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■優勝はディフェンスが際立ったパナソニック
23日、日本選手権を兼ねたラグビー・トップリーグプレーオフトーナメント決勝が行われた。今シーズンはコロナの影響でリーグ戦開始が1カ月遅れ、日程も大幅に変更されたなかでの開催だった。選手、関係者の甚大な努力のおかげで無事にスケジュールを終えたことに、まずは拍手と感謝を送りたい。
決勝戦は、サントリーサンゴリアスの攻撃力とパナソニック ワイルドナイツのディフェンスが激突する接戦が期待された。そんななか、開始5分にパナソニックのセンター、ディラン・ライリーがバックラインのパスをインターセプトして先制トライ。このプレーが大きかった。ロースコアの展開が予想されるなか、パナソニックが福岡堅樹のトライなどを追加して、前半を23-7とリードした。
一方のサントリーは、ボーデン・バレットを徹底的にマークされて攻撃にリズムが出ない。70分以降の2トライで5点差に迫って面目を保ったが、内容的には完敗だった。パナソニックは2015年以来、5度目のトップリーグチャンピオンに輝き、サントリー、東芝ブレイブルーパスに並んで最多となった。
■外国人スター選手とイキのいい若手が活躍
プレーオフ終了後、表彰選手が発表され、トップリーグMVPには福岡堅樹が選ばれた。リーグ戦を終えた時点ではボーデン・バレット(得点王)の受賞が濃厚かと思われたが、プレーオフに入って印象的なトライを連発、優勝に貢献した福岡にトロフィーが渡った。終わってみれば、福岡の花道を飾るトーナメントといえる結果だった。
今シーズンを振り返ってみれば、なんといっても海外からの大物スター選手の大活躍が注目を集めた。バレットのほか、ブロディ・レタリック、TJ・ペレナラ、キアラン・リード、マイケル・フーパー、マルコム・マークス、マカゾレ・マピンピ、グレイグ・レイドローなどが印象に残った。しかし、そのほとんどは日本を去ってしまう。本国での海外でのプレーに関する契約が「1年だけ」「2年まで」となっているためだ。来年スタートする新リーグでは、その「穴」を埋めるのが課題となりそうだ。
日本人の若手選手からもスター候補が続々と登場した。サントリーの斎藤直人(SH)、中野将伍(CTB)、トヨタ自動車ヴェルブリッツの高橋汰地(WTB)、吉田杏(NO8)、NTTコミュニケーション シャイニングアークスの石井魁(WTB)、クボタピアーズの金秀隆(FB)、神戸製鋼コベルコスティーラーズの松岡賢太(HO)、李承信(SO)、パナソニックの福井翔大(FL)竹山晃暉(WTB)、リコーブラックラムズのメイン平(FB)など。今後、日本のラグビーを牽引するタレントといえる。
特に李承信は、帝京大を中退して入部した21歳。海外では10代の代表選手もいる。これまでは大学を卒業してからトップリーグに参加するルートが主だったが、今後は高卒からの人材も戦力として考えられるかもしれない。なお、トップリーグ新人賞には、金と竹山が選出された。
■ジャパン代表メンバーはベテランが存在感を示す
日本選手権終了の翌日には、フォワード21名、バックス15名のジャパンのメンバーが発表された。こちらはリーチ・マイケル、田村優、稲垣啓太ら2019年のワールドカップ経験者が18名を占めるベテラン重視の選考となった。そのなかで新鮮味があったのは、スクラムハーフの斎藤、荒井康植、ウイングの江見翔太、シオサイア・フィフィタあたりか。ワールドカップ・フランス大会に向けて若い力をアピールしてほしい。
代表はさっそく26日から、別府での合宿に入っている。今後はサンウルブスとのウォームアップ・マッチを経て、6月26日にスコットランドでブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ、7月3日にダブリンでアイルランドとの2つのテストマッチを迎える。ここで結果を残せば、さらなる盛り上がりが期待できる。
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著者プロフィール
牧野森太郎●フリーライター
ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。