【ワールドゲームズ】兄の死から日本代表へ 齋藤三佳が語る、初選出ドローンレースの魅力「誰もが輝けるスポーツ」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【ワールドゲームズ】兄の死から日本代表へ 齋藤三佳が語る、初選出ドローンレースの魅力「誰もが輝けるスポーツ」

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【ワールドゲームズ】兄の死から日本代表へ 齋藤三佳が語る、初選出ドローンレースの魅力「誰もが輝けるスポーツ」
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もうひとつの五輪」とも呼ばれるワールドゲームズが7日、アメリカ・アラバマ州バーミングハムで開幕する。ワールドゲームズは、アメリカンフットボール、ラクロス、スカッシュ、ダンススポーツ、スポーツクライミング、ソフトボールなどの「非五輪競技・種目」を中心とした国際総合大会。1981年7月にアメリカ・サンタクララで第1回大会が行われ、第6回は2001年に秋田で開催された。

今大会、新種目として採用されたのが「ドローンレースエアレース)」だ。

撮影用、作業用としてすっかり市民権を得たドローンではあるものの、自由に飛び回る「レース」となると、規制大国・日本ではまだまだ市場整備の課題が山積みとなったまま。アメリカ、ヨーロッパ、中国などでは「未来のスポーツ」として脚光を浴び、すでにレース・カテゴリーとして確立されつつある。

アメリカでは「ドローン・レーシング・リーグ」(DRL)が設立され、米3大ネットワークのひとつNBCがオンエアを司り、BMW、SWATCH、Twitterなどがスポンサーとして名を連ね、驚くべきことに米空軍、はたまた戦闘機メーカーのロッキード・マーチンまでもがパートナーとなっている。ヨーロッパでは、「レッドブル」がメインスポンサーとなり、ドローン・チャンピオンズ・リーグ(DCL)を開催。日本初のプロ・ドローン・パイロット・チーム「RAIDEN」も参戦して来た。

そのドローンレースの日本代表として初参戦する齋藤三佳に渡米直前、その意気込みを聞いた。

齋藤三佳 (さいとう・みか)

ドローンレース・ワールドゲームズ日本代表

1995年6月22日、福岡県福岡市出身。2019年2月からドローンレースを始める。同年6月開催の「全国ドローンレース選手権 神奈川大会」および「Japan Drone League Round3 Open」で3位入賞。11月には韓国で行われた大会に招待選手として参戦する。AbemaTVとテレビ東京で放送された『Super Drone Championship』には20年、21年と2年連続出場。21年7月に行われた『Japan Drone League 2021 Round4 Expert』では女性として初のExpertクラス優勝を果たす。現在はレース活動とともにFPVドローンを使った撮影業務などを中心に行う。GLAiT所属。

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■「ダイバーシティの体現を目指している」競技

今回の日程としては6日に渡米、7日が開会式。その後、8日にプラクティス・セッションがあり、9、10日が本戦となる。日本代表としては今回、上関風雅と齋藤の男女1名ずつが参戦する。

齋藤は「もう(代表として)選ばれた時から緊張しています。もともと、かなり緊張するほうで、周りからは『とにかく楽しんで来て』と声をかけられるので、そうしようと思っています。(日本のドローンレース界では)特に若い選手が育って来ていますから、そうした子たちのために、この機会にいろんな経験をし、それを待ち帰って来るのが自分が参戦する意義。初めての経験を自分だけのものではなく、業界の発展に役立てれば…と思っています」と滅私奉公の意欲を明らかにした。

ワールドゲームズ・初の日本代表に選出された(撮影:SPREAD編集部)

今大会初採用種目には男子20人、女子12人が参戦。まずは複数機で予選を戦い、コース3周のアベレージタイムを参考にトーナメントが組まれる。トーナメントでは8組に分けられ4機が同時にレース。それぞれ上位2機ずつが次ステージへと進み、敗者復活戦も組まれている。

今大会の特徴は男女混走という点。これについて齋藤は「こうした規模の大きい大会では、これまで男女別だったので、ちょっとびっくりしています。混走になったと聞き、新しいスポーツとして『ダイバーシティの体現を目指しているのかな』と思いました。実はDCLにもトランス(ジェンダー)の選手がいて『男女、どっちに出場すればいい?』と問題になった過去もあるので、こうしたルールになったのだと思います。こうした観点からも、どんな人でも、老若男女を問わず、一緒に楽しめるスポーツだと強く感じました」とドローンレースが、ダイバーシティに沿うスポーツだと実感していると言う。

渡米直前、インタビューに応える齋藤三佳(撮影:SPREAD編集部)

齋藤がドローンレース界に飛び込んだきっかけは心の拠り所を求めてだった。21歳の時、突然兄が他界。すべてが灰色に見え、何もかもが楽しめなくなった。まさに松本隆・作詞、大滝詠一が歌う『君は天然色』の世界、思い出はモノクロームだ。あのモチーフは妹の死だったゆえ、その逆バージョン。

