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【Bリーグ】河村勇輝、大学中退で目指すバスケ選手としての真の挑戦

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【Bリーグ】河村勇輝、大学中退で目指すバスケ選手としての真の挑戦
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高校時代から将来を嘱望されてきた河村勇輝が東海大学を3月末で中退し、来季からは完全なプロ選手として活動していくこととなった。3日、河村が特別指定制度を利用して所属するBリーグの横浜ビー・コルセアーズ(横浜BC)が発表した。

20歳のポイントガード(PG)は昨季に引き続き、今季も横浜BCで特別指定選手としてプレーしているが、大学を中退することでシーズン最後までプレーする。そして、2022-23シーズンより晴れて、純然たるプロ選手としてコートに立つこととなる。

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■決断の要因は2024年パリ五輪

大きなニュースだ。全国高校バスケナンバーワンを決める年末のウィンターカップでは、2、3年生時に福岡第一高校を連覇へと牽引し一躍、全国的な知名度を得た。3年時には当時、前例のなかった、高校生としてBリーグデビュー、加入した三遠ネオフェニックスでエース的な活躍を見せ、モノが違うところを見せた。

現在、大学2年生の河村は会見で、今回の決断は今年1月に入ってからだったと話した。2024年パリ五輪で日本代表としてプレーすることを目指しており、そのことが今回の決断の大きな要因になったとした。

「焦りとかではないですけど、(五輪まで)あと2年という、自分の中では短い期間の中でバスケに打ち込める環境はやっぱりプロバスケのチームに加入することだと思いましたし、プロバスケ選手として活躍するために大学に入学してこの2年間、基礎を学ぶことができたので、この決断が正しかったと思えるようにやっていくしかないです」と決意を口にした。

アスリートの大学進学の是非はしばしば語られるところだ。最も顕著な例は、斎藤佑樹氏だろう。昨季をもって10年間プレーした北海道日本ハムファイターズを退団。プロ野球選手を引退した彼は、全国高等学校野球選手権で優勝を果たしその後、早稲田大学へ進学したがプロではついぞ力を発揮することなく、マウンドを去ることとなった。甲子園優勝を争った田中将大(東北楽天ゴールデンイーグルス)が高校卒業からすぐにプロ入りし成功したこともあって、口さがない者たちからは「大学などへ行かず、高校卒業後に直接プロ入りすべきだった」などと囁かれた。

河村についても、似たような意見を述べる者は高校卒業時から少なからずいた。上述の通り、高校生にしてBリーグでいきなり活躍ができていたからだ。八村塁(NBAワシントン・ウィザーズ)らのようにアメリカの大学へ進学するならともかく、日本の大学バスケでプレーしても伸びない、といった辛辣な声も聞かれた。

■ビジネス面でも違和感のないプロ転向

簡単な決断ではなかっただろうが、稀少な才能を持ち、あるいは今後、日本の将来を背負って立つ選手の一人になりうる河村が、大学を中退してまでも(彼の両親は教師で当人も教員免許の取得を大学での目標としていた)、一刻も早くトップレベルの環境に身を置くことを選択したのは、ある意味では自然なことであると言えるかもしれない。

川崎ブレイブサンダースのスターセンターで、Bリーグ創設初年度のMVP、ニック・ファジーカスは、高校生ながら三遠で活躍する河村が大学へ進学することについて「もうすでにプロでプレーできているのになぜ大学へ行くんだ」と当時、話していたのを思い出す。私が「でも大学に行けば教育を得られますよ」と言うと、元日本代表(2018年に帰化)は「教育はどこにも行ったりしないさ」と返してきた。アスリートの旬は短いが、勉強はいつになってもできるといったところだ。

ビジネス的な側面からも、河村のプロ転向は違和感がない。大学生でありながらすでに楽天からマネジメントを受け、アシックスとアドバイザリー契約を、健康食品会社サン・クロレラとスポンサー契約を結んでいる。それほど彼の選手としての商品価値が高いことの証左だ。頭が良く勉学にも秀でているようで、ファンやメディアに対しての真摯な姿勢から好感度も高い彼だが来季、完全プロとなれば企業はますます放っておかないだろう。当然、チームとしても恩恵が受けられる状況になっていくのではないか。現状、B1で中段に沈むBCの平均観客動員(2020-21シーズンは18位の1376人)上昇の起爆剤ともなりうるだろう。

