スポーツクライミングのトップアスリート、20歳の原田海(はらだかい)選手が11月9日、エナジードリンクブランドのレッドブルが主催するボルダリングコンペティション『Red Bull Asura Exhibition Session(レッドブル・アシュラ・エキシビションセッション)』にゲスト参加し、独特の世界観を語った。
ユースやジュニア時代から年代別日本代表に選出され、国際大会に出場。2018年の世界選手権に初出場し、ボルダリング種目で世界チャンピオンに。また日本人の最上位選手に2020東京五輪の出場権が与えられる2019年8月の世界選手権コンバインドでは4位を獲得。優勝して五輪代表となった楢崎智亜選手に次ぐ日本勢2位の成績を収めている。
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熊野の外岩を登る原田選手 ©Suguru Saito / Red Bull Content Pool
「かなり偏食。お菓子ばかりです」
「毎年遠征場所が変わるので、おいしいものも景色も楽しんでいます」
激闘続きの今季ワールドカップを終えて、オフに入った原田選手がリラックスした表情で語り始めた。
「2019シーズンで僕がいいなあと思ったのは、ボルダリング最終戦のベイル(アメリカ)、リード緒戦のシャモニー(フランス)がよかったですね。食事だったり町の雰囲気だったり。国際大会もロッキーやアルプスの山岳地帯でやるんですけど、人口壁は街の中心に設営されて、そこで大会が開催されるんです」
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撮影=山口和幸
もっとも得意とするのはボルダリング。5m以下の壁をいくつのぼったかで競う。パワーやスピードよりもテクニックと集中力が必要な種目だ。にもかかわらずアスリートらしからぬことも口にする。
「栄養学的な面でいうとあまり気をつけていないですね。かなり偏食です」
だから「僕にその話はふれないほうがいいですよ」と笑う。かつては筋トレ後にプロテインを摂ったりしていたこともあったというが、最近は全くしていない。
「好きなものを食べています。体重が増えないように食べ過ぎには気をつけていますが、甘いものが大好きなんです。お菓子ばかり食べています」
それでも強さを発揮できるのには理由がある。クライミングは全体的なバランスが重要な競技だ。筋力や柔軟性など、どれか特定の要素だけが優れていても好成績は望めない。そのためバランスを保つことを意識して選手生活を送っているという。
クライミングのためのトレーニングはほとんどクライミングでするというのも原田選手らしい。筋トレをメニューに入れてパワー強化を目指す選手も多いが、上りに直結するのはクライミングのトレーニングでしかないと断言する。その中で、自分の上りをしっかりと理解することが大事だとこのスポーツの基本を口にした。
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力ずくではなく多彩なテクニックで上る ©Suguru Saito / Red Bull Content Pool
そんな原田選手がリラックスできるオフタイム。ゲームもやるというが、最近はカメラが好きで、写真を撮ったりしている。
「ガッツリ一眼カメラを持っています。景色とか街中の普通のさりげないスナップを撮って、たまにインスタにアップしたり」
五輪にこだわらず自分をレベルアップさせたい
原田選手のベースには、サッカー、陸上、テニス、バスケットボールなどこれまで様々な競技をこなしてきたスポーツマンとしての資質がある。現在他のスポーツはリカバリーとしても取り入れていないが、チャンスがあればやりたいと思っているという。
一人っ子で、我の強い性格がスポーツクライミングという競技にマッチしていると自己分析している。
「結構頑固だと思います。チームスポーツのサッカーもやっていたんですけど、向いてないなと思う部分が結構あったので、こうやって1人でやるのが合っています。僕は指導者もいないので、1人であれこれ考えながらやるほうが向いていると思っています」
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上り始める前に入念に攻略法を見極める 撮影=山口和幸
2020東京五輪の代表選手選考においては、2019世界選手権で日本勢2位になった原田選手が国際連盟のルール変更によって日本代表の座を得たと報じられている。現在は日本の団体と国際団体の間で変更ルールの解釈をめぐって調整中だが、渦中の原田選手はあまり気にかけない。
「僕がスポーツクライミングを始めたときはオリンピック種目に決まっていなかったし、当然オリンピックだけを目指して頑張っていたわけでもないし、そこの部分は今もあまり変わっていません。
オリンピックという大会があったとしても、僕は他の選手とは違って、そこはあくまでも通過点。単純に自分のクライミングのレベルを上げたいなと思って毎日やっています」
自分の目指すクライミングをする上での過程の1つ。その自然体が強さの秘訣だ。
≪山口和幸≫