今週は東京競馬場でジャパンC(芝2400m)が行われる。
無敗の三冠馬にJRA・芝GI8勝の名牝が相対する「最初で最後のドリームマッチ」。世紀の対決を満員のスタンドで埋めることができない事情は残念だが、観るものを熱くさせるような戦いに期待したいところだ。
さて、データで紐解く今年のジャパンカップ。まずはデータ分析から浮かび上がったキーワードをご覧いただきたい。
1.アーモンドアイの勝利確率は「0.0%」?
2.コントレイルに立ちはだかる「3歳牡馬サンデーサイレンス系」の壁
3.デアリングタクトを後押しする「馬券内率100%」データ
4.データが導く2020ジャパンカップの穴馬候補は?
■アーモンドアイの勝利確率は「0.0%」?
天皇賞(秋)で誰も足を踏み入れていなかったJRA芝GI・8勝を達成。2年前に驚愕のレコード勝ちを収めた舞台でラストランを迎えるアーモンドアイ。
「ライフホース」と鞍上のC.ルメールが語る女傑が見せる最後の雄姿。引退レースに花を添える……そんな想いを阻止するかのようなマイナスデータがこちら。
・前走天皇賞(秋)勝利から臨む5歳馬【0-1-3-4】
上記8頭の内訳は、
・ヤエノムテキ
・レッツゴーターキン
・ヘヴンリーロマンス
・トーセンジョーダン
・エイシンフラッシュ
・スピルバーグ
・ラブリーデイ
・キタサンブラック
キタサンブラックをはじめ、幾多の名馬が着順を落としてしまっているのだ。
加えて今回、アーモンドアイが採用するローテーションは休み明け2戦目。4歳以降、この臨戦過程では【0-1-1-1】と勝利実績がない点も気がかり。慣れ親しんだ府中の地でのウイニングラン……その道のりは険しい。
■コントレイルに立ちはだかる「3歳牡馬サンデーサイレンス系」の壁
父ディープインパクトと同じ無敗の三冠を達成したコントレイル。
コロナ禍に現れたニューヒーローの誕生は上半期の競馬界を大いに盛り上げた。新時代を象徴する無敗の三冠馬に死角はあるのか? まずはこちらをご覧いただきたい。
・父サンデーサイレンス系の3歳牡馬【0-3-3-20】
ジャパンカップの3歳牡馬参戦は決して珍しくない。過去にはスペシャルウィークやエルコンドルパサー、ジャングルポケットにネオユニヴァースといった名馬たちが古馬との戦いに挑んできた。
しかし、勝利を挙げた3歳牡馬は「非サンデーサイレンス系」に限定。父サンデーサイレンス系は国際GIにおいて一敗地にまみれる結果に終わっている。
同年の牡馬三冠馬が参戦するケースが極めて稀ではあるものの、過去データとの比較で死角が生じるコントレイル。見るからに消耗の激しい一戦だった菊花賞からの回復具合も含め、慎重なジャッジを下す必要がありそうだ。
■デアリングタクトを後押しする「馬券内率100%」データ
ぶっつけ本番で秋華賞を制し、史上となる無敗での牝馬三冠に輝いたデアリングタクト。
同世代の牝馬相手では無双状態だったものの、今回は歴戦の古馬が相手。「3強」においてもっとも人気がなさそうな同馬だが、思わず食指が動いてしまうようなデータがこちら。
・同年秋競馬で無敗の秋華賞馬【2-1-0-0】
連対率は驚異の100%。ファビラスラフイン、ジェンティルドンナ、アーモンドアイがその3頭にあたるわけだが、秋競馬無敗の勢いそのままに「古馬の壁」をいとも簡単にぶち破っているのだ。
3歳牝馬ゆえ、53キロの軽量で臨めるのは大きなメリット。世紀の一戦を制し、連勝をさらに伸ばす可能性は想定すべきだろう。
■データが導く2020ジャパンCの穴馬候補は?
この項では、データ面から強調できる穴馬候補2頭を取り上げたい。
<穴候補1 キセキ>
6歳にしてなお健在の古豪。フレッシュなこのメンバー相手ではさすがに……と思われるかもしれないが、追い風となるデータがこちら。
・前走天皇賞(秋)5着内から臨む角居厩舎【1-1-2-0】
・叩き3戦目の成績【0-3-0-0】
ウオッカ、エピファネイアでの勝利が印象的な角居厩舎。数あるGIのなかでもジャパンカップを得意としており、それはデータにしっかりと表れている。
この馬自身、叩き3戦目は連対率100%の好走ローテ。培った経験値をアドバンテージに、3強の牙城を崩す候補として要注意の1頭と言えるだろう。
<穴候補2 グローリーヴェイズ>
昨年暮れの香港ヴァーズを勝利。今年GI2勝のラッキーライラックを異国の地で完封し、全世界に「Glory Vase」の存在を知らしめた。国際GI馬の称号を引っ提げて臨む今年のジャパンカップ、上位進出を目論む同馬を後押しするデータはある。
・前走京都大賞典を3人気内で勝利【3-1-0-2】
一戦ごとの消耗が激しい近代競馬において、隆盛を極めるのは間隔をあけたローテーション。秋競馬を振り返ってもアーモンドアイが安田記念→天皇賞(秋)の直行ローテで制し、デアリングタクトもオークス→秋華賞の臨戦過程で牝馬三冠に輝いた。
グローリーヴェイズ自身、間隔をあけたときにパフォーマンスを上昇させる傾向にある馬。鞍上の手腕が問われる大外枠はマイナスかもしれないが、それを補ってあまりあるローテーション面でのプラス材料は見逃せない。
著者プロフィール
田原基成(たはらもとなり)●競馬評論家
競馬予想の魅力を世に発信し続ける「競馬ストーリーテラー」。予想に対して謎ときに近い魅力を感じており、ローテーション・血統の分野にて競馬本を執筆。現在はUMAJIN内「競馬サロン」にてコラム【競馬評論家・田原基成のいま身につけるべき予想の視点】 執筆中。『SPREAD』ではデータ分析から読み取れる背景を紐解き、「データの裏側にある競馬の本質」を伝えていく。
twitterアカウントはこちら⇒田原基成@競馬ストーリーテラー
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