スマホアプリなどを展開するミクシィと、スポーツ文化への寄与を目的として活動するアスリートフラッグ財団は、2月19日よりスポーツギフティングサービス「Unlim(アンリム)」の提供を開始する。
それに先駆けて5日、都内で発表会が開催。ボクシングWBA世界ミドル級王者・村田諒太選手(帝拳)と元プロ野球選手・里崎智也さんがアスリートの資金面での苦労を語った。

プロアスリートをも悩ます活動資金の捻出
スポーツギフティングサービスとは、好きなアスリートやチームへ寄付を行うサービス。「Unlim(アンリム)」はファンがギフティング(寄付)することで、寄付受付金額の67%~83%が支援金として各アスリート及びチームに支払われる仕組みだ。
アスリートたちはUnlimを通じてファンから金銭的な支援を受けることで、活動資金にすることはもちろん、競技を盛り上げたり、スポーツを通じた社会貢献も可能になる。ファンは新しい応援のカタチとして、直接アスリートに気持ちを届けられる。
村田選手はアスリートの資金難について、ボクシング界を例に説明。自身は2012年ロンドン五輪でミドル級金メダルを獲得したこともあり「デビューした時からスポンサーがついていたありがたい環境」だったという。
しかし、ボクシングの世界では「プロになれたとしても続けられるかどうかが難しい」とした。ファイトマネーが5万〜10万、それが年に数回しかない状況が続くためだ。
「それに我慢しきれない選手が多い。だからバイトをしたりするが、そっちの方がお金は儲かる。だったら(ボクシングで)努力するよりも、横道にそれてそっちでやったほうが(生活は)良くなる。長いこと継続できずに才能を無駄にしてしまう選手がものすごく多い」(村田選手)

デビューしたてで多くのファイトマネーが入るほど甘い世界ではない。だからと言って才能ある選手が資金難でリングを去っているとしたら惜しい話だ。
「せめて日本チャンピオンにでもなればそれなりに夢を持たせたい。実際、日本チャンピオンでも100万円もらえればいいほう。年2回試合をしたとしても200万」
「でも、あなたの主たる収入はなんですか? って話なんです。プロボクサーなのか、それともボクシングはアルバイトで、主たる収入は違う仕事なのかということになってしまう。日本チャンピオンになったからには、ドカンと(ファイトマネーを)もらえないと」
引退後のキャリア形成の手助けにも
Unlimでギフティングが集まった場合、アスリートは3ヶ月毎、もしくは引退時にまとめて支援金を受け取るなどの選択が可能だ。現役時代の活動資金のみならず、選手のセカンドキャリアへの足がかりにもなってくれる。
現役時代、千葉ロッテマリーンズで捕手として活躍した里崎さんは、第二の人生に向けて「現役時代にどこまで貯蓄、資産形成できるか」を考えていたという。
「プロ野球選手ならそんなにお金に困っていないだろうという認識が多いと思うが、高年俸はごく一部の選手。プロ野球選手は年俸以外の副収入はほとんどないので、(Unlimで)新たな資金を得られるのはセカンドキャリアにおいてもアドバンテージが得られると思う」(里崎さん)
また、チームへのギフティングも可能なことから、「ファンの人が球場に行ったりグッズを買ったりしてお金を落とす以外に、応援という形で資金援助することで球団が使える資金が増える。FA流出が防げたり、FA選手を獲れたり、外国人選手の補強など、資金力が高い球団以上のことができる球団にファンの力で育て上げることも可能になる」と続けた。

「夢を追いかけられる人が増えて欲しい」
ファン一人ひとりのギフティングは大きなものではないかもしれない。しかし、その輪が広がればスポーツの世界を変えられる力になる。小さな応援が大きなムーブメントになる可能性も秘めている。
「既存の収益システムでは限界がある。新しい何か、収益構造を作らなければいけない。(Unlimが)その一つになればいい」(村田選手)
アマチュア時代の練習は寒い冬でも原動機付き自転車(原付)で移動し、日本代表になっても使えるお金は限られていた村田選手。「アスリートを目指すのはリスクがあるが、夢を追いかけられる人が増えて欲しい」と結んだ。
Unlimは5日からアスリート、チームの登録を開始。すでに登録にはアスリートとして女子スキージャンプの髙梨沙羅選手、ラグビーの畠山健介選手を筆頭に、数名のアスリートたちの登録が予定されている。
またチームではJリーグのFC東京、Bリーグの千葉ジェッツふなばし、プロ野球独立リーグの栃木ゴールデンブレーブスなどが挙がっている。