【全仏オープン】クレーでの1回戦敗退に見た大坂なおみの進化とリベンジの予兆 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【全仏オープン】クレーでの1回戦敗退に見た大坂なおみの進化とリベンジの予兆

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【全仏オープン】クレーでの1回戦敗退に見た大坂なおみの進化とリベンジの予兆
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失うものは何もない」。

大坂なおみが全仏オープン2日目、そう立ち向かった1回戦の相手は、4か月前の全豪3回戦でマッチポイントから逆転負けを喫したアマンダ・アニシモバ(アメリカ)だった。

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■「クレーで自信を持つだけ」

雨上がりのスザンヌ・ランラン・コートの湿度は87%。時折降る雨がボールを重くさせ、弾まないコンディションが二人のフラットショットの重低音を一層、響き渡らせるようだった。

1ゲーム目から互いに容赦なく相手を振り回し、主導権を奪い合う。この真っ向勝負のなかで私が先ず驚いたのは、大坂があまり得意としないクレーで今までで一番スムーズに動けていたことだ。守備ラインに立たされても上手くスライドを使い、バランスを取ってはクリーンヒットで返球、すぐさまポジション取りに成功していた。時にはスライスで応戦し、そのボールの深さがアニシモバの攻撃力を緩和させ、今までよりも巧みなボール回しを実現。

大坂のコーチであるフィッテさんが「(必要なのは)なおみがクレーで自信を持つだけだ」と言うように、今回の彼女は一味違う。その手応えは、どの状況下でも揺れ動かない本人の引き締まった表情からも伺えた。

しかし、アニシモバも今季は上り調子。弱冠20歳の選手は今大会、24シードとして大坂を迎え撃った。最近の成績で言えば彼女の方が有利だったのは間違いない。大坂が今季のクレーで2戦しかプレーしていないのに比べ、アニシモバは10勝3敗とこのサーフェスに馴染んでいた。そして17歳の時、全仏で準決勝に進出したキャリアも大きな自信として現在20歳のプレーを支えていることだろう。

序盤からアニシモバは大坂を積極的に動かし、代名詞でもあるバックハンド・ストレートを決め続けるインパクトを残した。その精度の高さは大坂が分かっていても取れないほど。大坂はこの策から抜け出す為にフォアのディープクロスへと早めにボールを刺し込み応戦した。

互いにブレークを許しながら進んだ5-5の40-15、大坂は3ポイント連続で巻き返しアドバンテージを握ったが取りきれず、3回のデュースを繰り返した末に最後はダブルフォルトでブレークを許す。アニシモバは、このチャンスを掴むべくアクセル全開。

1ポイント目をエースでスタートさせると、そのまま躊躇なくオープンコートへ得意のフラットショットを打ち込む潔さで4ポイント連取。わずか1分18秒で第12ゲーム目を締めくくり、1セットを奪ってリードを広げた。

■クレーコートでの新たな進化を見た

2セット目に入っても共に緊張感が落ちることなく好ゲームが続く。ネットプレーを織り交ぜた多彩なショットが目を引くなか、大坂はどうしてもサービスキープが安定せずゲームをスムーズに進められない。それも全豪の対戦後に話していたように、今回もアニシモバのリターンの鋭さが大阪の勢いを止めていたのだ。返球率の高さもだが、バックハンドの懐に入った時のストレートへの威力は抜群だ。仕掛けられるプレッシャーから、力んだのは確かなはず。上手くコースへの打ち分けや球種を変化させても、少しずつフィットされ打ち抜かれてしまうのには、前回と同じく大坂の最大の武器であるサービスを攻略されてしまったようにも感じた。

だが大坂もリターンを鍛えてきたことは、今季に入ってから証明されている。ポジションを変化させながらタイミングを操作したり、時にはフォアで大きく振りかぶって圧迫感を出したりと、実に幅が広がってきている。今回もブレークゲームが互いに多かったのは、リターン力が上がってきている影響だろう。

一時は大坂から3-2とリードしたが、少しのミスから3-5のビハインド。強気のストロークで食い下がり、マッチポイントを2度セーブしたものの、最後はアニシモバが鮮やかなバックハンド・ウィナーを決め2回戦へと駒を進めた。

5つ目のメジャータイトルを狙い、乗り込んだパリの赤土

その夢は1回戦で破れてしまったが、クレーコートでの新たな進化を見た試合となった。リベンジを果たせず、結果を残せなかったことは心残りだろうが、また来年のクレーシーズンでの戦いぶりが楽しみになる一戦であった。

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著者プロフィール

久見香奈恵●元プロ・テニス・プレーヤー、日本テニス協会 広報委員

1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動に尽力。22年よりアメリカ在住、国外から世界のテニス動向を届ける。

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