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去る8日、日本発・世界初のプロフェッショナル・ダンスリーグ「Dリーグ」の11ラウンドが終了した。全9チーム中、トップ4チームだけが勝ち進むことができる7月1日開催のチャンピオンズリーグを前に、とうとう残すところ1ラウンド。1月20日の開幕から2週間隔で休むことなく11回、すべて別個の演目をこなしながら闘い続けてきた各チームの努力と集中はいかばかりか。思いを馳せるも、想像の範疇を超えてしまい、かけるべき労いの言葉が容易に思いつかないほどだ。
とにかく関係者全員、前人未踏の偉業の真っ只中である。だが、レギュラーシーズン・ジャッジである黒須洋嗣氏も11ラウンド終了後のコメントで「皆、進化している、上がっている」と言っていたように、明らかに1ラウンド進むごとに、どのチームもスキルのアップや練られ具合はもちろん、演技の迫力と重みまでが増し、ますます見応えある“プロの域”の確立を感じさせるリーグになってきたことは間違いない。
■RIEHATA氏率いるロイヤルブラッツ、再び覇者に
ラウンド11は、ラウンド3でも優勝をさらったavex ROYALBRATS(以下、ロイヤルブラッツ)が再び覇者となった。世界的なダンサーであるRIEHATA氏がディレクターを務め、たしかなスキルと共に、毎ラウンド違った“遊び”と“洒落っ気”を見せてくれる演目が印象的な、Dリーグ9チームの中でもとりわけ個性が光るダンサーが集まっているチームである。
【動画】チーム全員の“本気”が、風圧となって観るものに迫る ラウンド11を制したavex ROYALBRATSによる圧巻のパフォーマンス
このチームで特筆すべきはそのミュージカリティと表現力の素晴らしさ。動きを音にぴったりと嵌めてくるのはもちろん、表情を含む渾身の表現によって、彼らの踊る空間に奥行きや余韻が出現し、それを目で追う観客の心を完全に惹きこんでしまうのだ。今回の演目でも、独特の世界観で2分をドラマティックに踊りぬき、演技の終わり、ダンサー全員が、糸が切れたごとく舞台に次々と倒れこむ様は、身体をステージに打ち付ける音さえ効果的な余韻を残し、ラストでさらにギュッと観客の胸を掴む仕掛けが仕込まれていた。
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ディレクターを務めるRIEHATA氏 (C)D.LEAGUE 20-21
そしてとにかく、踊りに迷いや躊躇がいっさいないのが、ロイヤルブラッツの突出した良さ、そして好ましさと言えるだろう。試合後のインタビューでも今回の演目で主役をつとめたKAITAが「腕と脚がとれるんじゃないかってくらい踊った」「本気でふざけて、観客をエンターテイメントで笑わせたい、喜ばせたい。笑われても感動させられるんだってプライドで踊りきりました!」と語っていたが、チーム全員の“本気”が、風圧となって観るものに迫ってくる。
彼らの踊りと音楽の世界に自分が呑み込まれていく感覚は、爽快さを生み、快感さえ伴うほどだ。それは、ゲストダンサージャッジを努めたMASAO氏が言っていた、プロとしての大事な要素である「ダンスを知らない人々が見ても感動する、好きと思ってもらうこと」を充分に満たしたものでもあった。
■エンターテイメントに求める最大の魅力
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(C)D.LEAGUE 20-21
今回も、残念ながら緊急事態宣言の発令にともない無観客で関係者と取材陣のみの開催となり、また、2チームの欠場という残念な事柄もあったが、各チームの発する熱いオーラが、会場である新木場スタジオコーストの隅々にまで、いっぱいに満ちていたことをお伝えしたい。
ゲストジャッジの川畑要氏も、ゲストダンサージャッジのLEE氏も、それぞれ「観客あってのエンタメという面もあるが、観客がなくてもこれだけの熱量を飛ばせるのが凄い」「チームのカラーや気迫がびしびしと伝わる。観客がはいったらもっと凄いことになる」と、各チームのエネルギーを出し切った演技を揃って賞賛した。
自身もエンターテイナーであるからこその、演じる時の熱量の尊さと重要性を知り尽くした上でのコメントだろう。そして、観る側にとっても、そのポジティブな熱を感じることは、エンターテイメントに求める最大の魅力の一つであることは言うまでもない。
ラウンド1からラウンド11へ、Dリーガー全員の“踊る情熱”の沸点はますます高まっている。残るラウンド12、そしてチャンピオンリーグのその先まで、この情熱が熱風となり、日本中に、そして世界にまで、旋風を巻き起こしていく様を見守りたい。
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(C)D.LEAGUE 20-21
◆レガシーを感じさせるブレイキン“ど真ん中”の誇りと共に ブレイキンを昇華させたKOSE 8ROCKS
◆Dリーグ唯一のガールズチーム「I’moon」が描く未来図 「夢の選択肢を増やしたい」
◆日本中の「ダンサー」に幸せをもたらすDリーグ 魂までが踊りだす喜びがここにある
著者プロフィール
Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。