「僕が現役だったころの明治大学サッカー部は、弱いチームの典型例だった」…強くなった秘密は?元監督が明かす | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

「僕が現役だったころの明治大学サッカー部は、弱いチームの典型例だった」…強くなった秘密は?元監督が明かす

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神川明彦氏
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明治大学サッカー部、J3に所属するグルージャ盛岡を監督として率いた経験がある神川明彦氏。

2018年1月現在は明治大学附属明治中高サッカー部の総監督だ。明治大学の釜崎太准教授が開講するゼミの講義で、明治大学サッカー部を率いていた当時の様子を振り返った。

神川氏は、鎌倉高から明治大学政治経済学部に入学して、サッカー部に入部。卒業後の1989年より明治大学職員として働きはじめ、明治大学に在職したままサッカー部のコーチ、監督を努めた。2012年にはJFA公認S級ライセンスを取得し、のち総監督に就任した。

「現在、関東大学(サッカー)1部リーグは、どこの大学が降格してもおかしくない状態となっていますが、その中で明治大学は2番目に長くこのリーグに残っているクラブです」と神川氏。もっともこのリーグに残留しているのが流通経済大学。2004年から14シーズン連続して残留している。その次が2005年度から残留している明治大学となる。

神川氏が2004年に明治大学監督に就任した当時は、明治大学は関東大学2部リーグに所属していた。それまでは「昇格、降格を繰り返す」といった状態であったが、この年に2部リーグで2位を獲得し、1部に昇格することができた。

「僕が現役だったころの明治大学サッカー部は、弱いチームの典型例だった」とし、当時のチームの特長を挙げた。

「まず、昔話ばかりしている。風呂に一緒に入っても、インターハイや、選手権など過去の栄光にすがりついていた。いざ試合になると、ベンチに入っているメンバーまでは一生懸命応援するが、スタンドで見ている連中は応援もしないで野次ばかり飛ばし、内輪ネタでゲラゲラ笑っていた。そういった風に、ピッチとスタンドが全く同化していなかった」

また、すぐ「人のせいにする」ことが挙げられるという。

「例えば、高校時代チームメイトだった仲間と会った時。『お前、今日試合出てないじゃん』などと言われると、『いやぁ、うちの監督、コーチと俺がサッカー合わなくてさぁ、干されてんだよ』とか言うわけです。そんなのばっかりですよ」

さらに神川氏は、「リーグ戦。チームにとって一番いい順位は6位だったんです」と神川氏が現役だった当時の明治大学のチーム状況を揶揄するように明かした。

「1~5位はインカレがある。そして7、8位は二部との入れ替え戦がある。『絶対6位を狙おう』など目標を口にする先輩たちを見て、最初は『何言ってんのかなこの人』と思っていたのですが、理由がのち分かりました。6位だとシーズンが早く終わるんですね。つまり、早くオフシーズンになる。で、みんな『スキーに行こうぜ』なんて話しているわけです、信じられませんでした」

そこで2004年から監督に就任した神川氏は、「誰でも明治大学サッカー部に入れば成長する」という組織を目指すために、『定期的に学生を競争させ、評価する土壌をつくること』を徹底したという。

「競争と評価。僕の現役時代は、週に1回コーチが見に来ているだけで、基本的にはキャプテンが見てスタメンを決めていました。キャプテンが、『じゃぁ、今日の試合のボランチは俺ね』なんて言っちゃうわけです。『ギャグかな、このチーム』なんて思ったり。評価基準なんて存在しないんですよ。努力していない4年生を使いたがったりね」

「だから僕が監督になって最初に導入したのは『朝練』です。当時僕は明治大学の職員として働いていたので、仕事に行かなければならなかったから、朝しかないと。そもそも毎日誰かが選手を見ていないと、適切に評価できないんです。特に学生選手の調子なんてコロコロ変わりますからね。昨日までダメダメだった選手が急に一日でよくなったりする。だから選手の細かい変化でもきちっと気づけるように、朝練をして毎日選手を評価できる土壌をつくることにしたんです」

結果として、朝6時からスタートする朝練を導入したことは明治大学内でのサッカー部の評価を上げることにも寄与した。

「職員をやっていると、大学にいる人はスポーツに理解がないことを感じた。当たり前ですよ。大学は学業をする場所なので。それにも関わらず、体育系の部活に所属する学生は、部活だからといって授業を休んだりして、テストの時に『体育会だからよろしく』なんて書いたりする。それでは愛されません」

サッカー部は朝練の導入により、所属学生が授業に間に合うことができるようになった。明治大学の1、2年生の大半が授業を受ける和泉キャンパスで授業がある学生は、8時に練習を上がる。同じく3、4年生の大半が通う駿河台キャンパスで授業がある学生は7時半だ。

「明治大学の学内で、サッカー部ってあんまり卑下されていないと思うんですよね。教授からも、生徒からも。やはり、教室で一緒に学び合わなかったらクラスメイトからも愛されないですよ」

明治大学法学部法律学科に所属する男子生徒(22)も、「同じクラスメイトでも、部活動に所属している生徒と関わる機会は本当にほとんどありませんでした。どうも、彼らは部活の関係で他の授業を受けたりしていたり、授業を欠席していたみたいです。その点サッカー部は僕らと同じ授業に出ていたので、関わる機会は他の部活に所属している人より多かったですね」と明かす。

現在、明治大学内で強化指定部の一つであるサッカー部だが、「他の部活に比べて名だたる競技成績を収めていないのにも関わらず、助成金は野球部、ラグビー、競争部に続いてもらっています。これは、学内でもサッカー部が競技以外の部分でも評価されているからだと思います」と神川氏は朝練の成果を語った。

「大学はあくまでも勉強をする場所」そう言い切る神川氏の理念と、それまでの明治大学サッカー部には存在しなかった「定期的に学生を競争させ、評価する場所をつくること」という目的が融合して生まれた『朝練』が、明治大学サッカー部の躍進劇を支えた根底にあった。

《大日方航》

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