明日は阪神競馬場で2歳牡馬マイル王を決める朝日杯FS(GI、芝1600m)が行われます。
前回のコラムでもお伝えしたように阪神コースはスピード、スタミナ、パワーが全て伴っていなければ攻略が難しく、2歳牡馬にとっても阪神芝1600mの舞台は楽ではありません。
阪神に移設されて今年で7年目となりますが、近3年の勝ち馬にダノンプレミアム、アドマイヤマーズ、サリオスの名があることから相当な実力がないことには勝ち切るのはが難しいレースと言えます。
それでは気になる騎手データを見ていきましょう。
基本的に過去20年分のデータを基に、当該重賞で注目すべき騎手を先週まで紹介してきましたので、阪神移設後6回分のデータだけではサンプル不足。そのため、2000年以降の全2歳GI、かつ今年の朝日杯FSに乗り鞍がある騎手の成績をまとめています。
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■武豊騎手、2歳GIはデータからも『鬼門』か?
朝日杯FSが行われる度に話題となるのがJRA全GI制覇まで残すところ朝日杯FS、ホープフルSの2歳GI2レースとなっているレジェンド・武豊騎手。今年は2戦2勝のドゥラメンテ産駒ドゥラモンド(牡2、美浦・手塚)に騎乗します。
ただし、データからは人気を下回る結果しか残せていないことがはっきりと浮かび上がり、平均着順と人気の差を重視した場合は最も買いづらい騎手と言えそうです。
武豊騎手が2歳GIで勝利を挙げたのは1994年の阪神3歳牝馬S(現在の阪神JFに該当)の1度切りであり、以降26年ものあいだ勝利から遠ざかっている事実。
朝日杯FSのみならず2歳GIそのものが『鬼門』と言えますね。
■2歳GIで強い騎手
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2000年以降の2歳GI騎手別成績績
騎乗回数は8鞍と限られますが、着順と人気のバランスから優れているとデータから示されたのは戸崎圭太騎手です。
阪神で開催された朝日杯FSは1度しか騎乗経験がないものの、2013年の阪神JFでは5番人気のレッドリヴェールを優勝に導き、2017年の阪神JFでは4番人気のマウレアで3着に好走。
以前、ご紹介した北村友一騎手と同様に阪神芝1600mの走らせ方を熟知している騎手と言えそうです。
今年戸崎圭太騎手が跨るのが前日17時段階で6番人気のショックアクション(牡2、栗東・大久保)。
過去のデータ通りとなれば掲示板入りが見込める状況ですが、果たしてそれ以上の成績も残せるのでしょうか?
また、騎乗数の多さを思えば、平均着順と人気の差にそれほど大きな開きがなく、安定した成績を残しているとデータから示されたのが福永祐一騎手。
今年牡馬3冠ジョッキーとなった福永祐一騎手が跨るのが、前日17時段階で1番人気のレッドベルオーブ(牡2、栗東・藤原英)です。
■福永騎手は2歳戦で抜群の成績
そこで福永祐一騎手とレッドベルオーブについて、同騎手の今年の2歳戦騎乗時成績と人気をセットで見ていくことで、この組み合わせが“買い”なのか検証していきましょう。
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福永騎手 2020年2歳戦人気別成績
福永祐一騎手の今年の2歳戦人気別成績は表の通り。
2番人気から3番人気の馬に騎乗時は平均着順と人気の開きが大きく、人気に応えられないケースが多いようですが、1番人気の馬に騎乗した際はほぼ崩れません。
ちなみに、今年(先週まで)の1番人気馬の平均連対率が50.1%、平均着順は3.7着ですから、福永祐一騎手が残してきた成績は実に優秀です。
平均着順2.1着が示すように福永祐一騎手が2歳戦で1番人気に支持された際はまず連対圏(2着以内)が見込める状況ですね。
つまり、朝日杯FSのレッドベルオーブに関しても、ここまでのデータ、傾向が当てはまるようであれば2着以内を確保する可能性は高そうです。
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■朝日杯FSも馬体の完成度に注目
最後に馬体という観点から朝日杯FSで注目すべき馬をご紹介したいと思います。
朝日杯FSも先週の阪神JFと共通する傾向があり、2017年のダノンプレミアム、2018年のアドマイヤマーズなど高い馬体完成度を誇る馬が勝ち切る傾向にあります。
2歳GIだけに完成度の高さが決め手となったケースもあったかもしれません。
出走馬の中でキ甲周辺(馬の成長をはかる目安となる部分)の出っ張り具合、全体的な体つきから、完成度が高いと判断できるのはモントライゼ(牡2、栗東・松永幹)です。
同馬は先日現役引退、種牡馬入りが発表されたアドマイヤマーズと同じダイワメジャーの産駒。
肩の位置よりも尻の位置が高いため、一瞬のスピードに優れた短距離馬の可能性はありますが、馬体という観点からここでも見逃すことはできません。その走りに注目してみてください。
著者プロフィール
伊藤大輔(いとうだいすけ)●「UMAJIN.net」編集部
秋田県生まれ。スポーツ関連書籍出版社、競馬専門紙の勤務を経て、現在はUMAJIN .netでライティング、競馬データ解析等を担当。『SPREAD』では主観的要素の強い「馬体解析」と客観的なデータの蓄積である「騎手データ」から、注目すべき馬と騎手を取り上げていく。