【MLB】満票殿堂入りを逃したデレク・ジーターの“本当の価値” | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【MLB】満票殿堂入りを逃したデレク・ジーターの“本当の価値”

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【MLB】満票殿堂入りを逃したデレク・ジーターの“本当の価値”
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デレク・ジーター……、その名を知らぬニューヨーク市民はいない。

プロスポーツ選手が高額年俸や高待遇を求めフリーエージェントでの移籍が当たり前となった21世紀において、デビューから引退までニューヨーク・ヤンキースの主力として選手生活を送った彼は、資格取得1年目にして99.75%という野手最高得票率で野球殿堂入りを果たした

アメリカでは殿堂入りそのものがニュースになるよりも、投票しなかった0.25%となるひとりの記者が「いったい誰なのか」が大きく報じられ、ちょっとした騒動になっている。ジーターさんの殿堂入りがあまりにも当然とされているからに他ならない。

≪文:たまさぶろ●スポーツ・プロデューサー、エッセイスト、BAR評論家≫

アメリカ人のロールモデル 誰からも慕われた人格者

選手としての実績だけが評価されたのではない。自分に甘く他人に厳しい(失礼!)ニューヨーク市民から批難されることない人間的な魅力……、それはジーターさんの存在価値に崇高ささえ付与している。

同時代にニューヨークに住んでいた者として、ジーターさんがメディアに叩かれた記事を目にするっことはそうそうなかった。

伊良部秀輝さんやアレックス・ロドリゲスさん……、時として監督のジョー・トーレさんさえやり玉に上がっていた記事を振り返ると、ジーターさんのそれは皆無という表現にしがみつきたくなるほどだ。

ジーターさんが球界随一の伝統球団のリーダーであり、生粋のアメリカ人で、黒人でもあり白人でもあり、また現役時代は独身を貫いた点も、その全米的な人気の要因だっただろう。

負け試合でも記者の質問にはとことん答え、自身の記録には固執しない。チームの勝利こそが目的。彼はシーズン200安打を8度達成しているが、200安打試合のボールの行方にさえ頓着せず、あのイチローさんに「ジーターはすごい」と言わしめたのは、有名なエピソードだ。

(c)Getty Images

ちなみに米『GQ』誌による『もっともモテる独身男性』(best bachelor)に選ばれたのは1度や2度ではなかったと記憶している。

マライア・キャリーさん、スカーレット・ヨハンソンさん、ジェシカ・アルバさん、タイラ・バンクスさん、ミス・ユニバース……、その浮名に上がった著名人にも枚挙がない。引退後、生涯の伴侶としたのも『スポーツ・イラストレーテッド』誌の表紙を飾ったモデルのハンナ・デービスさんだった。

殿堂入りの得票率トップ10を眺めると、昨年史上初の満票で選出されたマリアノ・リベラさん以下、2位にジーターさん、3位がケン・グリフィー・ジュニアさん、以下トム・シーバーさん、ノーラン・ライアンさん、カル・リプケン・ジュニアさん、タイ・カッブさん、ジョージ・ブレットさん、ハンク・アーロンさん、トニー・グウィンさんと、カッブさん以外は人格者とされた選手ばかりだ。

ジーターさんは、ニューヨーカーの、アメリカ人のロールモデルだった。

 

黄金時代のヤンキースを牽引

(c)Getty Images

95年にメジャー・デビュー。94年はストによりワールド・シリーズが開催されないという前代未聞の事態。アメリカ中の野球ファンが、MLBを見限った……そんな時代だった。

1年目こそ15試合の出場に留まるが、2年目の96年からヤンキースの正遊撃手として定着し、満票で新人王を獲得。ヤンキースの新人王は以降、2017年のアーロン・ジャッジ選手まで待たなければならない。

ジーターさんに加え、リベラさん、バーニー・ウイリアムズさん、ホルヘ・ポサダさん、アンディ・ペティットさんら、マイナー・リーグから育成された中心選手の活躍もあり、ヤンキースは第6期黄金時代を迎える。

