女子レスリング・中村未優から学ぶ「不安と戦う方法」 大切なのは、1つ1つ“消していく”こと | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

女子レスリング・中村未優から学ぶ「不安と戦う方法」 大切なのは、1つ1つ“消していく”こと

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女子レスリング・中村未優から学ぶ「不安と戦う方法」 大切なのは、1つ1つ“消していく”こと
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いよいよ開催を来年に控える東京オリンピック。そのなかで、出場の権利を得る為に険しい道を歩まなければならない競技の1つがレスリングだ。国内での競争が非常に激しく、世界を見てもレベルの高い選手たちが揃っている。


なかでも女子50kg級というのは、強豪選手が多く集結している事を皆さんはご存知であろうか。オリンピック本大会よりも日本代表権利の争いの方が熾烈という状況である。


その階級で今注目を集めている若手の選手がいる、その名も「中村未優(Sports Design Lab)」


世界最速と言われているアタックと持ち前の持久力で中学時代から頭角を現し、インターハイや世界ジュニア選手権で優勝を果たすなど、来年の東京オリンピックでのメダル獲得に期待がかかる。実は中村選手、現在マーケティングを専攻している大学生でもある。


今回はそんな中村選手にインタビューを実施。前編でもある本記事では、レスリングを始めたきっかけやオリンピックへの想い、そして彼女が描いているキャリアデザインに関してなどをお届けする。


※取材日は2019年3月下旬


友達に誘われて始めたレスリング


中村選手がレスリングを始めたきっかけは、「5歳の時に通っていたスイミングスクールで、友達に誘われた」というものだった。最初は兄と一緒に通っていたが、始めたばかりの頃はあまり練習に行きたくなかったという。


「友達の父親がジムでレスリングのスクールをしていて、その友達から『一緒にやらない?』と誘われて兄と一緒に行ったのがレスリングを始めたきっかけです。周りが男の子ばかりで、最初は凄く嫌で練習に行きたくなかったですね


それでも少しずつではあるが、レスリングの面白さを徐々に知り、練習が楽しくなっていった。


「最初はマットの周りを走ることや前転などの練習をしていたのですが、徐々にシューズを履いて大人にタックルした時に倒れてくれて。その時に『おっ、倒れた』と嬉しい気持ちになりました。最初は自ら進んでではなかったのですが、負けず嫌いな性格で周りに負けたくない想いも芽生えてきたりして、少しずつレスリングが好きになっていきました



当初は水泳とレスリングの両方をやっていた中村選手。両親は「自分が決めてやるのだから、好きにしていいよ」と、自身の生き方を応援してくれていた。


その状況で「中学進学」と「水泳のタイム」という2つのキーワードをきっかけに、レスリング1本でプレーする道が自然と作られていった。


「水泳はJOC(日本オリンピック委員会)の大会に出る為の基準タイムをどうしてもクリアできず、出たい気持ちはあったけど(実力的に)苦しんでいました。そのタイミングで兄が埼玉栄中に進学したのをきっかけに、私にも『入学してレスリングをしないか?』と声が掛かって。入学する為には受験勉強をしないといけなかったので、勉強するという事を理由に思い切って水泳を辞めました


「その後中学受験に合格して、今考えると自然とレスリング1本になっていくストーリーだったという感じですね」



夢の実現の為に、自身の不安を取り除く為に行っているメソッド


中村選手は2018年12月に行われた天皇杯全日本選手権で敗北を喫した。そのため、(東京オリンピックに出場する為の第一関門でもある)6月の明治杯全日本選抜選手権に出場する為にも、5月に行われる予選会を突破しなければならない状況にいる。


「この予選で敗れたら東京オリンピック出場という夢が途絶えてしまう。そこに対する不安はあります。自身のステップアップや、課題をクリアしていく感覚を実感できるレスリングは大好きだけど、今は不安が大きいですね


正直に現在の心境を語ってくれたが、その不安を取り除く為に取り組んでいることがあるという。


技術面や精神面など、目標を達成するための課題をノートに書き出して、それを1つ1つ消していく作業を常にしています


「最初は自分でどうしたらいいのか分からなくて、素直にコーチに相談しました。その際に不安の原因となっている課題を可視化して1つ1つ消していく事の重要性を教えてもらって、自分で納得した上で始めました」



コーチは中村選手に、この作業をすることで自信やステップアップに繋がることを説いてくれたという。彼女はそれを受け入れて、かなり細かいことでも何か感じたことがあるとノートに書き出し、本能的ではなく理論的に厳しい練習や戦いに臨んでいる。


