イングランド、アイルランド、フランス、スコットランド、ウェールズ、イタリア(前回大会順位順)の6カ国による総当たり戦が、今年も2月第1週から3月第3週にかけて開催される。
そのシックス・ネーションズを2016年、2017年と連覇を果たしているのは、ラグビー発祥の国イングランドだ。そしてグランドスラム(全勝優勝)を果たした2016年大会からそのイングランド代表を率いているのが、2015年のラグビーワールドカップで日本代表を大躍進させたエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)である。ワールドカップで優勝(2007年大会。南アフリカ代表のチームアドバイザーとして)と準優勝(2003年大会。オーストラリア代表HCとして)を経験し、2017年には世界最優秀コーチに選出された世界的名将だ。
そしてこの度、そのエディー・ジョーンズがシックス・ネーションズの展望を中心に語ったコメントを入手。エディー・ジョーンズが見据える、今年の「シックス・ネーションズ」とは。
チームの成長は富士山を登るようなもの
──今回のシックス・ネーションズは3連覇を目指す大会となります。
「それより、私たちはとにかく前進していくことに集中しています。昨年11月のテストマッチを見てもアイルランド、ウェールズ、スコットランドは非常にいい結果を出しています。自分たちがどのように前進できるかに集中して一つ一つの課題をクリアしていくだけです」
──シックス・ネーションズとはどんな大会だと捉えていますか?
「アイルランド、スコットランド、ウェールズとは国が隣り合わせになっているので、ライバル心がとても強いです。特にイングランドに対しての敵対心が強いですね。とても活気のある大会です。たくさんの観客がそれぞれの国を応援するためにスタジアムへ訪れる。それが熱狂を生み出すのです」
──イングランドの現時点の完成度は、100%まであとどれくらいですか?
「スポーツの世界に完璧はないですね。大切なのはどの方向に進んでいるかです。前に向かって進化しているのか、それとも後退しているのか。現在私たちイングランドは前進し、正しい方向に向かっています。」
──では、イングランドの結果は現状プラン通りですか?
「プランはこれまで一度も立てていません。何故ならば天気と一緒で、コントロールできないことだからです。誰が何人負傷するのか、といったことはコントロールできないことですよね。唯一コントロールできるのは今日やることと明日やることだけです」
──強くなった今のイングランドですが、どこを一番大きく変えて成果を出したのでしょうか?
「大きく分けて三つあります。一つ目はフィジカル。フィットネスのレベルが足りていませんでした。その面で良くはなっていますが、あと20%ほど足りていませんので、まだ強化する必要があります。二つ目はプレースタイルです。(世界ランキング1位の)ニュージーランドの真似ではなくセットピースに重点的に取り組む、ディフェンス重視のイングリッシュスタイルに変えました。三つ目は代表選手たちのマインドセット(考え方)を変えたことです。今、彼らはイングランド代表としてプレーをするだけでなく、イングランドのために勝ちたい。世界で一番のチームになりたいと思っています」
──HC就任以降のチームの通算成績は22勝1敗です。驚異的な好成績ですが、この結果をどう受け止めていますか?
「全ての試合に勝つつもりでやっています。常に考えていることは『いかによくなるか』ということです。勝つのはもちろん嬉しいことですが、それよりも大切なのはいかに進歩していくかです。ワールドカップで勝つためには日々向上していかなくてはなりません。私に唯一できることは、常にチームとして前に進んで良くしていくことだけです」
今年のテーマは「ハンティング」
──2018年のチームのテーマはありますか?
「2016年は欧州制覇、2017年は基礎に徹することをテーマにしてきました。2018年のテーマは『ハンティング(狩り)』です。この言葉をそのままチームのテーマにしているわけではありませんが、意図としてはハンティングする、他の国を狩りしに行くという考え方ですね。最初のターゲットはイタリアです(2月4日)。彼らをハンティングする、つまり勝つためには彼らよりもフィジカル面でも優っていなくてはなりません。そして、メンタル面でももっとアグレッシブに、戦術面でももっと積極的でなくてはなりません。彼らが私たちを狩りに来るのではなく、私たちが彼らを狩りに行くのです」
──今大会、イングランド代表で期待している選手、また注目すべき選手はいますか?
「良い選手は数多くいます。その中でも特に注目しているのはPR(プロップ)のマコ・ヴニポラです。彼は世界でも優秀なボールキャリアのひとりで、パスのスキルもあります。11月のアルゼンチン戦では20回ものタックルを決めました。PRでありながら様々なプレーをできる素晴らしい選手で、チームにとって必要不可欠な存在です」
──では今大会、警戒している国はありますか?
「全試合、気を抜くことができません。その中でもアイルランドは世界ランキング3位ですし(イングランドは2位)フィジカル面でも非常にタフで、持っている能力を最大限に出してくるので気をつけなくてはなりません。(同5位の)スコットランドもどんどん強くなっているので侮れないですね」