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総合格闘技の大会としては18年ぶりに東京ドーム開催となる「RIZIN.28」。
前半のスペシャルワンマッチからRIZINフェザー級王者・斎藤裕が登場し、中盤は朝倉海を筆頭とする「RIZINバンタム級トーナメント」、そして「那須川天心 vs. 3人」スペシャルマッチ、メインマッチに朝倉未来vs.クレベル・コイケと、豪華カード全10試合が組まれた。
ここでは前半スペシャルワンマッチ、RIZINバンタム級トーナメント、RIZINライト級タイトルマッチ、メインマッチの見所と勝敗予想をお届けする。
【速報】「RIZIN.28」朝倉未来、クレベル・コイケに屈辱の失神KO「今後は一度考える、引退も含めて」
■「逃げた」「逃げてない」の応戦
東京ドーム大会のメインマッチは「朝倉未来 vs. クレベル・コイケ」。これは現RIZINフェザー級王者・斎藤裕への挑戦権争いか、あるいは既に、これが頂上決戦なのか。それほど、このカードにはハイレベルな一戦が期待されている。
戦前、クレベルは朝倉に対し、ここまで未対戦だったことを「(朝倉が)逃げた」と表現しているが、一方の朝倉は「逃げた? オファー来てない」と応戦。その真相は定かではないが、よくぞこの危険なカードを組んでくれた、と両陣営に拍手を送りたい。
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クレベル・コイケ(C)RIZIN FF
いや、むしろ称賛すべきは朝倉サイドか。
クレベルは欧州最大のMMA団体KSWの元フェザー級王者で、柔術では2019年全日本マスター柔術選手権の黒帯ライト級優勝、無差別級優勝の実績がある。ここまで総合格闘技の33試合で27勝のうち、2勝はKO、23勝は一本勝ちという驚異的なフィニッシュ率を誇る。
朝倉にとっては極めて危険なカードだ。
2018年8月「RIZIN.12」の日沖発戦で1ラウンド3分45秒KOで鮮烈のデビューVを飾り、20年2月「RIZIN.21」のダニエル・サラス戦までRIZIN7連勝を飾った朝倉。一部ファンのあいだで「強い相手と戦っていない」と揶揄された時期もあったが、ルイス・グスタボ、ジョン・マカパ、ダニエル・サラスら海外の強豪相手に着実に、そして確実に頂点へ上り詰めていった。
そして迎えた20年11月「RIZIN.25」のRIZINフェザー級タイトルマッチ。今大会の第3試合でヴガール・ケラモフと対戦する斎藤裕との大一番で、まさかの判定0-3のフルマークでRIZIN初黒星を喫してしまった。
「汚名返上」と言わんばかりに続く20年12月「RIZIN.26」大晦日大会では、弥益ドミネーター聡志を相手に1ラウンド4分20秒KO勝ち。鮮やかな左ハイキックからパウンドに持ち込む“圧勝”だったが、途中、バッティングによる試合中断のアクシデントもあったため再びアンチは騒ぎ始めた。
「朝倉未来、ホントに強いの?」
■「巧い」に「強い」がプラスされた可能性
朝倉未来を表現する場合、強いかどうかではなく、「巧い」という表現がしっくりくる。弟・海が堀口恭司戦で起こした“ジャイアント・キリング”の背景に、セコンドについた兄・未来の助言があったのは有名な話で、対戦相手の分析力は相当なものがある。
アグレッシブな攻撃で試合を支配していくグスタボに対し、冷静に対処しながら要所で打撃を入れてポイントを稼いで判定3-0勝ちを収め、トリッキーな戦術で相手を翻弄するベラトールのグラップラー・マカパの仕掛けを巧みに交わし、間を取りながら着実にカウンターで応戦して、こちらも判定3-0勝ちとした。
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(C)RIZIN FF
今回、ボンサイ柔術のクレベルに対し、朝倉が記者会見で「打撃vs.寝技という展開にはならない」と言い放ったのは、もともとのテイクダウン・ディフェンス力の高さもさることながら、「いろんな試合を映像で1000回くらい観た」という分析で対策済み、と捉えていい。
そして朝倉が「巧い」に加え、「強い」をプラスしてきた可能性がある。
「あまり練習をしない」と公言していた朝倉だが、ここにきて豊富な練習量を取り入れてきた。K-1・魔娑斗の助言もあり、ランニング、坂道ダッシュ、ウェイトトレーニング、スパーリングも欠かさず行ってきたようだ。11日の記者会見時には、契約体重の66キロまで残り4キロであることを明かしたが、これはつまり日々のトレーニングにより既に仕上がっていることを意味する。
■主導権を握れば朝倉未来の粘り勝ち
フルラウンドの試合展開を示唆していたが、フィニッシュ力の高いクレベルだけに試合を急ぐようであれば、冷静に相手の攻撃を見る朝倉のカウンターが入る。
とはいえ両者、ここまでKO負けのないファイター。やはり判定結果に委ねる可能性は高く、1ラウンドはお互いの出方を見て、試合が動き始めるのは2ラウンドか。朝倉は相手を打ち合いに誘うのも巧く、これにクレベルが乗ってしまえば、主導権は朝倉が握ることになる。
着実に有効打撃で稼ぐ朝倉。テイクダウンさえ奪われなければ、朝倉未来の粘り勝ちと見た。
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文・SPREAD/山田