【世紀の一戦】村田諒太vsゴロフキンは、日本ボクシング史に残る戦い 元五輪王者は引退か… | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【世紀の一戦】村田諒太vsゴロフキンは、日本ボクシング史に残る戦い 元五輪王者は引退か…

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【世紀の一戦】村田諒太vsゴロフキンは、日本ボクシング史に残る戦い 元五輪王者は引退か…
【世紀の一戦】村田諒太vsゴロフキンは、日本ボクシング史に残る戦い 元五輪王者は引退か… 全 1 枚 拡大写真

現役ボクサー屈指のスーパースター、ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)の来日で注目が集まった“世紀の一戦”は4月9日、さいたまスーパーアリーナに1万5000人のファンが集めた。

最後は最強チャンピオンの強打に崩れ落ちたが、村田諒太(帝拳)の戦いは全国のボクシング・ファンに感動を与えてくれた。ファイトマネーの合計が20億円という、日本ボクシング史に残る熱戦を振り返ろう。

◆【Twitterの投稿】ゴロフキン、試合後の映像を公開 「村田諒太に敬意を表する!あなたはチャンピオンです。ありがとう!」

■思いどおりの展開に持ち込み、序盤は村田優勢

戦前、専門家たちが考える村田善戦の条件は、ほぼ一致していた。「ゴロフキンのジャブに下がらず、前に出てボディを打つこと。逆にずるずると下がるとチャンスはない」。試合は、まさにその予想どおりの展開となった。

先にリングに上がった村田の顔面は、まったくの無表情。緊張のためというより、無我の境地に達した修行僧のように見えた。一方のゴロフキンは実力が示すとおりの風格と余裕が感じられた。

第1ラウンド開始早々、ゴロフキンのジャブが挨拶代わりに村田のガードの間に突き刺さる。強いジャブに対して、村田は早いワンツーで応戦。「1ラウンドがすべて」と語っていたように、下がらずに踏ん張ることができた。互角。

第2ラウンド、村田は作戦どおり、ボディブローを繰り出す。得意の左ボディに加えて、ベルトラインに打ち込む右ストレートが有効。逆にプレッシャーをかけて前に出る場面も作り出した。村田優勢。

第3ラウンドは、村田のベストラウンド。ボディが効いたゴロフキンは体を丸めて、明らかに嫌がる仕草を見せる。村田は前に出ると、顔面へもワンツー、アッパーを当て、思い通りの展開に持ち込んだ。アップセットの予感に会場から大きな拍手が起こった。コーナーに戻ったゴロフキンの顔から余裕が消えた。

第4、5ラウンドは、ゴロフキンがペースを取り返そうと序盤から強いパンチを振るう。特に、ガードの裏側に打ち込む左右のフックが耳の下をヒット。この得意のパンチが徐々にダメージを与えていく。村田はボディ攻撃で反撃。ほぼ互角。海外メディアは、むしろここまで戦いについて、「村田はゴロフキンに完全に追いついたように見えた」とまで賞賛を送っている。

■左右のフック、ストレートでゴロフキンが形勢を逆転

しかし第6ラウンドで形勢は逆転する。

序盤、ゴロフキンが右ストレートで村田のマウスピースを吹っ飛ばすと、強いコンビネーションが的確に当たるようになる。村田の顔は腫れが大きくなり、形相は鬼気迫る。

第7、8ラウンド、村田は堅いガードとダッキングで致命的な一打からなんとかまぬがれる。しかし前半、有効だったボデイ・ショットが少なくなり、後退するシーンが多くなった。8ラウンド終了後には、明らかなダメージが見てとれた。

■母国開催の「村田コール」に後押しされ、最後の反撃

第9ラウンド、ゴロフキンがコンビネーション・ブローを集め、プレッシャーを強める。ロープ際で耐える村田の背中を「村田コール」が後押しする。声援を受けた村田が力を振り絞って反撃に転ずると、会場が大きくどよめいた。

しかし、超一流のKOアーティスト、ゴロフキンの勝負勘は鋭い。右フックをクリーンヒットすると一気にたたみかける。この攻撃に、ついに村田はリングに崩落。同時にコーナーからタオルが投げ込まれ、レフリーが試合終了を宣言した。9ラウンド2分11秒だった。

敗れたとはいえ、村田の戦いは見事だった。プランどおりに前に出て、ボディ攻撃でダメージを与えた。プロ、アマ合計393戦を通じて一度のダウンもないゴロフキンを追い込んだのは立派の一言だ。

試合後、ゴロフキンは「彼は五輪チャンピオンだけじゃない。スーパー王者だ」と敗者を称賛、最も尊敬する人に送る「チャバン」と呼ばれるカザフスタンのガウンを村田の肩にかけた。9月にはカネロ・アルバレス(メキシコ)とのラバーマッチが噂されている。

一方の村田は、「(ゴロフキンの)総合力でやられた。技術的なところで彼のほうが上だった」と、爽やかに振り返った。試合を終えて、ゴロフキンの戦績は42勝(37KO)1敗1分、村田は16勝(13KO)3敗となった。帝拳の本田彰彦会長は、村田の現役引退を示唆している。

それにしても下馬評通り、見応えのある戦いが繰り広げられ、日本ボクシング史上に残る試合であった点に異論はないだろう。日本のさいたまで行われた戦いに、アメリカやスペインなど海外メディアが寸評、賞賛を惜しまなかったのだから、「世紀の一戦」は誇張ではない。また、もし村田が、これを最後にグローブを置くのだとしても、彼の功績は後世にまで残るに違いない。

◆長谷川穂積氏 ピンチを乗り越えた差があったゴロフキン 村田諒太の情熱と覚悟が力を生んだ

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著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。

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