【THE INSIDE】女子プロ野球選手・里綾実の「女子野球の現状」に関する講演と野球教室 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE INSIDE】女子プロ野球選手・里綾実の「女子野球の現状」に関する講演と野球教室

オピニオン コラム
参加者にエールを送る里選手
参加者にエールを送る里選手 全 14 枚 拡大写真
去る12月の日曜日、千葉市男女共同参画センター 公益財団法人千葉市文化振興財団の主催する「男女参画センター祭り」が行われた。

催しの一環として、女子プロ野球チーム・兵庫ディオーネ(18年より愛知ディオーネ)に所属し、女子日本代表のエースでもある里綾実投手を招いて、「女子野球の現状」に関する講演と野球教室が開催された。

講演は、二部構成となっており、前半は里選手が少女時代から野球と出会うきっかけから、野球に没頭していく経緯が語られた。鹿児島県の奄美大島出身の彼女は小学生時代、男の子と混じって一緒に遊んでいく中で、遊びの一環として野球に触れ合っていった。

その一方で、奄美大島では盛んな空手の道場に通ったりということもしていたという。野球では、小学生時代には男子にも負けないくらいの脚力と肩のしなやかさもあって、ことに女子としてのハンデを感じたことはなかったという。また、チームでも女子ながら、一目置かれる存在にもなっていた。

会場に入ってすぐの場所に設置された里選手ののぼり等

そんな里選手だが、中学に進学して部活動としては女子としての野球がないということもあって、バスケットボールを選択していた。しかし、どうしても野球をやりたいという思いがあって、顧問の先生に相談して男子に交じって野球部としてやらせてもらうことを承諾してもらった。こうして、女子生徒ながら野球部員として活動を続けていた。

高校進学に当たっては当初、企業スポーツとしても活動がしっかりとしている進路であるソフトボールを選択しようかという考えもあった。しかし、やはり野球への未練と思いの方が強かった。

そんな思いになっていた頃、鹿児島県内のいちき串木野市にある神村学園が、当時はまだ全国で5校しかない女子野球部を持って活動していたことを知った。学校の方針として全寮制の動向だが、離島の里選手にとってはかえって有難かった。そして、初めて女子だけの間で野球ができる喜びも知った。

また、埼玉県や東京都の女子野球部の試合をすることで、「こんなに女子だけで野球をやっている人たちがいるんだ」ということを知った喜びを感じるとともに、「この人たちには負けたくない」という、彼女自身の持って生まれた負けん気がまた頭をもたげてきて練習にもより一層励んでいった。

やがて大学進学を控え、埼玉県の尚美学園大が女子野球部を創部することを知った。また、同校で勉強すれば、保健体育教員の資格も取得できるということもあり、将来の夢でもあった体育教員にも近づけるという思いで尚美学園大へ進学。そこでの女子野球は、折しも世界選手権の日本代表を選出するというタイミングにもはまって、より高いレベルの野球と出会うことが出来た。

日本代表にも、最初のトライアウトでは育成扱いとなってしまったが、練習生として参加していきながら、2008年からは日本代表選手の一人となった。大学卒業後には女子野球部を創設した福知山成美でコーチとして手伝っていたが、女子プロ野球の創設を知って、「もう一度チームに所属して現役としてやってみたい」とトライアウトを受けて、晴れて女子プロ野球選手となった。

こうした、里綾実の野球人生は、ほぼイコールで女子プロ野球の歩みにもつながっていく。そんな話を、彼女自身の言葉で伝えていった。

里選手の話に耳を傾ける高校生

さらに、第二部では私(手束仁)がスポーツジャーナリストとしての視点と情報で、対談形式で参加させていただき、「女子としての野球のあり方」は、「現在隆盛を極めているNPB(日本プロ野球)や高校野球とは異なる立ち位置で、女子としての特色を生かしながら展開されていくところの面白さと見どころがある」ということに主眼を置いて語られた。

また、一方ではまだまだ認知の低い女子プロ野球、女子野球をどのようにして、もっと普及させていくのかということへの提案なども語られた。そんな中で、ハードルが高いことは承知で、女子高校野球大会の決勝を甲子園球場で開催することが出来ないだろうかとか、2020年の東京オリンピックの公開競技として女子野球を紹介することは出来ないだろうかということも話された。

そんな思いを語った後に、午後からは実際に野球をしている女子中学生や女子高校野球チーム、中学生の指導者などが参加しての野球教室が開催された。室内トレーニングルームという限られた環境ではあったが、女子プロ野球選手のストレッチの方法や練習方法が紹介され、ゴロ処理、キャッチボールの基本なども、実技講習として展開された。

ストレッチの動きを示す里選手

同センターとしては、男女平等の人権問題などに取り組んできたという経緯もあり、これまでは、人権問題などを語る講演のイメージが強かったというのは現実である。しかし、「女子には女子としての野球がある。それは、陸上競技でもバレーボールでも、バスケットボールでも、男子と女子と競技が分かれているのと同じこと」というような要旨も含めて、「こういうメッセージだったのか!」という理解と発見もあったようだ。

「応援したくなった」「野球の話もよかったが、男女共同参画のテーマにもピッタリだった」などなど、目からうろこといった感じの感想も挙がっていた。また、NHKの元アナウンサーで現在は植草学園大の客員教授なども務めている加賀美幸子同館名誉館長も、「男女参画センターとしてのテーマにもぴったりの話で、とても有意義でした」と感想を述べられていた。

対談講演を終えて、筆者(左)と里選手とで記念撮影

《手束仁》

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