6月19日(水)、幕張メッセ イベントホール(千葉)でSANKYO presents LIFETIME BOXING FIGHTS2が行われた。
WBO女子世界スーパーフライ級王者決定戦のリングに立った吉田実代選手(EBISU K’s BOX)は3-0の判定でケーシー・モートン選手(アメリカ)を下し、初の世界挑戦にして悲願の世界チャンピオンに輝いた。
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本当にこうなれると、自分では思っていなかった
20歳のとき、やりたいことを見つけるために単身渡米。消去法で見つけた“ハワイへの格闘技留学”。その決断から11年が経ち、吉田選手は世界チャンピオンとなった。
その過去を踏まえた現在の心境を聞くと、彼女は過去の様々な思いが蘇ったのか、涙を見せて答えた。
「本当にこうなれると、自分では思っていなかったですね。ボクシングに救われていることも多いので、すごく嬉しいです。チャンピオンになって、ちょっとだけ自分に自信がつくかなと思います」
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吉田選手は「戦うシングルマザー」と呼ばれ、娘の実衣菜ちゃんがいつもそばにいた。
自分自身のためでもあるけど娘のために勝ちたいという想いや、故郷の鹿児島や沖永良部島で応援してくれた人への感謝がリングに立つ吉田選手を支えていた。
娘からは「おめでとう」と、祝福のキス
実衣菜ちゃんは入場シーンから試合が終わるまで「ママがんばれー!」と会場の誰よりも大きな声援を絶やさずに送り続けた。
その理由を実衣菜ちゃんに聞くと「ママを助けたかった」と話してくれた。彼女の大声援は何よりも吉田選手の力になっただろう。
「みんなに取らせてもらったベルトで、11年間の色々な思いが詰まったすごく感慨深いベルトだなと感じています。会場からは(地元・鹿児島は)1,000kmくらい離れているんですけど、地元から多くの方が来てくれて、感謝しかないですね。皆さんの熱い気持ちを胸に戦いました」
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「試合の2週間前には坂本博之さん(元プロボクサー。世界ランキングは最高でWBCライト級1位)の紹介で児童養護施設に訪問して、子どもたちを今日の試合にも招待しました。その子たちにも今日の勝利を約束してきましたし、鹿児島や沖永良部の人たちやジムのみんななど応援してくれた全ての人に『世界チャンピオンになります』と約束をしてきたので。負けるということは全然頭になかったです」
「実衣菜に対しては彼女が好きなものを食べに行って、好きなところに遊びに行って、娘孝行をしてあげたいと思います。自分の好きなことを追いかけられるのも娘が応援してくれてのことだし。改めて『ありがとう』と『大好きだよ』を伝えたいです」
会見の最後には実衣菜ちゃんが吉田選手に「おめでとう」と力一杯お祝いの言葉を伝え、そして祝福のキスをした。
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これからも二人の強い絆と、故郷の鹿児島や沖永良部島からの大応援というサポートを受けて、彼女はますます強いボクサーであり、優しい母親になっていくであろう。
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≪文・取材≫鳴神富一