2月11日、女子プロテニス世界ランキング1位の大坂なおみ選手が、サーシャ・バイン(バジン、ベイジンとも)コーチとの契約を解消した旨をツイッターでファンに報告した。
バインコーチが2018シーズンからコーチを務めて以降、大坂選手は女子プロテニスツアーで快進撃を見せはじめ、ついには全米オープンを制覇。
日本女子プロテニス史上初のシングル選手によるグランドスラム大会制覇という快挙に導いたバインコーチの手腕、そして2人の関係性は、日本でも広く知られるところとなった。
にも関わらず突如として発表された2人の別れに対して、日本のみならず世界中が興味関心を寄せており、メディアでも様々な形で取り上げられている。
そこで今回は、サーシャ・バインコーチのこれまでの経歴と人物像に迫ってみる。
プロテニスプレイヤーを志す
1984年10月4日、バインコーチはドイツ・ミュンヘンの郊外フェルトモヒングに住むセルビア系ドイツ人一家の長男として産まれる。本名はアレクサンダー・バインだ。
父親の影響でテニスを始めたバインコーチ。しかし、15歳のときに父親を交通事故により亡くしている。
プロテニスプレイヤーとしてキャリアを築き上げることに対する関心はそこで失ってしまったとされているが、それ以降もドイツ国内のリーグに参戦するなどシングルプレイヤーとしてテニスを続けており、ATP世界ランキングでは最高1165位となっている。
また、バインコーチはその鍛え上げられた肉体美でも有名。自身のツイッターのアイコンにも、上半身裸の自分の写真を使っているほど。自慢の肉体といったところだろう。
“@vika7: Omg @BigSascha #noflexzone
pic.twitter.com/3QjNW5Wdhw” I’m gonna Pinish that Kangaroo!!!
— sascha Bajin (@BigSascha) 2015年3月26日
過去にはビクトリア・アザレンカ選手に対し「カンガルーもピンチにしてやるつもりだぜ」と謎の宣言をしていたことも。自分の肉体には相当の自身があるようだ。
セリーナ・ウィリアムズの「練習相手」に就任
バインコーチにとって大きな転機となったのは2007年。かつての同僚にすすめられて、当時すでにグランドスラムを8度制覇していた女子プロテニス界の女王、セリーナ・ウィリアムズ選手の「練習相手」に就任したことだ。
以降、バインコーチは2015年シーズンまで、セリーナ選手の練習相手を務める。この間、ウィリアムズ選手は更に13度のグランドスラム制覇を達成。
実に8年もの間、練習相手を務め上げたことから、ウィリアムズ選手からも優秀なパートナーとして信頼されていたものと考えられる。
@serenawilliams true #1 pic.twitter.com/ACMkFc5yiY
— sascha Bajin (@BigSascha) 2013年9月9日
複数人の練習相手を経て2018シーズンから大坂なおみの「コーチ」に
ウィリアムズ選手の練習相手を退任後、ヴィクトリア・アザレンカ選手、スローン・スティーブンス選手、そしてキャロライン・ウォズニアッキ選手の練習相手を歴任してきたバインコーチ。
@vika7 and me celebrating the win. Lol! Well done #TeamBelarus thank you for letting me be part of this… #FedCup pic.twitter.com/qnqg8HzqWd
— sascha Bajin (@BigSascha) 2015年4月19日
そして2018シーズン、大坂なおみ選手の「コーチ」に就任する。これまで「練習相手」を務めてきたバインコーチにとっては、大坂選手が初の「コーチ」としての仕事であった。
Here are the news guys. Sorry it took so long… pic.twitter.com/cQBVdhKFhn
— sascha Bajin (@BigSascha) 2017年12月5日
大坂選手のコーチ就任にあたってバインコーチが評価されたのは、「メンタル面に対するケア」の上手さであったとされている。
実際に、それまでは試合の中でメンタルが安定しない場面が見られた大坂選手であったが、2018シーズンでは明らかな改善が見られ、成績も一気に向上。
ついには全米オープンの決勝でバインコーチの「元クライアント」であったウィリアムズ選手を破り、グランドスラム初制覇を達成した。
大坂選手はこれにより日本スポーツ界のスター選手になり、バインコーチに対しても大きな注目も集まることになった。
WTAの「年間最優秀コーチ」に選出…2019シーズンも活躍が期待されたが
2018シーズン、バインコーチはコーチとしてキャリア初年度でありながら、見事にWTAが選ぶ「年間最優秀コーチ」に選出される。
2019シーズンも大坂選手との二人三脚によりますますの活躍を期待されていたが、全豪オープンを制覇した後の2月11日、大坂選手のツイッターにより2人の関係解消が報告された。
バインコーチのコーチ解任に際して、報道では「メンタルの改善という役目を果たしたため」などの理由が推測されてはいるが、詳しい経緯などについては現時点で分かっていない。
しかし、全豪オープンではバインコーチと大坂選手とが練習中に口論しているような場面も見られたなど、すでに全豪オープンの最中から今回の件の「前兆」があったとする見方もある。
「新体制」最初の大会であるドバイ・テニス選手権で初戦敗退
バインコーチとの別れを選び、新制「チームナオミ」で挑んだドバイ・テニス選手権。
2月20日、大坂選手は「格下」の世界ランク67位クリスティナ・ムラデノビッチと対戦するも、0-2(3-6,3-6)のストレート負けで初戦敗退。
一部報道ではバインコーチとの別れやあまりの反響の大きさが影響したという見られ方もされており、中には大坂選手を批判するような論調も見られる。
そんな中、大坂選手自身は20日に更新したインスタグラム投稿で「Hahaha anyways so these past few weeks have been a really big struggle for me and I’m beyond grateful for all the love you guys have shown me(ここ数週間、本当に大きな「戦い」だったけど、みんなが見せてくれた愛に本当に感謝しているわ)」とコメント。
「really big struggle 」が一連の騒動か、それともドバイでのテニス選手としての戦いを意味するのかは不明慮だが、その後も大きなイヤリングをアピールする自撮りを公開するなど、平静な姿を見せているようにみえる。
「女王」大坂なおみの2019シーズンに注目が集まる
大坂選手とバインコーチとの間にどのような経緯があったのか、今回の「別れ」が2人にどのような影響をもたらし、今後どのようなプロセスを歩んでいくかは、ドバイ選手権での1回戦負けだけでは計り知れないだろう。
いずれにしろ、世界ランキング1位の「女王」である大坂選手の2019シーズンに対しては、今回の件を抜きにしても、これまでとは比較にならない注目が集まっている。