女子テニス元世界ランキング1位のマリア・シャラポワ(ロシア)が、引退を発表した。
2004年に17歳でウィンブルドン選手権を初優勝してから、4大大会を5度制し、生涯グランドスラムも達成。一時代を築いた彼女がプレーヤー人生に別れを告げた。
私が彼女と初めて対戦したのは、ウィンブルドン選手権を制す3年前。日本で開催されていたジュニアの国際大会だった。
ベスト8をかけた3回戦だったと記憶している。今後のプロ大会で活躍が期待される有望なジュニアだと聞かされていた。彼女は14歳で、私は15歳での対戦だった。
久見香奈恵
1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。
園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。
2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動をはじめ後世への強化指導合宿で活躍中。国内でのプロツアーの大会運営にも力を注ぐ。
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(c)Getty Images
コートに入るとスラッとした9頭身の体型でブロンドのポニーテールが印象的だ。審判と私たちは試合前、ボールかコートか、どちらかを選択するため、ネットに寄り合いコインを空に向かって投げる。
そのコイントスの際、「こんなにスタイル抜群な人がいるのか」と素直に驚いたことを覚えている。今思うと率直な感想だったが、試合前から彼女の美貌に、プレーヤーとして見惚れていたのかと振り返ると、今の自分なら、その自身に喝を入れてやりたい。
当時私自身、ストロークからの展開にも自信があった。しかしいざ試合となると、彼女のその長い足、ストライドを活かしたフットワークによる、それまで他の選手にはないコートカバーリング力を思い知らされた。
「ん? いつもならこのボールで相手をコートの外に出せるのに」
そんな感覚の不一致は想像以上に続くこととなり、私の焦りはミスに繋がった。一方の彼女は、ミスも少なく淡々とポイントを積み重ね、僅かなチャンスも見逃さずに攻め続けてきた。結果、私は2−6、2−6であっけなく敗退した。
それから2年後に日本で開催されたジャパン・オープンにおいて、彼女はシングルスとダブルスでWTAツアー初優勝を飾った。翌2004年にはウィンブルドン選手権で見事シングルス優勝を果たし、遠い存在の世界のスターになった。
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(c)Getty Images