【スポーツビジネスを読む】日本最大級スポーツサイトのトップ・山田学代表取締役社長 後編 「日本のスポーツをDX化する使命」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【スポーツビジネスを読む】日本最大級スポーツサイトのトップ・山田学代表取締役社長 後編 「日本のスポーツをDX化する使命」

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【スポーツビジネスを読む】日本最大級スポーツサイトのトップ・山田学代表取締役社長 後編 「日本のスポーツをDX化する使命」
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日本のスポーツ好きで「スポナビ」を知らぬ者はなかろう。日本最大級のスポーツサイトだ。

しかし実はそのサイトが立ち上げから、すべて順風満帆だったわけではない。2000年に広瀬一郎社長(元電通、故人)、本間浩輔副社長(元野村総研、現スポーツヒューマンキャピタル 代表理事)という体制で株式会社スポーツ・ナビゲーションがスタート。シドニー五輪報道などで独立系スポーツメディアとして、その地位を確立したかに見えたが、ビジネス面でなかなか採算が立たず、2002年サッカー日韓ワールドカップの熱狂を尻目に、Yahoo!へと譲渡された。時代を先取りし過ぎた……と見ることもできる。

その証にYahoo!傘下において「株式会社ワイズ・スポーツ(旧名称)」として再生を図り、現在のようなスポーツナンバー1サイトとなり、同社としては来年で20周年を迎える。

山田学(やまだ・まなぶ)

●スポーツナビ株式会社 代表取締役社長 CEO大学卒業後、大手通信会社で約3年外資系金融企業を担当した後、スポーツビジネスの道に進むため(株)インターナショナルスポーツマーケティングに転職。初のMLB日本語公式サイト立ち上げに関わり、以降NFLJリーグクラブ等のデジタルビジネスに携わる。その後スポーツ専門放送局J SPORTSを経て、2014年にスポーツナビ(当時ワイズ・スポーツ社)に入社し現在に至る。「スポーツxデジタル」領域でコンテンツビジネスに携わり続け、スポーツ界の発展に貢献……が現在の目標。

◆【インタビュー前編】スポーツ事業に従事するきっかけとMLB公式サイトをめぐる冒険

■山田社長が目指す理想は「スポーツ全部カタログ化」

黎明期は外部から、現在はその代表という立場から、スポナビの隆盛を見守ってきた山田さんだからこそ考えるビジョンはある。

「(スポーツの総合サイトのように見えるが)まだまだ手を付けられていない領域が多いです。これは以前からのビジョンですが『スポーツ界を支えるプラットホームになる!』を掲げています。今風に言えば、スポーツ界のデジタルトランスフォーメーションを支える……でしょうか。これに向け、まずは一歩ずつ歩みを進めたいと考えています」。

素人目には、スポナビにすべてのデータがそろっているように見える。だが、ここで山田さんはスポーツの原点「する」「みる」「支える」をテーマにスポナビを分析。

「メジャースポーツについては、スタッツデータがあり、動画があり、色々とそろっているにように見ます。しかし、スポーツの基本アクションは『する』『みる』。この『する』(Doスポーツ)が、まだ何もできていません。そして『みる』についても、マイナースポーツをカバーできていません。(後者の)コンテンツ量が足りません。もっとメッシュを細かくスポーツ情報を集め、最適なタイミングで(ユーザーに)届けたい」と課題を挙げた。

「最終的にはスポナビの『スポーツ全部カタログ化』が理想です。すべてのスポーツ情報が並び、観戦チケットも購入できる……そう考えると課題だらけで、道半ばです」。

■スポーツのDXを実現させるためのカギとは

スポーツのデジタルトランスフォーメーションを実現するためには、もちろんカタログ化だけではない。

「情報が検索できるプラットフォーマーになりたい。デジタルですから、過去の『いいな』と思ったシーンがすぐに検索できるのもそのひとつ。その中には、子どもたちの少年野球のデータや結果、映像があっても面白い。プロ野球はテレビ局が制作した映像、少年野球はUGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)映像。トップから草の根まですべての情報素材をそろえたい。ひとつのカテゴリーで成功事例を作ることができれば、その後は横に展開して行くことが可能だと思います」。5G時代らしく「UGCというのも永遠のテーマのひとつ」と明言。UGCを活用し、オープンなプラットフォーム化を狙う。

また、山田さんは現在のようにビジネスサイドだけにマネーフローが生じる状況についても、改善が必要なのではないかと思案している。「可能であれば(UGCのようにコンテンツを提供する)すべての人が金銭的対価も得ることができるようになればと考えます」。スポーツに関わる人々すべてに収益が行き渡る世の中の具現化だ。「それによって『スポーツの価値』を高め、(ビジネス的にも)『スポーツの地位の向上』を実現することができるのではないかと考えています」。

■スポーツ界でのキャリアを目指す人へのアドバイス

山田さん自身、日本最大級のスポーツコンテンツを抱えるサイトの代表となった立場を振り返り、これからスポーツ界でのキャリアを目指す人へ、どのようなアドバイスがあるかを訊ねた。

