかり狙い過ぎてカウンターをもらってもしょうがない」として、あくまでも「チャンスがあれば」という意味のノックアウトと補足。しかし、ファンならば村田の強烈な右パンチで相手を倒すシーンが見たいだろう。

5月の初対決で村田はエンダムからダウンを奪った 撮影:五味渕秀行

8月のトレーニングキャンプでスタミナをつけ、9月から実戦メインで調整してきた村田。どれくらいノックアウトを意識しているのか。そこだけにフォーカスしたトレーニングはあるのだろうか。すると村田は、「それはないですね。意識もどちらかというと外しているんですよ」と説明する。

「ノックアウトしようなんて初めから思っているとボクシング自体が崩れてしまいます。ノックアウトのチャンスが来たら逃さないってだけで、ボクシングの組み立てはガードをしっかり固める、プレッシャーをかける、パンチを打つ、それでチャンスが来たら逃さない。この前のように様子を見すぎない、自信を持ってそこにいくんだという行動に耐えられるだけの体を作っている感じですね」

徹底的に心肺機能を鍛える


今回のトレーニングでは前回と比べて高強度インターバルトレーニングをより多く取り入れている。前回は試合まで1カ月を切ったころにはスパーリングなど実戦に移ったが、今回は9月下旬の段階で週3回のスパーリングをする一方で、フィットネスバイクのペダルに負荷をかけて心肺機能を鍛えているトレーニングも続けていた。

村田ですら「あれほどキツいものはない」という高強度インターバルトレーニングには、どのような効果があるのか説明してもらった。

「スパーリングはスパーリングで強度は高いのですが、『心肺機能×強度』というのはそこまで高くできない場合が多いです。筋疲労が先に来たりとか。(肉体の)限界値まで出すということは次は動けなくなるわけですよね、そうなったら自分は打たれてしまう。だから(スパーリングで)そこまで出せないのですが、試合だったらノックアウトを狙いにいって限界値まで出さなければいけないときもあります。そういうシチュエーションに耐え切れる心肺機能を作れるように、高強度のインターバルトレーニングは行なっています」

春に行った高強度インターバルトレーニングの様子 画像提供:ナイキジャパン

5月の試合で12回まで戦い抜く持久力があることは実証できてはいるが、トレーニングキャンプでもひたすら走った。「本当にキツかったですね」と振り返る。

「朝はLSD系で10kmくらいをゆっくり走って、午後は例えば1kmのインターバルを6本とか。(走るのと休憩の割合は)1対1で、1kmを3分で走ってきたら3分休んで、また同じペースで繰り返すのを6本。ちょっとイヤになるような(笑)。だって1kmは本気で走るんですよ。本気で走って3分15秒くらいで帰ってきて、休憩したらまた走るわけです」

走るというシンプルなトレーニングではあるが、それが実戦で生き残るための土台となる。盤石なものにするために、バーピージャンプのタバタプロトコル(心肺機能を高めて基礎代謝量を増やすトレーニング)も実施した。

「20秒のアクションをしたら10秒間のレスト。それを8回やる。もう何も考えられないですよ、終わった瞬間は…」

トレーニングキャンプを思い出す村田の表情が、キツさを物語っていた。

帝拳ジムで調整する村田。公開練習には報道陣も多く駆けつけた 撮影:五味渕秀行

キング・オブ・スポーツは100mの勝者


「走る」という話が出たところで、村田の母校東洋大学の後輩で、9月9日に日本人初の100m9秒台となる9秒98を叩き出した陸上の桐生祥秀選手について尋ねた。私が初めて村田にインタビューしたとき「ボクシング以外で好きなスポーツは?」と質問すると、陸上の100mを挙げていたのだ。

「後輩といっても大学が一緒というだけ」と村田はいうが、「みんな桐生くんに(日本人最初の9秒台を)出してほしかったと思っていたと思います。単純に同じ日本人として、嬉しかったですよね」と笑顔がこぼれる。

「(今後も9秒台を出す日本人選手が)続くと思いますよ。多田(修平)選手とか負けたくない存在もいたから、(桐生選手が)出せたんでしょうね」

ボクシングの世界タイトルを獲得する日本人選手は軽量級が多い。村田の挑む世界ミドル級では1995年に竹原慎二氏がWBA世界ミドル級チャンピオンを手に入れたのみで、それに続く選手は現れていない。

村田が22日にチャンピオンベルトを持ち帰ることで、次に続くミドル級の日本人選手も誕生するのではないだろうか。

【村田諒太 再戦へのゴング vol.4】危機感と無が作り出すゾーン に続く。

●村田諒太(むらた りょうた)
1986年1月12日生まれ、奈良市出身。帝拳プロモーション所属。2012年にロンドン五輪ボクシングミドル級で金メダルを獲得して脚光を浴びる。アマチュア時代の戦績は137戦118勝89KO・RSC19敗。2013年8月にプロデビューし、戦績は13戦12勝(9KO)1敗。趣味は子育て。

取材協力:ナイキジャパン

《五味渕秀行》

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