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【スポーツビジネスを読む】フライシュマン・ヒラード齊藤恵理称スポーツ&エンターテイメント事業部ジェネラル・マネジャー 前編 スティーブ・ジョブズに学んだコミュニケーション哲学

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【スポーツビジネスを読む】フライシュマン・ヒラード齊藤恵理称スポーツ&エンターテイメント事業部ジェネラル・マネジャー 前編 スティーブ・ジョブズに学んだコミュニケーション哲学
【スポーツビジネスを読む】フライシュマン・ヒラード齊藤恵理称スポーツ&エンターテイメント事業部ジェネラル・マネジャー 前編 スティーブ・ジョブズに学んだコミュニケーション哲学 全 1 枚 拡大写真

スポーツ・ビジネス界は真っ黒だ。

コロナ禍で大会キャンセルが続きお先真っ暗……でもなく、東京五輪も無観客となり真っ暗なトンネルの中……でもなく、金権にまみれ腹黒い……というわけでもないので誤解なきよう。

ここで「真っ黒」とは、男性陣ばかり…を意味している。

もちろん運営などの現場では広報や通訳を始めとし大活躍する女性陣は目立つものの、某理事会などでも問題となったように、スポーツ界のTOPにおいて女性は極めて少ない。

東京五輪組織委員会橋本聖子会長や日本バスケットボール協会三屋裕子会長などは思いつくものの、「元TOPアスリート」ではない、ビジネス的局面からTOPに立つ女性を探すとなると、そうそうお目にかかれない。一般社会においても「ジェンダー問題」について取り沙汰され久しいものの、スポーツ界に至っては、ここ20年ほど進展していないとして過言ではない。

そんな真っ暗なスポーツ界の中で出会ったのが、フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社・齊藤恵理称スポーツ&エンターテイメント事業部ジェネラル・マネジャーだ。同社のシニア・バイス・プレジデントでもある。

インタビューを受ける齊藤恵理称さん

フライシュマン・ヒラード」と聞き、ピンと来る日本人はそう多くはないだろう。ニューヨークに本社を置く最大級の広告およびマーケティング事業グループ「オムニコム」傘下となるコミュニケーション・コンサルティング会社だ。設立75年の同社では、米オリンピックパラリンピック委員会や女子テニス協会などのスポーツ関連団体、BWMVISAP&GGoogle日産などをはじめとするスポンサー企業などのコミュニケーション戦略の設計、アクティベーションの企画立案、実施運営までを手掛け、その知見を日本市場に注入している。

齊藤さんには、その日本法人において2017年11月に設立されたスポーツ&エンターテイメント事業部ジェネラルマネジャーとして、登板願った。

齊藤恵理称(さいとう・えりな)

フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社スポーツ&エンターテインメント・ジェネラルマネージャーシニア・バイス・プレジデント 

筑波大学大学院体育学修士取得後、アップルコンピュータでマーケティングコミュニケーション、“Think different.グローバルブランドキャンペーンを担当、その後プラダのブランドマネージャーなどを経て2009年、フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社に入社。国内外企業のスポーツスポンサーシップ、戦略コミュニケーションを提供。2021年春、早稲田大学大学院 スポーツ科学博士終了。一般社団法人日本ゴルフツアー機構広報アドバイザー一般社団法人ホッケージャパンリーグ理事も兼務する。

◆【インタビュー後編】日本企業のコミュニケーションには「Why」が欠ける

■Appleへ入社後、「世界のコミュニケーション」を学ぶ

いまでこそ、「スポーツ×コミュニケーション」啓蒙の旗手とされる齊藤さんではあるものの、スポーツビジネスとの関わりは新部署を立ち上げてから。

筑波大学院時代から健康や免疫について学術的に取り組んで来たため、スポーツに関心はあったものの、新入社員としてはスポーツとは無関係のAppleへ入社。

時代は1996年、スティーブ・ジョブズ不在のAppleが赤字転落した底辺でもあった。

しかし齊藤さんはここで「世界のコミュニケーション」を学ぶ。ジョブズがAppleに復帰、デジタルディバイスに「ナレッジナビゲーター」という概念を持ち込んだ。97年には、Appleの復権とされるキャンペーン「Think different.」が全世界的に展開された。原案はジョブス自身、CMにはエジソンアインシュタインマーティン・ルーサー・キングピカソガンディなど世界を変えた偉人を登用、ジョン・レノンボブ・ディランマリア・カラスなどのパイオニアもメインに据えられた。ジョブズはこのキャンペーンでAppleの哲学を打ち出した。齊藤さんは、日本法人のマーケティング・コミュニケーションの部署にて、この洗礼を受け、企業におけるコミュニケーションはなんたるかを学んだ。

