新型コロナウィルスが全世界の動きを止めた。世界中を転戦するプロテニス選手の活動にも、もちろん大きな影響が出ている。
3月初めから国内で開催予定だった、ツアー下部であるITF(国際テニス連盟)大会も順次中止、または延期を発表。男子は、亜細亜大学国際オープンテニスを皮切りに、5大会すべてが中止および延期を決定した。
女子は、横浜慶應チャレンジャーを無観客での開催に踏み切り、無事に決勝戦まで行い閉幕したものの、翌週からの5大会は、すべて男子同様の扱いとなった。
この状況に選手たちは、諸外国の情勢や日本からの入国制限がかかっている国を調べ、どうにかアジア以外の地域に出て試合ができないかと対策を立てていた。
実際に国内の流れを読み、この時期に諸外国の大会を選んだ選手もいる。国内パニックが起こる前に出国し、試合ができる大会を求めた。
その判断が功を奏し、日本と中国以外の国では、先週まで問題なく試合を進められた。
≪文:久見香奈恵≫
元プロテニスプレイヤー。2017年引退後、テニス普及活動、大会運営、強化合宿、解説、執筆などの活動を行う。
※各種試合開催、中止情報はすべて3月16日現在のもの。
急激な変化を迎えたテニス界
一抹の不安を感じながらも、大会に出場するため、それぞれの選手が各国へ渡航していた。しかし、先週半ばから事態は一気に変化を迎える。
「第二のグランドスラム」と呼ばれているBNPパリバ・オープンは、大会開催16時間前に衝撃的な中止を発表。
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BNPパリバ・オープンが中止 (c)Getty Images
その後、世界保健機関(WHO)からのパンデミック宣言を通じ、ATP(男子プロテニス協会)とITFからは4月20日の週までのツアー休止を告示。
WTA(女子テニス協会)は、4月3日から開催予定だったボルボ・カー・オープンとクラロコルサニタス・オープンを中止するとだけ発表していたが、先ほど5月2日までの大会をすべて休止すると再発表した。
選手たちは、大会からのキャンセル通知がないことを当てに現地へ向かったが、到着と同時にこの決定を受け取った。
もちろん、落胆を隠せない。驚きと致し方ない気持ちを抱え、多くの選手が余儀なく日本に帰国した。
ある選手から「帰国途中の飛行機内は30人にも満たない数でした」と聞いた際、私自身も本当に世界の動きが止まっていると、ひしひしと感じた。