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【スポーツビジネスを読む】公益社団法人日本プロサッカーリーグ佐伯夕利子・元理事 後編 「日本には日本のやり方がある」とする逃げ癖を直せ! 

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【スポーツビジネスを読む】公益社団法人日本プロサッカーリーグ佐伯夕利子・元理事 後編 「日本には日本のやり方がある」とする逃げ癖を直せ! 
【スポーツビジネスを読む】公益社団法人日本プロサッカーリーグ佐伯夕利子・元理事 後編 「日本には日本のやり方がある」とする逃げ癖を直せ!  全 1 枚 拡大写真

新型コロナ・ウイルスの世界的蔓延は、日本スポーツ界のさまざまな問題点をあぶり出して来た。特に新型コロナ禍に開催された東京五輪においては、まさに日本の膿が噴出したとしていいだろう。こうした問題点の多くは、佐伯さんが前述した通り、日大アメフト部問題を始めとするいびつな教育現場を是とし、またそれを許容する日本社会の変革が急務と指摘されている。また、一方で「たかがスポーツ」と蔑まされるほど低い、日本におけるスポーツの社会的地位も課題だ。

日本におけるスポーツの社会的地位向上は、今後の課題であり、日本バスケットボール協会三屋裕子会長もスポーツが日常を取り戻した際、今後コロナがいくら流行ったとしても「日本で二度とスポーツを不要不急とは言わせない」と年初に挨拶している。

その点においても、佐伯さんには忸怩たる思いがあるようだ。「30年間海外でスポーツを観て来て、やはり日本はスポーツのステータスが低い。まず、アスリートの価値がまったく異なります。残念ながら、日本のアスリートにはタレント性はあっても、ステータスがない」と断言する。

「スペインでは、アスリートはそもそも特別な存在とされています。彼らには、庶民とは違う価値があり、特殊な人種とさえも思われています。コロナ禍においてスペインは4カ月外出禁止令が出、パトロールがあり、罰金まで設けられていました。その中でもアスリートは医療関係者、警察、消防とならんで特別許可対象でした。外に出て、トレーニングを継続しなければならない存在だからです。子どもも高齢者も散歩に出てはならないのに、特例となるアスリートは、軍隊や医療従事者と同じレベルの社会的ステータスがあります」と日本とはまったく異なり、その社会的ステータスが確立されているという点について語った。

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■欧州ではビジネスよりもスポーツの公共性が優先される

日本では先日、ワールドカップのアジア最終予選の地上波テレビ・オンエアがなく、有料のDAZNのみだった点、話題となったのは記憶に新しいが「スペインでは、国民の多くが、興味を持つとみなされた公益性のあるスポーツは、クローズドでペイパービューができないと法律で定められています。例えば、夏季冬季五輪F1サッカーA代表を始めとするスペインのナショナルチームが出場する世界大会、これは細かく定められていいます。これらは必ず地上波でオンエアされます。ヨーロッパの他の国でも、似たように法整備がされています」と、ここでもビジネスよりもスポーツの公共性が優先される事例を示してくれた。

選手とのコミュニケーションに時間を割く佐伯夕利子さん 写真:本人提供

ヨーロッパにおいてスポーツがこうしたステータスを確保するには、それなりの背景があるだろう。ひとつには、アスリートもスポーツ団体も、「社会的要請に応える責任がある」という意識が高いのではないか。これについても佐伯さんは、こんな例を示してくれた。「アスリートのインタビューひとつでも異なります。内容は今日の試合についてだったとしても、ある大事件が国内で発生した後なら、記者の質問を遮ってでもまずは『はじめに昨日の事件について、ご遺族の方におくやみ申し上げる』などの社会的ステートメントを出す。それだけ社会的な責任への意識が高い。この積み重ねが、欧米でのアスリートのステータスを作って来たのではないでしょうか」。

日本では 大坂なおみが静かに人種差別についての意見を表明しただけで「テニスだけしていればいい」という論調が表面化したり、以前であれば某球団オーナーが「たかが選手が」と発言するなど、むしろアスリートを蔑む発言のほうが多く散見されるように思える。これは社会的成熟度の問題でもあり、日本社会は島国ゆえに、その成熟に遅れが生じているのかもしれない。この点でも佐伯さんは「日本のスポーツのステータス向上には、まさに様々なアプローチが必要とされると思います」と結論付けた。

■日本スポーツ界におけるジェンダー格差

アスリートの社会的ステータスそのものもさることながら、さらに日本ではスポーツ界におけるジェンダー差も問題になっている点は、どう捉えているか、迫られる時間の中で訊ねた。