グローバルコミュニケーションを担当した平昌大会ジャパンハウス前でJ.J.カーター氏と撮影する齊藤恵理称さん

その知見は大きく、その後もコミュニケーションの専門家として、プラダ、マイクロソフトでさらなる経験を積んだ。ここでは同じ外資のコミュニケーションでもアメリカとヨーロッパの差異を学び取ったという。

そして「日本の企業に欠けているのは、このコミュニケーション」と齊藤さんはその課題に気づく。「日本は欧米とは異なる大きな問題を抱えている」と実感した。

それまでの事業会社という立場から、このコミュニケーションについての事業能力を活かし、コミュニケーションを専門とするエージェンシー「フライシュマン・ヒラード」へと転進。企業内のいち部署から抜け出し、コミュニケーションの専門家として飛び立った。

■『パブリック・リレーション』が持つ本当の意味とは……

「日本の企業まだまだ、広告、宣伝を起点にした戦略から抜けきれません。もともと『パブリック・リレーション』が持つ意味を理解されていませんし、その発想がなかなか変えられません」。日本企業では、コミュニケーションという哲学が希薄だと指摘する。

これは国内市場を睨む広告代理店の功罪も大きい。事業会社が代理店にマーケティング戦略に依頼すると最初に手元に届くのは、テレビCMや新聞広告を中心とした広告メニューだ。「クリエイティブ・ディレクター」と名乗るポジションも、Think different. のような哲学より、CMコンセプトやキャッチコピー、またはキャラクターを売り出すようなアイディア出しに力点を置く。

特にスポーツ領域で、この傾向は顕著だ。要するに、スポーツ×コミュニケーションについては、いまだ日本では確立されていない実情の現れだ。

パブリック・リレーションについて話す齊藤恵理称さん

日本においてもスポンサー活動などスポーツ・ビジネスに着眼する企業は少なくとはない。だが、「投資をしてはいるが、効果的に活用されていない」、「スポンサーシップを通じてどのようなレガシーが残せるのかわからない」などの課題を抱えるケースは多く、また2019年のラグビー・ワールドカップ、2020年に予定されていた東京五輪と、国際的大イベントを迎えた日本は課題を抱えていた。

齊藤さんが最初に担当したのはアディダス。やはり海外の企業は、こうしたコミュニケーションに関する戦略に関心は高い。「こうした領域では、P&Gさんも非常に巧みですよね」と齊藤さん自身も感心する。

「東京五輪が決まった際、アメリカ本社からも、日本でスポーツ分野のコミュニケーションを強化すべきだ……という提言があり、それに後押しされる形で新部署がスタートしたのです」。

こうして、「真っ黒な」スポーツ・ビジネス界へと、齊藤さんの船出となった。

◆【インタビュー後編】日本企業のコミュニケーションには「Why」が欠ける

◆シリーズ【スポーツビジネスを読む】

◆【スポーツビジネスを読む】日本最大級スポーツサイトのトップ・山田学代表取締役社長 前編 MLB公式サイトをめぐる冒険

著者プロフィール

松永裕司●Stats Perform Vice President

NTTドコモ ビジネス戦略担当部長/ 電通スポーツ 企画開発部長/ 東京マラソン事務局広報ディレクター/ Microsoft毎日新聞の協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」プロデューサー/ CNN Chief Directorなどを歴任。出版社、ラジオ、テレビ、新聞、デジタルメディア、広告代理店、通信会社での勤務経験を持つ。1990年代をニューヨークで2000年代初頭をアトランタで過ごし帰国。Forbes Official Columnist

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