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総合格闘家、青木真也。2月に著書『ストロング本能 人生を後悔しない「自分だけのものさし」』(KADOKAWA)を出版し、格闘技界のみならず注目を集めた。
3月31日に東京・両国国技館で行われる『ONE Championship』世界ライト級タイトルマッチを控える青木選手。練習のかたわら、オフの時間は好きなサウナなどで過ごしているという。格闘技から離れた自身について聞いた。
オフはメガネ。試合は五感で戦う
青木選手の裸眼視力は0.1もないそうだ。そのためオフではいつもメガネを着用。使い方が荒く壊してしまうこともあるそうだが、メガネ好きで常に3、4本を所有する。しかし、試合中に見えなくて困ることはないのだろうか?
「五感ってよく言われますよね。五感なんです。目だけで見るわけじゃなくて、感覚の問題だから。だから僕はそんなに(視力の)質は関係ないんじゃないかと思います」
そう言って青木選手は、味覚を例に挙げて続ける。
「味覚って言うけど、視覚や聴覚もあるから感じるわけじゃないですか。だから食べる場所や雰囲気、(食事の)出し方とか大切にするんでしょうし。一つの感覚ではないと思いますし、目が良くないからといって(格闘技で)不便なことはないですけどね」
スポーツ選手たちの中で定着している近視矯正のレーシック手術をやろうと意識したこともないという。
また、「ボクサーがパンチを目で見ている」といった話をよく聞くが、それについても「結果論というか、カッコいいからメディアが言ってるだけの要素があると思うんですよね。実際に写真を見ると目をつぶっていたりするじゃないですか」と笑ってみせた。
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ネットの世界が好き
休みの日は外出しないこともある。「それが僕自身の抱える問題で、外に出られなくなっちゃうんですよ」と苦笑い。この日も取材という用事が出かける理由となり、「助かっています」とこぼした。
青木選手はnoteやTwitterを使って自らネット上で情報発信もする。
「僕はインターネットの人ですね。ネットの世界が好きで、ウェブに時間を取られていることが多いかな」
特に楽しみにしているのは、落合陽一さんをホストとして展開されるライブ動画番組『WEEKLY OCHIAI』だ。青木選手は落合さんと対談したこともある。
「格闘技って、格闘技だけをやっていたらいいとみんな思いがちなんですけど、時代の先端をわかっていないと振り落とされる要素がすごく多い。多くの情報を得るために、こういう流れが出てきているんだなということを常にチェックしています」
ネットを見て「他人がいいと思った考え方、楽しいと思ったこと」は自分の中にも取り入れてみるようにしているという。
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老害にならないために
青木選手は著書の中で「自身が老害にならないために、下の世代を信じるようにしている」といったことを記している。そんな青木選手に「最近の若者のスゴいと思うところ」を尋ねると、すぐにネット動画を挙げた。
「若い子たちはすごい。感性がぜんぜん違う。僕はTwitterとか、ちょっと前で言うと2ちゃんねるとか、テキストの人だと思うんですよ。文章の人。あれは言い回しとかが大切で、うまい返しがネットの世界では重要視されるけど、今は動画や写真で切り取る。その技術はやっぱり若い人がすごい」
ショートムービーを作成するTikTokなど、流行っているものにも青木選手は積極的に手を伸ばしている。
「やってみることが重要。まずやってみて、合う合わないがあると思うし」
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最新トレンドも否定せず自分の中に取り込む姿勢を見せる青木選手だが、昔ながらの文化も大切にしている。それは銭湯とサウナだ。
サウナで地域のコミュニティを楽しむ
自身のTwitterでもトレーニング後にサウナへ行くことがしばしば投稿されているが、青木選手は大のサウナ好きとして知られている。
「サウナはカルチャーだと思っています。その土地その土地にコミュニティがあって、元気ぃ?みたいな交流が生まれる。ここにこの時間に行くとこういうコミュニティがあるのか、というのを見るのが好き」
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都内であれば下町に多く見られる「銭湯+サウナ」にコミュニティの要素を強く感じるという。そこで地域の文化を味わうのだ。
行けば「格闘家の青木真也だ」と気づかれることもある。その時は会話が生まれる。
「普通にしゃべりますよ。どうなんですか、そうなんですか、みたいな。でも、(怖そうなイメージで)しゃべりかけられないなら、それはそれでいいですね(笑)」
サウナは週に1、2回は通い、お気に入りの場所も3つある。地方へ行く機会があると、その土地のサウナを探して足を向けている。「(サウナは)趣味と言っていいレベル」とうれしそうに表情をゆるめる。
ベルトがなくても俺は俺
銭湯やサウナというと、普段着でサイフやタオルなど必要最低限のものだけ持って気軽に行ける場所だ。青木選手は「モノをとにかく少なくする」というミニマリストの側面も持っており、海外遠征の際もスーツケースは使わない。
必要なものだけをリュックに詰め込んで、飛行機では機内持ち込みにする。そうすることで搭乗時にスーツケースを預けた場合に発生する「着いて、待って、荷物を受け取る」ことがなくなり、ストレスが発生しないという。
最小限の荷物にするために「服は現地で洗えばいいし、パソコンさえあれば困ってもなんとでもなる」といった考えだ。
そもそも青木選手はモノへの執着がないという。自分が試合で使った用具なども手元には残らない。
「だって、意味ないと思っちゃう。欲しいと言われたらあげちゃう。写真もパソコン開いて『青木真也』って検索するといっぱい出てくるし(笑)。賞状やトロフィーも無駄だなって」
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チャンピオンベルトですら手荷物になるからと日本には持ち帰らなかったほどだ。
「ベルトと一緒に写真を撮っていると、ベルトがあるから自分に価値があるのかと思ってしまう。別にベルトがなくても俺は俺」
そんな青木選手にとって、格闘技とはなんだろうか。サウナが趣味レベルなら、格闘技は……。
「生活、ライフワーク。仕事の領域を超えちゃったんだと思います」
青木選手が強い理由が、ほんの少しわかった気がした。
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《text& photo Hideyuki Gomibuchi》