「ジェンダーイシューは日本に限られた話ではないですよね。アメリカのサッカー代表男女賃金差問題などもそのひとつ」。米女子代表は男女代表におけるワールドカップを始めとする賃金差を良しとせず、米サッカー協会を提訴。去る2月、代表選手の賃金を男女ともに同一とする和解が成立した。

佐伯さんは続けた。「ジェンダーイシューはヨーロッパにはないのか……と問われると当然あります。しかし日本とは、問題の深さというか濃度、重大さが異なります。3段階で評価すると、真っ赤な赤信号がついているのが、日本。そして、ジェンダーについてもハラスメントについても案件が多すぎる。欧米でも、黄色が点灯しているのはいっぱいある。でも、そのレベルはあまりにも違う。その要因は、日本が島国であるという点に起因すると痛感します。サッカー界も同様で、すべて日本国内で完結してしまう。これが問題!  世界という土俵に上がっていかなきゃいけない!  島国だからこそ、本当に高い意識を持っていかないと、一生島国で完結するものではありません」と世界を見据えた話題となると、俄然ボルテージがあがる。

「これは日本のゴルフ界の方からのお話ですが、プロ・ゴルファーとして生計を立てるために、わざわざ世界のトーナメントにチャレンジする必要がないそうです。国内のトーナメントに出場するだけで賞金は稼げる。世界にチャレンジしてしまったら、勝てない。勝てないと賞金が獲れず暮らせない。するとチャレンジする意味はない。国内でそこそこやって賞金がもらえれば、よっぽどいい生活ができる。これが日本で完結している顕著な例です」と解説してくれた。

アトレティコ・マドリード女子監督、育成副部長などを歴任 写真:本人提供

この発想は戦後、世界GDPで2位となるまで経済復興を遂げた日本の姿そのものだ。1億2800万人以上の人口ゆえ、内需により日本経済は十分に潤って来た。国内で通用する製品さえ作り出せば、十分に経済成長が可能だった。高度成長期、世界に飛び出して行ったのは、自動車メーカーや家電メーカーなどの分野に限られていた。そして、そのいくつかは現在もグローバル企業として機能している。1989年、世界における企業の時価総額ランキングでは、TOP50のうち1位からNTT、日本興業銀行、住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行と続き日本企業が実に32社を占めていた。これが2019年となると上位は、1位からアップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベットとなり43位にかろうじてトヨタが日系として1社だけ顔を見せる状況に激変する。「国内にとどまっていれば問題ない」意識が、この30年で世界においていかれる経済状況を生み出した。佐伯さんは「そうであってはいけない」と断言する。

「サッカー界を眺めると私たちは舞台も、マーケットも世界! 絶対に世界に出ていかないといけません。競技力もジェンダー問題もハラスメント問題も、すべてをグローバル・スタンダードに合わせる必要があります。『グローバル・スタンダートとは何か』を考えるところからスタートだとしても。これはバスケットボールやテニスも同じかと。そんな中で、サッカーは日本のスポーツ界を牽引できると思います。サッカーの競技人口は世界で約2億6,000万人(三菱UFJ信託銀行調べ)。ボールひとつでどこでもプレーできる。サッカー界が持っている可能性は広い。グローバルという意識をどうしたら日本で理解してもらえるかと言うと、まずは自分たちがグローバルの舞台に乗らないとわからない。サッカーならそれができると思います」。

そのためには、どうすればいいのか……。

スポーツ界も『日本には日本のやり方が』と言い出し、すぐに逃げる癖があります。『ジャパンウェイ』とか『日本流』とか、スポーツの戦術そのものとして考える分には問題ありませんが、ビジネスのありようを含め都合のいいように使うのは、そろそろ止めましょう。これからは『日本流って何? 日本に閉じて逃げようということか?』としつこく問わなければなりません。グローバリゼーションは今や世界を包み込み、世界を舞台に競争力を高めるためには、多様性も絶対に不可欠。外からの風を受け入れないと、自滅して行く、スポーツ界もしかり」とはっきりと佐伯さんは言い切る。

「日本のスポーツ界は危ない」と警鐘を鳴らし、Jリーグを後にした佐伯さんが残した「波紋」に日本のサッカー界は、いやスポーツ界は、どう相対して行くのか。今後より真摯に向き合わなければならない課題が残されている。

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著者プロフィール

松永裕司●Neo Sports General Manager

NTTドコモ ビジネス戦略担当部長/ 電通スポーツ 企画開発部長/ 東京マラソン事務局広報ディレクター/ マイクロソフトと毎日新聞の協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」プロデューサー/ CNN Chief Director of Sportsなどを歴任。出版社、ラジオ、テレビ、新聞、デジタルメディア、広告代理店、通信会社での勤務経験を持つ。1990年代をニューヨークとアトランタで過ごし2001年に帰国。Forbes Official Columnist。

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