■感染拡大で遅れていたトップリーグがついに開幕
感染拡大で開幕が遅れていた「ジャパンラグビー トップリーグ2021」が、2月20日、21日にようやく開幕する。昨年の6節以来の公式戦。ラグビーファンはかなり待たされた印象だ。
当初はファーストステージ、セカンドステージ、プレーオフという3段階で順位を決定する予定だったが、開幕が遅れたため、大会フォーマットが変更になった。まず、レッドカンファレンス、ホワイトカンファレンスそれぞれ8チームによる総当たりのリーグ戦を行い、次にトップチャレンジリーグ上位4チームを加えた計20チームによるプレーオフトーナメントが開催される。決勝戦は5月23日、秩父宮ラグビー場で行われる。
今年のトップリーグは注目度が高い。ワールドカップ・フランス大会が2年半後と近づいた状況で、サンウルブズの活動が終了。ジャパンのチーム強化という意味でも、トップリーグの存在が重要になった。有名選手ばかりでなく、伸び盛りの若手選手にも注目だ。
さらに、来季からは、よりプロ化を進めた新リーグが発足する。どのチームが1部リーグに残るかも気にかかる。
■世界のスター選手がトップリーグに集結!
具体的な見どころを解説する前に、まず、このメンバーを見てほしい。
ボーデン・バレット、ベン・スミス、TJペレナラ、アーロン・クルーデン(以上ニュージーランド)、マルコム・マークス、マカゾレ・マピンピ(以上南アフリカ)、マイケル・フーパー(オーストラリア)、グレイグ・レイドロー(スコットランド)。
一体、何のリスト? 世界選抜チーム? と首をひねった方もいるだろう。一昨年のラグビーワールドカップ東京大会で、最高のプレーを見せてくれたスタープレーヤーがずらり。名前を読み上げるだけで、数々の熱戦がまぶたに浮かんでくる。
実は、これらのスターは今年から日本のトップリーグに参加する選手たちなのである。しかも、昨年から参加しているプレーヤーには、キアラン・リード、ブロディ・レタリック、ライアン・クロティ(以上ニュージーランド)、バーナード・フォーリー、サム・ケレビ(以上オーストラリア)がいる。
つまり、日本に居ながらにして、TJペレナラとレイドローのスクラムハーフ対決、バレット、フォーリー、クルーデンのスタンドオフ対決が見られるのである。これって凄いことだと思う。ワールドカップ開催で日本ラグビー界は一変した。そのインパクトの大きさを、改めて実感できるメンバーだ。
■サントリーのハーフ、センターにタレントがそろう
さて、注目チームだが、まずサントリーサンゴリアスを挙げたい。何と言っても、オールブラックスの司令塔ボーデン・バレットの加入が楽しみだ。2019年のワ―ルドカップではフルバックで出場したが、サントリーではスタンドオフでの起用が予定されている。スタンドオフこそ彼のベスト・ポジション。世界一のプレーを存分に堪能したい。
コンビを組むスクラムハーフは流大が有力だが、昨年、キャプテンとして早稲田大学を優勝に導いた斎藤直人に注目だ。本人は「まず、試合に出ること」と殊勝だが、バレットも記者会見で斎藤選手のポテンシャルに言及していた。背番号9を勝ち取るつもりで挑んでほしい。
センター陣も強力だ。ジャパンの中心選手でもある中村亮土、ワラビーズのサム・ケレビ、早稲田出身のルーキー中野将伍とタレントがそろう。迫力のある展開ラグビーが期待できそうだ。
■複数チームにチャンスあり。優勝争いも興味深い
ディフェンディングチャンピオンとなる神戸製鋼コベルコスティーラーズはダン・カーターが退団したが、入れ替わるようにアーロン・クルーデンとベン・スミスが加入した。ふたり合わせたオールブラックスのキャップは、なんと134。レジェンドの実力を見せてくれるだろう。
日和佐篤、山下裕史、中島イシレリというプロップ陣、世界一のロック、レタリックを擁するフォワードも強力だ。連覇を狙える布陣といえる。
そのほか、坂出淳史、ヴァル・アサエリ愛、稲垣敬太、堀江翔太の一列が凄いパナソニックワイルドナイツ。リードとフーパーが同じチームで夢のバックローを組むトヨタ自動車ベルブリッツ。総合力で勝るヤマハ発動機ジュビロが優勝圏内と見る。
かつては、サントリーとパナソニックの力が秀でていた時期もあったが、近年は各チームの実力が接近してきた。特に今シーズンは混戦が予想される。優勝争いという点でも面白くなりそうだ。
■ラストシーズンを迎える五郎丸、福岡に声援を
忘れてはいけないのが、ラストシーズンとなる五郎丸歩と福岡堅樹の活躍だ。ふたりが記した日本ラグビーへの貢献は、いまさら繰り返すまでもない。最後の勇姿をしっかりと見届けたい。
トップリーグから武者修行に旅立ったふたりにもエールを送ろう。松島幸太郎は、フランスのクレルモン・オーヴェルニュで見事にレギュラーを勝ち取っている。かつては海外チームに所属しても試合に出ることすら難しかった。彼の活躍は胸のすく思いだ。
そして、姫野和樹はニュージーランドのハイランダーズのスコッドとしてスーパーラグビーに挑む。ぜひ、何倍もたくましくなって帰ってきてほしい。
最後に個人的に見たい選手をひとり挙げさせてほしい。NTTドコモレッドハリケーンズのマピンピだ。ワールドカップ決勝で見せた突破は、驚き以外の何ものでもなかった。あのタッチラインぎわの疾走をもう一度見たい! 走れ、マピンピ!
著者プロフィール
牧野森太郎●フリーライター
ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」(産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。