96年、18年ぶりにワールド・シリーズの頂点に輝くと、98年、99年と連覇。2000年のワールド・シリーズは1956年のヤンキース対ブルックリン・ドジャース以来となる『サブウェイ・シリーズ』が実現。ニューヨーク・メッツを下し、見事3連覇を成し遂げた

前年、ニューヨークからアトランタに引っ越してしまった私は、この世紀のシリーズをCNN本社で指を咥えて報道していた。ジーターさんはこの年シリーズMVPを獲得した。

(c)Getty Images

2001年は9月11日に発生した米同時多発テロにより、ニューヨークが悲しみに沈む中、ヤンキースはアメリカン・リーグ王者となり、ワールド・シリーズへ進出。アリゾナ・ダイヤモンドバックスに敗れるも、ニューヨークに大きな勇気を与えた

その中心にいたのもジーターさんだ。9・11当日、五大湖上空にいた私も、メッツ・ファンでありながら、このシリーズだけは熱烈に声援を送ったひとりだ。

上記に挙げた黄金期の中心選手全員の背番号はヤンキースにて永久欠番となっている。ウィリアムズさんの『51』は、イチローさんがヤンキースに移籍した際に固辞したことで、日本でも広く知られている。

ジーターさんの『2』が欠番入りしたことにより、ヤンキースの一桁背番号に空きはなくなった。こちらも有名なトリビアだ。

5度の世界一を経験 数字に現れる大舞台での強さ

(c)Getty Images

2009年には松井秀喜さんとともに自身5回目の世界制覇を成し遂げた。

ジーターさんという打者を表すのに「クラッチ・ヒッター」という表現をよく耳にするが、「ミスター・ポストシーズン」とするべきと進言したい。

MLBにおいてポストシーズン出場記録は最多の158試合。734打席、650打数、200安打、111得点とすべてがMLB記録。ちなみにPS最多本塁打記録は、四国アイランドリーグでもプレーしたマニー・ラミレスさんの29本。続いて、同僚ウィリアムズさんの22本、ジーターさんは3位の20本を記録。最多打点はウィリアムズさんの80。

つまり主要打者部門のほとんどをジーターさんが保持している

松井さんはジーターの殿堂入りに際し、「スーパースターでありながらチームへの献身的な姿勢、チームメートへの気遣い、チームの勝利が一番大切であること、選手として常に成長しようとする努力、ファンへの接し方、メディアへの対応、その全てを意識し、やり遂げようとする姿を毎日そばで感じておりました。彼が個人で残した素晴らしい記録以上に、その姿勢を貫いたことを尊敬しています」とコメントを寄せている。それはそのまま、ジーターさんの評価とされるべきだろう。

(c)Getty Images

引退後はメディアの立ち上げも

ジーターさんは現役時代の1996年に『ターン2ファンデーション』という慈善団体活動をスタート。引退後は、アスリートの声をダイレクトに届けるデジタルメディア『Players’ Tribune』を立ち上げている。

ちなみにイチローさんが殿堂入り資格を持つのは2025年。果たして満票選出されるのか……。MLB.comでもすでに話題に上がっている。

祝・殿堂入り。我らが「キャプテン」。

(c)Getty Images

著者プロフィール

文:たまさぶろ●スポーツ・プロデューサー、エッセイスト、BAR評論家

週刊誌、音楽雑誌編集者などを経て渡米。CNN本社にてChief Director of Sportsとして勤務。帰国後、毎日新聞とマイクロソフトの協業ニュースサイト『MSN毎日インタラクティブ』をプロデュース。日本で初めて既存メディアとデジタルメディアの融合を成功させる。

MLB日本語公式サイト・プロデューサー、 東京マラソン事務局広報ディレクター、プロ野球公式記録DBプロジェクト・マネジャーなどを歴任。エッセイスト、BAR評論家として著作『My Lost New York~ BAR評論家がつづる九・一一前夜と現在(いま)』『麗しきバーテンダーたち』『【東京】ゆとりを愉しむ至福のBAR』などあり。

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