フェンウェイパークに現れたクラッシュドアイスの会場は、ボストン市民にどう見られたか? | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

フェンウェイパークに現れたクラッシュドアイスの会場は、ボストン市民にどう見られたか?

スポーツ 短信
フェンウェイパークに現れたクラッシュドアイスの会場は、ボストン市民にどう見られたか?
フェンウェイパークに現れたクラッシュドアイスの会場は、ボストン市民にどう見られたか? 全 1 枚 拡大写真

ボストン・レッドソックスの本拠地「フェンウェイパーク」は100年以上の歴史があるメジャーリーグ最古の球場だ。松坂大輔投手や上原浩治投手らが活躍したところだけに、日本のファンにもなじみがある。

狭くていびつな形状のここで、2月8日と9日に新種のウインタースポーツ競技が行われた。それを取材するために現地入りした。

大会名は「レッドブル・クラッシュドアイス」。アイスホッケー、ダウンヒルスキー、スノーボードクロスの要素を取り入れたアイスクロス・ダウンヒル競技だという。2018-2019シーズン最終戦としてこのフェンウェイパークで開催されることになったのだ。

野球場にクラッシュドアイスの選手たちが集結 ©Mihai Stetcu/Red Bull Content Pool

レッドブル・クラッシュドアイス史上としても初めての野球場開催だった。フェンウェイパークはかつてアメリカンフットボールの会場として使用されたこともあるというが、ウインタースポーツの競技場になるのは極めて異例。

市街地の区画内に無理矢理建設したため、左右非対称となったことで知られるこの球場だが、その点が野球以外のイベント開催の利点にもなったようだ。

コースは収容力のあるライト側スタンドから、1塁側に近いところにかけて設営されていた。

野球場としては極めて狭いが、こういったスポーツイベントの会場としては絶妙だ ©山口和幸

北米で最も古い歴史を誇る野球場をウインタースポーツのフィールドにするために、グラウンドを鉄板で養生したうえで、長さ350mのアイストラックを特設する必要がある。

グラウンドは鉄板で養生されていたが、マウンド部分は舞台のように仕切られてガードされていた ©山口和幸

設営は前年12月から始まった。雨、雪、低温に作業が幾度も中断し、完成までに6週間を要したという。

全長350mの氷のトラックを作るために必要な幅15cmの冷却マットは距離にして18kmにも及んだ。その努力が実を結び、大会初日にはこれまでのクラッシュドアイスでもめったに見られないような、白く輝くアイストラックができあがったのだ。

こうしてフェンウェイパークに22カ国、175人のアイスクロス・ダウンヒル選手が集結。日本勢もこの競技の第一人者である山本純子選手をはじめとした5選手が参加した。

大会のファイナルが行われた9日は最高気温が零度以下という絶好の(?)コンディション。氷面は見事に引き締まった。

優勝したアマンダ・トルンゾを最後尾から追いかける山本純子 ©Lisa-Marie Reiter / Red Bull Content Pool

レースは4選手が一斉にスタート台を飛び出し、コース途中に設置されたヘアピンカーブやバンクコーナー、連続バンプや段差などの障害物をかわしながら、猛スピードでゴールまで駆け抜けて着順を争う。

2着までにゴールした選手が勝ち上がっていくというシンプルなルールで、そのことを理解して競技を見ると楽しさが10倍増になる。つまり2位と3位は天国と地獄。

この日観戦に訪れたボストン市民の多くは、「面白いことをやっているというので見に来た」というノリの人ばかり。もともとアイスホッケーの人気は高い地域なので、選手の防具などの見た目は親近感があるという。

「細かいルールはどうでもよくて、アメリカ選手が勝ち上がればハッピーさ」

3塁側ベンチに暖房器具があったので暖まっていたら「その場所は医療チームのスペースだ」と追い出された ©山口和幸

バックネット裏スタンドの3階にはラウンジがあって、そこに向かう廊下にはレッドソックスの歴代ユニホームが ©山口和幸

ボストンは緯度が高く、冬場の気象状況はかなり厳しい。野球はもちろんオフシーズンだ。屋外で夕方から競技が始まり、派手な音楽やライティング、花火などでショーアップされるクラッシュドアイスはある意味で長丁場の観戦には忍耐が必要。

「スケートリンクのように底冷えするのかと思ったけど、風をともなった空気そのものが難敵だな」というレッドソックスの野球帽をかぶった男性は、スタンド下にあるフードコートで暖を取りながら冷たいビールを胃袋に流し込む。

ただしここにもレースを伝えるモニターがあり、実況とともに進行状況を伝えてくれた。アメリカ選手の登場を確認すると、屋外のスタンドに戻って「USA! USA!」の大声援を送る。

バックネット裏スタンド5階にあるプレス席。4段のひな壇になっている ©山口和幸

レースそのものは非常にスピーディーで、セミファイナル、そしてファイナルと興奮のボルテージが上がっていく。

競技結果としては男子、女子、ジュニア男子のすべてでアメリカ選手が優勝したこともあって、フェンウェイパークは大盛り上がりとなる。どんなスポーツでも楽しめればいいというノリが全体に感じられた。

日本の光学メーカーから現地に出向しているという男性会社員2人も直前にチケットを購入して観戦に訪れた。

「2着までが重要というルールを教えてもらったので、途中からその駆け引きの面白さに気づきました。日本勢で唯一ファイナルに進出した山本純子選手の活躍も見られて、応援できてよかったです」

男子優勝のキャメロン・ナーズは「歴史的なボールパークで、これほど熱狂的な観衆に声援を受けて滑ったのだから感激した。ひとつの歴史を作れたと思うよ。スタンドに来てくれた人たちがそれぞれ家に帰って、きょうの興奮を家族に話してくれたらうれしい」とコメントしている。

≪山口和幸≫

《SPREAD》

≪関連記事≫
≫貴重な水着ショットも披露!「もはや高校生には見えない」大人っぽい池江璃花子、沖縄・石垣島の海を満喫

≫ケンブリッジ飛鳥と滝沢カレンが似てる?リオ五輪時から密かに話題だった

≫レアル所属・中井卓大ってどんな選手?…「リアルキャプテン翼」と呼ばれた少年時代