【THE REAL】浦和レッズの守護神・西川周作が貫く矜持…無失点にこだわる先に見すえるアジア王者 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】浦和レッズの守護神・西川周作が貫く矜持…無失点にこだわる先に見すえるアジア王者

オピニオン コラム
西川周作 参考画像
西川周作 参考画像 全 4 枚 拡大写真
(c)Getty Images

守護神に勝利を確信させた組織的な守備


最後尾からチームメイトたちの戦いを見守りながら、時間の経過とともに手応えが膨らんでくる。浦和レッズの組織的な守備を、相手が心の底から嫌がっている。守護神・西川周作は勝利を確信していた。

「フッキ選手やオスカル選手が、(中盤まで)引いてボールをもらいたがっていた。槙野選手やボランチの選手が、厳しくいってくれたのが非常によかった。武器をもつ彼らがゴールから遠ざかってくれるのは、ウチとしてはいいこと。組織として上手く守れたかなと思っています」

ホームの埼玉スタジアムに上海上港(中国)を迎えた、18日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の準決勝第2戦。レッズはスコアレスドローでも決勝へ進める状況で、キックオフの笛を聞いた。

敵地で先月27日に行われた第1戦を、1‐1で引き分けていた。先制されながら、MF柏木陽介が利き足と逆の右足で同点弾をゲット。貴重なアウェイゴールとともに、レッズをやや優位な状況に導いた。

迎えた第2戦も、開始12分にいきなり先制する。柏木が放った左コーナーキックに、MFラファエル・シルバが完璧なタイミングでヘディングを一閃。この時点で、2戦合計スコアを2‐1とした。

それでも、レッズはロッカールームでの誓いを貫き通した。日本代表DF槙野智章によれば、第2戦へ向けたチーム全員の合言葉は「腰が引けたような、引き気味のサッカーだけはしない」だった。

左サイドバックに入った槙野が、対面の元ブラジル代表FWフッキと壮絶な肉弾戦を繰り広げる。同じく元ブラジル代表の司令塔オスカルにも、柏木、長澤和輝、青木拓矢の中盤が重圧をかけ続けた。

球際での攻防を嫌がったのか。莫大な移籍金をつぎ込んで獲得した上海上港のキーマンたちが、次第に密集を避けるようになった。脅威が減る分だけ、必然的にレッズの勝機が増していった。


余裕をもって防いだ2度の決定的なピンチ


平日のナイトゲームにも関わらず、駆けつけた4万4000人を超えるファンやサポーターに冷や汗をかかせた場面は2度。前半24分にフッキが放った直接フリーキックは、意表を突いた一撃だった。

ゴールのほぼ正面。距離は約25メートル。フィジカルモンスターの異名をもつ31歳のレフティーは、パワー全開で蹴るのではなく、5枚の壁の一番右側を超えて急降下する技ありのキックを放った。

「フッキ選手が蹴る瞬間と、自分のプレジャンプの意識も合っていたので。いい準備ができていたし、あの場面ではちょっと余裕がありましたね」

助走するフッキに合わせて小刻みにはねていた西川が、シュートの質とコースを完全に読み切る。自分から見て左側へダイブし、ボールの落ち際を弾き返した直後に、左手で小さなガッツポーズを作った。

フッキへの寄せがやや甘くなった後半33分には、強烈なミドルシュートを放たれる。何とか前へ弾いた西川は、詰めてきたブラジル人FWエウケソンのシュートをとっさに伸ばした右足で防いでみせた。

「自分としても、気持ち的にすごく余裕をもって臨めた試合でした。余裕があればいいプレーができると、自分自身を信じながらやっているので。今日のようなプレーを続けていきたいですね」

4分間の後半アディショナルタイムをへて、10年ぶりのACL決勝進出を告げる笛が鳴り響く。2007シーズンのACL制覇を知っているのはキャプテンのDF阿部勇樹と、ベンチに入らなかったDF平川忠亮だけ。新たな歴史を導いた守護神は、努めて冷静に1‐0の完封勝利を振り返った。

「無失点で終われば勝ち上がれる、という点は試合前からシンプルに考えていましたけど、第1戦の結果を踏まえてうんぬんは強く意識していませんでした。相手の強力なフォワード陣に対して、自分たちがどこまで守れるか、ということにチャレンジしたかったので」