「よくあるパターンは、ちょっとスポーツ熱にうなされちゃう方が、スポーツの仕事を求めている場合です。それでフラーっとスポーツ業界に近づいて来ると、まず扉は開かない。(仕事なので)ファンを求めているわけではありませんから」とまずは釘を刺した。

スポーツビジネス全般へのアドバイスは広義に過ぎるので、山田さんは、スポーツのデジタルメディアに限定したアドバイスであると前置きした上で「2つの観点からお話します。ひとつは、まずはITとしてのアプローチ。優れたエンジニアやセンスあるデザイナーは、サイト作りのために必ず必要です。もうひとつは、サービスをグロースさせるアプローチ。グロースさせるマーケターや、その数値を徹底的に読むデータアナリストなどです。スポーツのみからのアプローチは難しいです」と、スポーツ・キャリアにおけるニーズについて解説。

そう語るものの、山田さん自身はもちろん門戸を閉ざすつもりはない。「スポーツで何かしたい……という情熱があれば、環境から学び成長することはできると思います。(その環境に飛び込むために)入念に下調べし、自身の強みを相手に伝えることです」、そうすることでスポーツの仕事への扉が開くのではないと推奨する。

「ボク自身は、スポーツ(ビジネス)に特殊性があるとは思っていません。例えば、スポナビに入社し、広告クライアントである飲料業界や自動車業界の方と会話する……もちろん、そちらの業界に精通している必要があります。それぞれの業界の構造は特有ですが、それはどこの業界も同じように特殊です。『スポーツは特殊だから……』と口にするのは、言い訳だと思っています」と、業界の特殊性はどこでも同様であると説いた。スポーツ業界を俯瞰する際、ぜひ参考にしたいヒントだ。

■「スポーツはエンターテインメントのひとつと捉えるべき」

近年、Bリーグ島田慎二チェアマンが同リーグの改革に向け「夢のアリーナ」を提唱、またプロ野球北海道日本ハム・ファイターズが北海道のシンボルとなる「ボールパーク構想」を発表するなど、以前は「箱もの」などと揶揄されたスポーツの「場」そのものの利点を見直す動きが潮流となっている。

もちろん、それは箱だけではなくコンテンツとセットになった見直しの動きだが、これに対しても山田さんは非常にポジティブなビジョンを持っている。アメリカを始め、スポーツの地位が高い「現場」を目撃して来た山田さんならではの視点もある。

「スタジアムなりアリーナに入った時、衝撃を受けるような場所が日本にも増えたら嬉しいですね。(NFL)スーパーボウルを観戦に行き、ダラス・カウボーイズAT&Tスタジアムに入った時は、衝撃でした。なにしろフィールドと同じかと思えるほどの超巨大ビジョンにあっけに取られ、もうそれだけで満足しそうになる……。あのような驚きがあるスタジアムを日本で具現化できるのか……日本ハムの新しいスタジアムは、本当に楽しみにしています」と、そのニーズについて力説する。

ボストン・レッドソックスフェンウェイ・パークシカゴ・カブスリグレー・フィールドなどメジャーリーグの歴史の重みを感じさせるスタジアムもひどく印象的だが、アトランタのメルセデス・ベンツ・スタジアムやシアトルのルーメン・フィールドなど近未来を感じさせる衝撃は、まだ日本のスポーツ界にはない。

「スポーツはエンターテインメントのひとつと捉えるべきです。『運動』のために建てられた、汗臭い体育館でスポーツの興行があっても、何の感動もありません。感動を掻き立てられるようなスタジアムやアリーナが日本に必要とされています」。

アメリカでは、スポーツのため、スタジアムのために自治体が投資するなどは常識。しかし、その投資が市民から「支持される、サステナブルなビジネスの構築が必要」と理想だけに終わらない現実的な視点も必要とする。

スポーツのデジタル・トランスフォーメーション完成のために、夢のアリーナやスタジアムと、スポナビのようなスポーツのデジタル・プラットフォームの完成とその連携が、日本のスポーツの地位向上に不可欠なのかもしれない。

日本のスポーツ・ビジネスの行く末、特にデジタル領域の将来はスポナビのようなメジャーサイトの牽引力に懸かっているとしても間違いなかろう。山田さんの今後の手腕をますます注視しておきたい。

おっと、うかつだった。山田さんが日本有数のバッシュー収集家であると知りながら、時間の関係で詳細を訊ねそびれてしまった。ご成婚の際、そのコレクションをめぐる逸話もあったと聞いたが、その行はまた次の機会にゆずろう。

日本のスポーツ・ビジネス発展に向けて、山田さんの今後の手腕が注目される(撮影:編集部)

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著者プロフィール

松永裕司●Stats Perform Vice President

NTTドコモ ビジネス戦略担当部長/ 電通スポーツ 企画開発部長/ 東京マラソン事務局広報ディレクター/ Microsoft毎日新聞の協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」プロデューサー/ CNN Chief Directorなどを歴任。出版社、ラジオ、テレビ、新聞、デジタルメディア、広告代理店、通信会社での勤務経験を持つ。1990年代をニューヨークで2000年代初頭をアトランタで過ごし帰国。Forbes Official Columnist

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