■スピードと独特のパスセンスで今季も存在感発揮

もちろん、河村自身にとって一番大事なのはコート上でどれだけ高いパフォーマンスを見せ、「選ばれし者」たる力量を示していくことだ。昨季は自身のスタイルとチームから求められる役割の間で乖離があり苦戦したが、今季はコートを広く使って得意のドライブからリングをアタックする、もしくはそこからパスを出すというプレーぶりで上々の活躍をしている。

今季は12月末の加入からここまで13試合に出場し、すべてベンチスタートとなっているが、平均22分弱の出場時間で平均10.5得点。アシストに関してはまだ出場試合数が少なく「規定打席」には到達していないものの5.9本はB1でトップクラスだ。75.1点だった河村加入前の横浜BC(現在13勝21敗で東地区の8位)の平均得点は、加入後には79.2点へと上がっており、アシストも19.9本から21.1本へと増えている。河村というスピードがあり独特なパスセンスを持つ選手が入った効果は、確実に表れている。

特別指定選手としてプレーするのも3年目となり「途中から加入して途中で抜けていくことの難しさやプレーの仕方はだいぶわかってきた」と河村は言う。来季は自身のBリーグキャリアでは初めて、シーズン前からフルに活動参加が可能となる。選手が、とりわけ司令塔で数々のフォーメーション等を覚える必要のあるPGが、シーズン前の合宿から活動に参加し、開幕から出場することで、より十全に力量を発揮できるようになるだろう。

河村自身も「(どれだけ力を発揮できるかは)ヘッドコーチやチームの方針もあるので何とも言えないのですが、でもチームとのケミストリーを築いていけることは良いことですし、よりプレーをしやすい環境にはると思います」と語っている。

先月には今年、中国・杭州で開催のアジア競技大会へ向けた日本代表候補合宿にも招集された。これまでU16、18といった世代別の代表経験はあるものの、A代表の候補となったのは初めてだ。

しかし世界のバスケットボール界を見渡すと、20歳は必ずしも若いとは言えない。現在はNBAでプレーするリッキー・ルビオ(インディアナ・ペイサーズ)やルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)などはスペインリーグ時代16歳でシニアプロデビューしている。またNBAでも大学に1年だけ通ってプロ転向をする選手たちは後を断たない。

■プロ宣言で始まった“真の挑戦”

(左から)白井英介ビー・コルセアーズ代表取締役、河村、竹田謙ビー・コルセアーズGM(C)永塚和志

焦りはないとする一方で、パリ五輪出場等を見据えた時にできるだけ若い段階でトップレベルの環境に身を置き、経験を積みたいと、決断を下すにあたって河村は考えたはずだ。また、東京五輪で指揮官として日本女子代表を史上初の銀メダルという快挙に導き、昨秋、今度は日本男子代表のヘッドコーチ(HC)となったトム・ホーバス氏の標榜するバスケットボールスタイルが自身に合うと見込んだ部分もあったかもしれない。

男子代表は東京五輪までアルゼンチン人のフリオ・ラマス氏がHCを務め、同五輪では身体の大きい世界の対戦ということでPGの先発ポジションには純然たる司令塔ではなく本来シューティングガードの田中大貴(アルバルク東京)を採用した。しかしホーバス氏の場合、PGには身長の高さをそこまで求めず、女子代表でもそうだったようにスピードと、選手とボールの連動性を重視する方針で、身長172センチと小柄な河村もそこでより高い選出のチャンスがあると見ているに違いない。

「ホーバスHCのバスケスタイルは、まだまだ(自分も)やっていないことはありますが、自分もフィットしていると思います。一番は自分の年齢を考えて、パリ五輪が狙えるだけの時間もまだあり、決断をしたい気持ちになりました」と代表としての心構えを語った。

河村はこれまで、同じポジションということもあって、しばし田臥勇太(宇都宮ブレックス)を尊敬し、目指すべき存在であるとその名を口にしてきた。

現役ではいるものの、40歳となった田臥の力は落ちていて、今では出場時間も相当に少なくなっている。八村らの名前も良く報じられるが、それでも「バスケットボール=田臥」という印象が未だに根強いのは、日本のバスケットボールの人気や盛り上がりが「まだまだ」であり、その後に田臥に取って代わる存在がでてきていないことを示しているとも言える。

河村という新進気鋭のスター選手がプロ宣言を果たし、ここからどこまでそうした印象を変えていくか……。

河村勇輝の、バスケットボール選手としての真の挑戦が始まる

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著者プロフィール

永塚和志●スポーツライター元英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者で、現在はフリーランスのスポーツライターとして活動。国際大会ではFIFAワールドカップ、FIBAワールドカップ、ワールドベースボールクラシック、NFLスーパーボウル、国内では日本シリーズなどの取材実績がある。

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