【THE INSIDE】第90回選抜高校野球大会・雑感(下編)…大阪桐蔭の春連覇で見えてきた、甲子園高校野球の危機感 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE INSIDE】第90回選抜高校野球大会・雑感(下編)…大阪桐蔭の春連覇で見えてきた、甲子園高校野球の危機感

オピニオン コラム

大阪桐蔭・明秀日立
大阪桐蔭・明秀日立 全 20 枚 拡大写真
持てる者と持たざる者の差、これは資本主義の原則と言えば、それまでかもしれない。また、勝負の世界は「より、強さを求めていくのは当たり前」ということも正論である。

そして、「勝つことを目指してチームを作り上げていく」というのも、高校野球のあるべき姿勢であろう。

大会前に話題にもなっていたのが、「大阪桐蔭の連覇はあるのか」ということだったのだが、何だかあっさりと実現してしまったという印象もある。もちろん、その道は容易なものではなかったはずだ。大会を通じて、「まだまだ強くなるぞ」という姿勢を示し続けた大阪桐蔭の西谷浩一監督の姿勢こそが、チーム力をさらに引き上げ維持させ続けていった背景にあることは間違いない。

そしてその結果が、盤石の強さを見せて、史上3校目となる春の連覇を果たして幕を閉じたのである。そのことは、素直に称えられるべきことである。

ただ、周囲からは、「あれだけの選手がおんのやから、勝つのが当たり前やろ」などと言われるのもまた現実であり、その意見にも同意したいところはある。同世代の選手たちで、最も能力の高い選手が全国から集まってきているとも言われているが、全国から集まった選手たちの意識としては「甲子園に出場したい」ではない。「甲子園で優勝したい」なのである。

そのための選択肢として大阪桐蔭が一番にあり、次に東海大相模があり、というようなことになるのではないだろうか。それが、中学時代の序列のまま選択肢となっている。そして、大阪桐蔭を倒したいという意識の強い選手たちが履正社という選択をしていくというような見方もあながち外れてはいないだろうという気がする。

大阪桐蔭の横断幕

そのような形で高校野球の戦力構図が出来上がってきているのだ。だから、甲子園の舞台では二極分化が進んでいっているということになっていくのだろう。そして、中学時代の序列がそのままその世代間で生きている以上、まともにぶつかったらやはり大阪桐蔭が強い。それは自明の理だ。

野球は、肉体能力や身体サイズが絶対的な差として表れるラグビーやバスケットボールなどよりは番狂わせが起きやすいスポーツでもあるはずだ。というのも、投手が投げてバットという極めて技術力を擁する道具を使い90度のフィールドの人のいないところに球を運んでいくことで、走者という駒を進めて得点を取っていくという競技だ。

ただ、偶然性や運によって、打球が思わぬ所へ行くというケースもある。だから、必ずしも絶対的な能力だけではない要素も多分に作用することがあり、それが野球の面白さでもある。ましてトーナメントという戦いであれば、10回やって9回勝てない相手だとしても、その1回が甲子園という場で出れば、番狂わせという言い方のアップセットが起き得るのだ。

ただ、現状では、そうした番狂わせが徐々に少なくなってきているのは確かであろう。それが、ここ10年の間で大阪桐蔭の5回の優勝、東海大相模の2度の優勝と準優勝、光星学院(八戸学院光星)の3季連続準優勝といった現象に表れているのではないかという気がする。

この10年間の中で、事前の予想ではそれほど名が挙がっていなかったところが頂点に立った大会としては前橋育英が初出場初優勝した2013年夏の大会があった。もっとも、それとて高橋光成という、後にドラフト1位指名でプロ入りする投手がいたのだ。

多くのメディアもファンも、予想がつかなかった優勝としては、過去30年近くさかのぼってみて、95年春の観音寺中央、06年夏の佐賀北くらいではないかという気がする。それくらいに、絶対能力の差が顕著になってきているということである。

智弁和歌山の人文字

こうした現象がある一方で、高校野球の人気は不滅のものとなっている。過熱化による事故防止という名目で、この夏の大会からは中央特別席は全席指定席とされ、従来無料だった外野席も有料化されることとなった。また、一塁と三塁の特別自由席も1500円が一気に2000円にまで値上がっていくこととなった。通常の社会では考えられないような30%の値上げである。

これは、高校野球の興行性が高まっていき、夏の甲子園がますますイベント化してテーマパーク化していくことになっていくのではないかという危惧もある。そして、出場してくる選手たちも限りなくプロに近い選りすぐられた選手たちだけの甲子園という舞台になっていきそうな気がしてならない。

こうなっていくと、高校野球の地区大会で戦っていく部分と、全国という舞台の甲子園というステージが、ますます別のものという位置づけになってしまわないかという懸念もある。そして、ほとんどの学校にとって、「甲子園を目指します」「目標は全国制覇」という言葉も、言葉だけのものとなって、その実現性は限りなく低いものとなっていくのではないかと、そんな気がしてきている。

そして、一部の超強豪校と普通の学校との分離高校野球みたいな現象が、より顕著になっていくのではないかという感じもしている。そんな現象がますます進んでいくと、高校野球を見続けてきて応援し続けてきたものとして、ちょっと危機感も抱いているというのが正直なところである。

《手束仁》

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