勝利に歓喜する浦和イレブン
(c) Getty Images



恩師ペトロヴィッチ前監督の60回目の誕生日


特別な日でもあった。上海上港に勝利した18日は、リーグ戦で低迷を続けてきた責任を取る形で7月末に解任された、ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督の60回目の誕生日だったからだ。

いまでも畏敬の思いを込められて、ニックネームの「ミシャ」で呼ばれる前監督との出会いは2010シーズン。大分トリニータから加入した、サンフレッチェ広島で受けた薫陶を西川は忘れていない。

「いまの自分のプレースタイルや、プレーする楽しみを教えてくれたのがミシャだったので」

トリニータの下部組織時代から足元の技術も徹底的に磨き、右利きなが左足でも遜色なく、むしろ右足以上の精度で蹴れるまでのレベルを搭載していた。試合で直接フリーキックも叩き込んだこともある。

そして、サンフレッチェではゴールキーパーであると同時に、11人目のフィールドプレーヤーとなるプレーも求められた。正確無比な長短のキックで攻撃の起点になる。楽しくて仕方がなかった。

サンフレッチェでの連覇を引っさげて、2014シーズンからレッズに移籍。ひと足早くレッズの指揮を執っていたペトロヴィッチ監督と再会を果たしたものの、なかなかタイトルには手が届かない。

西川が加入してからは、昨シーズンのYBCルヴァンカップを制しただけ。年間勝ち点1位で臨んだJリーグチャンピオンシップは、鹿島アントラーズに下剋上を許して失意のどん底に突き落とされた。

昨シーズンよりもさらに前へ出る、アグレッシブな守備を標榜した今シーズン。開幕から目立っていた失点は次第にチームの屋台骨を揺るがし、5月以降の失速を招き、指揮官交代へとつながった。

「自分たちが結果を出せなかったことに対して、申し訳ないという気持ちはいまでももっている。同時にミシャへの感謝の気持ちも常にもちながら、結果を残すことでお礼を言いたいと思ってきました」

正確無比なキックで攻撃の起点に
(c) Getty Images


堅守速攻スタイルの最後尾で掲げる目標


プロである以上は、どんなに困難な試練に直面しても歯を食いしばって乗り越えて、前へ進んでいかなければならない。そして、コーチから昇格した堀孝史監督のもとで、レッズは変わりつつある。

布陣はペトロヴィッチ監督の代名詞でもあった「可変システム」から、守備に重心を置いた「4‐1‐4‐1」へ変更された。リーグ戦では4勝4分け1敗の星を残し、得点15は失点12を上回っている。

失速の発端にもなった4月30日の大宮アルディージャ戦以降の12試合が、3勝1分け8敗、得点21に対して失点が27を数えていただけに、狂っていた攻守のバランスは大きく改善されたと言っていい。

「サッカー自体が変わるなかでも自分たちが上手く対応しながら、堀さんのもとで上手く戦えていると思う。非常にいい方向に向かっている、という手応えを感じながら今日も試合ができた」

前任者のもとで重視されたポゼッションスタイルの面影は、いまはピッチで見ることができない。上海上港戦は相手にあえて保持させたうえでボールを奪い、ショートカウンターを発動させた。

前線からプレスをかけられない状況と見るや、自陣にブロックを敷くしたたかさも発揮した。肉を切らせて骨を断つ。ハリルジャパンにも共通する泥臭い戦い方が、いま現在の目指している道となる。

そのなかで西川は変わらぬ目標を掲げる。失点数が出場試合数を下回っているか、最低でも同数なこと。優勝の可能性が完全に消えたJ1ではもはやかなえられないが、11試合で13失点のACLならば可能性を残す。

「自分たちで勝ち取った舞台。日本を代表する責任をもって、しっかりと戦いたい」

サウジアラビアの強豪アル・ヒラルとの決勝は敵地で来月18日、ホームで25日に行われる。西川が目標を達成する、つまり2試合をともに完封すれば、おのずとレッズがアジアの頂点に立つ確率も高まってくる。

《藤江直人》

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