また、中村選手は「準備」というものに対しても大きなこだわりを持つ。


「練習や試合前は誰かと話したりせず、静かに自問自答しています。特に、試合では何が起こるか分かりません。『準備をする』ということは自分の中でしっかりと計画を立てながらできることなので、かなり気を使っています」


女子レスリングだからこその難しさと、面白さ


女子レスリングはフリースタイルの1種目となっており、男子レスリングとルールは同一である。それでも体の特徴の違いからプレースタイルも変わってくると中村選手は話す。


「レスリングでは体が硬い、柔らかいという言葉で表現します。男子レスリングは体が硬いという言葉を使うのですが、試合中に関節などが危ない体勢になるとすぐポイントに繋がることが多いです」


「一方で、女子レスリングはそういう時でも非常に体が柔らかいので、最後まで粘りが強くて簡単には(ポイントに)繋がりにくいです。ポイントを獲得するまでの過程の中で細かい部分で微妙な違いがあって、同じ競技でも魅力が違います


「全体的な技術レベルは男子レスリングの方が進んでいますが、女子レスリングも近年非常にレベルが上がってきています」と同じレスリングという競技でも発生してくる違いも続けて語った。


専属コーチの元で現在、東京オリンピック進出のために日々懸命に練習に励んでいる中村選手。違いを理解して、コーチと話し合いを重ねながら自分のレスリングスタイルを確立している。


「男子レスリングを真似するだけではいいのではなく、改良しながら自分独自のレスリングを創っていく事が大切だと感じています


「コーチは技術力もあって上手いのですが、教えてもらったことをそのまま実践する難しさはあります。互いにしっかりと話をしながら、自分のレスリングをバージョンアップしている感じです。難しさと同時に、レスリングの面白さを実感しています」



東京オリンピック出場への想いと、その先の夢


来年の東京オリンピックで金メダル獲得を目指す中村選手だが、時が近づくにつれてその難しさを改めて感じている。


そもそも中村選手がオリンピックの舞台に立ちたいと思ったのは、2012年のロンドンオリンピックでテレビに映し出された、とある光景がきっかけだった。


2012年のロンドンオリンピックで小原日登美選手が金メダルを獲得した瞬間をテレビで観て、涙が出るくらい感動しました。その翌年に東京オリンピックの開催が決まって、年齢的にも『目指せる』と感じました」


「一生のうちで恐らく1度しかない自国でのオリンピック開催はラッキーだと思いましたし、こんな幸せな事ないですよね。この素晴らしいチャンスをしっかりと掴みたいと思っています


しかし、そのためには熾烈な戦いを勝ち抜き、出場権を勝ち取らなければならない。今の気持ちを「天使と悪魔が同時にいる感じ」という言葉で表現しながら、こう語ってくれた。


「不安である気持ちと、『もうやるしかない』という気持ちが今は混在しています。苦しいことはあるけど、それはみんな同じ。いまは自身の成長に目を向けて、前に進んでいく事が大切だと感じています」


東京オリンピックに出場して金メダルを獲得することが直近のゴールではあるが、その先のキャリアはどう考えて描いているのか。


小さい頃はパンが大好きでパン屋さんになりたかったという夢を抱いていた彼女であるが、その先のビジョンも語ってくれた。


「東京オリンピックが終わった後、1年間は休憩というか、自分の将来を考える時間を作りたいと思っています。その期間を使って海外でレスリングをしながら、コーチングの勉強をしたいですね。そして将来的にはコーチとしての立場を中心に活動して、社会に貢献したいと思っています


コーチになりたい理由は、「その要因の一つとして、優秀な女性のコーチが少ないから。日本のみならず世界に目を向けても女性がスポーツに参加できる環境は整っていないと感じています」と答えてくれた。その言葉から、スポーツを通じて社会に貢献していきたいという強い意志が伺えた。


来年の東京オリンピック出場、そして金メダル獲得へ。最後に強い気持ちを言葉にしてくれた。


「東京オリンピックに出場する為には、まずは今年ある世界選手権で3位以内になることが必要です。その為にここからある明治杯での優勝、更には世界選手権出場に向けたプレーオフを勝ち抜かなければいけません」


簡単な事ではないですが、一戦一戦に対して自分の力を100%注げるように、着実に準備していきたいです。まずは5月の明治杯の予選を必ず突破します


>インタビュー後編はこちら


プロフィール




  • 生年月日:1998 年7月 13 日

  • 出身地:埼玉県

  • 出身クラブ・出身校:埼玉・PUREBRED 大宮出身。埼玉・埼玉栄高卒

  • 身長:153cm


≪文・取材・撮影≫鳴神富一

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