【ボクシング】13度連続防衛への通過点・V9目指す拳四朗 対するは「下剋上」狙う矢吹正道 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【ボクシング】13度連続防衛への通過点・V9目指す拳四朗 対するは「下剋上」狙う矢吹正道

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【ボクシング】13度連続防衛への通過点・V9目指す拳四朗 対するは「下剋上」狙う矢吹正道
【ボクシング】13度連続防衛への通過点・V9目指す拳四朗 対するは「下剋上」狙う矢吹正道 全 1 枚 拡大写真

WBC世界ライトフライ級チャンピオン寺地拳四朗(BMB)に矢吹正道(緑)が挑戦する注目の一戦が9月22日、京都市体育館で開催される。安定王者の拳四朗に対しKO率73%を誇るチャレンジャーがどんな戦いを挑むのか。勝敗の行方を占ってみたい。

■安定王者のアウトボクシング対カウンター待ちの挑戦者

拳四朗の戦績は18戦18勝(10KO)無敗。今回が9回目の防衛戦で、具志堅用高が持つ日本記録「13度連続防衛」が視野に入ってきた。はっきりとした目標があるボクサーは強い。本人が明言するように、ここは「通過点」としたいところだ。

拳四朗の持ち味は、軽快なフットワークを生かしたアウトボクシング。前後にステップをしながらのジャブでリズムを作り、チャンスに畳みかける攻撃は破壊力がある。その攻防兼備のファイティングスタイルは4団体の王者のなかでも“最強”と評価が高い。

一方、矢吹の戦績は15戦12勝(11KO)。直近の日本ライトフライ級防衛戦は3-0の判定勝ちだったが、それまで勝った試合はすべてKOしてきた。なお、本名は佐藤正道。「あしたのジョー」の主人公、矢吹ジョーからリングネームをとっている。弟もプロボクサーで力石政法という。

ボクシングスタイルは、どっしりと構えたオーソドックス・スタンスからのカウンター・パンチャー。特に右のストレートに力がある。ただ、どちらかというと待ちのボクシングで、拳四朗相手に自ら仕掛けて試合を作るシーンはイメージしづらい。チャンピオンの速いワンツーにジャブを合わせながら、強いパンチを打ち込むチャンスをうかがうことになるだろう。

不安材料は、打たれ弱さ。2018年、現日本フライ級チャンピオン、ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)との試合では、右ストレートを顎にもらい1ラウンド1分32秒でリングに沈んでいる。拳四朗のキレのいい連打を細い顎に受けると、ノックダウンもありえる。

スピード、テクニック、経験を総合して考えると、王者有利は動かない。大差の判定、あるいは中盤以降のKOで防衛記録を伸ばすとみるのが順当だろう。拳四朗はチャレンジャーがいる前で、「余裕でKO勝ちする」と自信満々の記者会見を行っている。

■コロナ明けの王者、コンディションは万全か……

では、試合は、本当にチャンピオンの楽勝だろうか。実は、そう言い切れない理由がある。ひとつは、コロナでの試合延期だ。この試合は当初、9月10日に予定されていたが、8月末にチャンピオンにコロナ陽性が発覚し9月22日に延期された。

ボクシング界でコロナによる延期は珍しくないが、わずか12日後へのリスケジュールは異例中の異例だ。果たして、チャンピオンのコンディションは大丈夫なのだろうか。

この質問に対して、拳四朗陣営は「37.5度の微熱が続いた程度」「療養中はトレーニングをせず、動画を見て過ごした」「9月6日から練習を再開した」と答えている。聞けば聞くほど不安になる。本当に世界タイトルマッチを戦える状態なのだろうか。

2つめの不安は昨年末に起こした器物損壊騒動。制裁金300万円に加え、3カ月間のライセンス停止、奉仕活動と重い処分を受けた。いつもは童顔に満面の笑みを浮かべる拳四朗が、今年4月の防衛戦後には涙で声を詰まらせた。みそぎは済んだかもしれないが、心のダメージは残っているだろう。

3つめは、対戦相手。拳四朗は他団体との統一戦、ビッグマッチを望んでいる。9度目の防衛戦ともなれば、実現していてもおかしくない。ところが、コロナの影響で外国人ボクサーを呼びづらい事情もあり、前回の久田哲也(ハラダ)に続き、日本人同士のタイトルマッチとなった。チャンピオンとしてのモチベーションは上げづらい。

■下克上なるか  ついに巡ってきた人生を変えるビッグチャンス

やはりビッグマッチを熱望しながら叶わず、9月1日に防衛戦を行った井岡一翔(志成)は、格下選手を相手に凡戦を演じた。いくら優秀なチャンピオンでも、気持ちが燃え上がらなければ相手を圧倒できない。ボクシングとはそういうスポーツだ。

逆に、矢吹は王座奪取に燃えている。デビュー5年で初めて巡ってきた初めての世界戦。リング下には、彼を支えてきた妻と2人の子供が駆けつけるはずだ。日の当たる道を歩いてきた同じ年(29歳)のチャンピオンを食って、人生を変えることができるのか。これぞ一世一代のビッグチャンスといえる。

矢吹の座右の銘は「下克上」という。ベビーフェイスに下克上を叩きつけるか、真っ白に燃え尽きるか。見せ場たっぷりの、スリリングなファイトを期待したい。

◆拳四朗 コロナ感染の影響なし 8月25日判明…1カ月足らずでV9戦も「自信しかない」

◆矢吹正道 王者・拳四朗のコロナ感染で試合延期も「自信は深まった」田中恒成とスパー

◆初防衛成功の中谷潤人、“衝撃の左ストレート”が米国でも高評価「アコスタの鼻から鮮血が…」

著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。

22日当日の中継/放送/配信等の視聴方法

日付時間放送・配信媒体概要
9/22(水)18:00~カンテレドーガLIVEライブ配信
9/27(月)21:00~WOWOWライブ/4Kネット放送

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