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【ボクシング】円熟の井岡一翔vs勢いの田中恒成 大晦日開催“ドリームマッチ”の展望を占う

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【ボクシング】円熟の井岡一翔vs勢いの田中恒成 大晦日開催“ドリームマッチ”の展望を占う
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大晦日のボクシング興行もすっかり恒例行事となり、毎年楽しみにするファンも増えたことだろう。今年は、WBO世界スーパーフライ級チャンピオン井岡一翔に、前WBO世界フライ級チャンピオン田中恒成が挑む、なんとも楽しみなカードが実現した。


井岡は言わずと知れた日本人初の4階級制覇王者。挑戦者の田中も無敗のまま3階級を制覇した実績を持つ。今回はフライ級のベルトを返上して4階級制覇を狙ってきた。つまり、計7冠の実質チャンピオン同士が激突するドリームマッチなのだ。


■田中にとっては千載一遇の絶好機「俺が上にいけるチャンス」


この試合を迎えるにあたり両者のスタンスは大きく異なる。田中は、今回の一戦を千載一遇の絶好機と意気込む。「地方にいるとチャンスが少ない。デビューから7年経って、俺が上にいけるチャンスがようやくやってきた」と語る。


戦績は15戦全勝9KO。ミニマム級からフライ級までの3階級をデビュー12戦という最速で制した完璧なレコードにも関わらず、なぜかブレークしきれないもどかしさが伝わってくる。


岐阜県出身で、名古屋のSOUL BOX畑中ボクシングジムに所属。試合のほとんどは愛知県か岐阜県で行われてきた。東京でのデビュー戦は、昨年の大晦日に行われた3度目の防衛マッチ。大田区総合体育館のリングであった。この試合を見事な左右アッパーで3ラウンドKO勝ちしたものの、未だに“全国区”の知名度には至っていないことは事実だろう。


しかも、その試合も井岡の前座だった。「俺が上にいけるチャンス」とは、知名度抜群の井岡を倒して自分がメインイベントを張る、という決意にほかならない。同じ名古屋出身の薬師寺保栄が全国区になったのも、辰吉丈一郎という人気者を倒したからだった。もし、ここで負ければ次はない。明確な目標を持つチャレンジャーには殺気が漂う。


■格の違いを強調する井岡、その背景とは?


一方の井岡は格の違いを強調する。田中については「アマチュアの経験もあって、いい選手」といなし、「やってきていることが違う。10年間、トップでやってきた実力を見せるだけ」と余裕の発言をした。


その背景には、コロナ禍の影響で、実現の可能性があったファン・エストラーダローマン・ゴンザレスジェルウィン・アンカハスらとの統一ビッグマッチが棚上げになった現実がある。


無為に時間が経つうちに、田中がWBOフライ級ベルトを返上、自動的にWBOスーパーフライ級の1位にランクインした。つまり、今回の一戦はWBOが定めた指名試合ということになる。「(田中は)知名度がなくてメリットがない」という井岡の言葉は、ラスベガスMGMグランドと大田区体育館の違い、とも取れる。


■スピードと勢いの田中、円熟の井岡



前WBO世界フライ級チャンピオン・田中恒成 (C)Getty Images



では、両者の間には超一流の世界チャンプと地方のB級チャンプほどの差があるのだろうか。実は識者の評価は意外なほど接近している。


田中の勝ちを予想する意見は、スピードと勢いに着目する。確かに、怯んだ相手に一気に襲いかかる決定力は軽量級離れした迫力だ。もし、井岡が慎重に見ていこうとすれば、思わぬ窮地に陥りかねない。


逆に田中の弱点はディフェンスだろう。過去にもカウンターをもらい痛烈なダウンを喫している。また、2-1で判定勝ちを拾った木村翔との世界フライ級タイトルマッチでは、ラフな打ち合いの末に最終回、グロッキーになり底を見せた。


■田中にチャンスがあるとすれば捨て身覚悟の先制攻撃


その点、井岡のディフェンスは安定感抜群だ。長身のサウスポーで懐の深いジェイビエール・シントロン戦でも、判定になったとはいえ、完全に試合をコントロールしていた。ディフェンスでプレッシャーをかけるテクニックはさすがであった。このディフェンスを崩すのは難しい。


田中にチャンスがあるとすれば、思い切った先制攻撃だろう。スピードを生かして果敢に攻め込み、得意の右アッパーをクリーンヒットさせれば、井岡といえども慌てるはずだ。そのチャンスを逃さずに冷静にパンチを当てれば、最速の4階級制覇達成も夢ではない。


井岡のキーパンチはボディブローと見る。田中の速い攻撃をテクニックでかわし、左右ボディブローをヒットすれば、試合の主導権は自ずと握れるはずだ。試合を中盤以降まで持ち込めば、井岡のKOか大差の判定と予想する。いずれにしてもスリリングな打ち合いは必至だろう。


インタビューに答える井岡を見ていると、離婚騒動、引退騒動を起こした頃とは人間がひと回り大きくなったように感じる。ぜひ、指名試合をクリアして、2021年にはビッグマッチを実現してほしい。


著者プロフィール


牧野森太郎●フリーライター


ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」(産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。

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