このままではダメになる」、そこで何か身近で楽しめるものはないか、何か忘れることができる趣味、夢中になれるものをということで、そもそもは山田開人選手のサポート役として、ほぼ眺めているだけだった身近にあったドローンレースにチャレンジした。

■「補助輪のない自転車に乗るぐらい」気軽なスポーツ

「私自身にレース気質はあまりなく、レースそのものよりも将来的に仕事や社会貢献に活かせるかも…と。その一環として大会にも出てみようかな、ぐらい。『できるかな』というよりも、とにかく『やってみた』感じです。始めてみたら意外と楽しくて……。正直、運動はまったくダメで、その私がスピードもののスポーツをやっています。使い方さえ間違わなければ、かなりケガの心配もない競技でもあります」とドローンレースの手軽さも語ってくれた。

齋藤はレース用ドローン実機を触る前に、まずはシミュレーターばかり3カ月ほど、かなりやりこんだそうだ。「シミュレーターでここまでできるなら、実機もいけるよ」と言われ、トライするとストレスなく、レース機を飛ばすことができたのだとか。

Japan Drone League 2021 Round4 Expertで女性初の優勝を飾る 写真:本人提供

若い頃、バイクレースに参戦した経験のある私としても、話を聞けば聞くほど「レースなのだ」と認識すること多々。ドローンレースは、ドローン本体に搭載されたカメラを通し、ゴーグルで目視しつつ操縦する。この送信されて来る映像そのものは、かなり解像度が低い。しかし飛行速度は100km/hなど当然、実際にはスピードが早すぎ、ゲートやフラッグを目視してから反応していては、当然ながら手遅れとなる。目視はあくまで「確認する」意味合いだそうで、頭の中でコースを作り上げ、ライン通りに飛行できるかが勝負。ゆえに経験も左右するという。

まるで映画『スターウォーズ』に登場するポッドレースのようだ…‥。

そう水を向けると、齋藤は「小さい頃、よくスターウォーズ・ゲームをやったんですけど、まさにあの世界。その影響もあって、のめり込むことができたのかな……とも思います」とのこと。

やはりレースはレースだ。マシンを扱うスポーツに変わりはない。

私もこれまで実際にスタートで出遅れるシーンなども目にしたので、その要因なども訊ねると「まずは純粋に機材の問題があります。それ以外でも、(4機装備しているプロペラを回転させる)モーターが全部回転が効いていないにもかかわらず、スロットルを全開にしてしまい、空回りしてしまうこともあります」と、モータースポーツにおけるスタート、タイヤの空転と同じように動力の伝導ロジックが同じである点、説明してくれた。

スタートダッシュが重要である点もやはり同様。「目の前を他のドローンが飛んでいるとけっこうストレスです。速い選手はどうしてもライン取りも重複します。ですから、スタートだけを集中して練習するのも大事。鈴木匠選手のように追いかけるほうが得意というパイロットもいますし、3位で飛んでいても1位と2位がクラッシュして……というレース結果も多いですから、そこはあらかじめレース戦略も左右して来ます」と、モータースポーツと変わる点はないほどの親和性だ。

現在、レース機には、重量の規定がない。しかし、軽量化すれば強度が下がり、屋外レースでは風の影響を受けやすく、耐久性も低くなる。逆に頑丈で重量がかさめば、スピードを犠牲にすることになる。やはり、レースなのだ。

これからドローンを触りたい、レースをしてみたいという人は、どうするべきなのか。「金額的にも廉価な『65サイズ』から始めるといいと思います。いわゆるタイニードローンです。これでまず室内で練習してみるといいですよね。そこから徐々にステップアップしていけば……。ドローンレースで「一番悲しいのはマシンを壊してしまった時」だそうで、最初は壊さないように室内を飛び回れるようになるところから、スタートとか。

「私も『補助輪がない自転車に乗るつもりで』とアドバイスされました。どんな年齢でも、誰でも輝けるチャンスがあるスポーツなので、ぜひチャレンジしてもらいたいと思います。子どもからチャレンジできますし、逆に40代の方が子どもに勝つこともありますし、たまさぶろさんもぜひ!」と、いやいや、なかなかお恐れ多い。

実は齋藤も自身が代表に選ばれるまで「ワールドゲームズ」について詳しくは知らなかったそうだ。2019年から国際航空連盟(FAI)に認可されているレースに出場し、そのポイントに応じ、参加する上位20カ国が選別され、さらにその20カ国の中からFAIに与えられたポイントに応じ男女1名ずつが選出された。齋藤自身公式レース・デビューは2019年、「勝てるとも思わず、毎回必死にやっていたら、選ばれました」と初選出の舞台を踏む。

ドローン業界も過去2年、新型コロナウイルスにより、F1のように転戦する国際大会は開催されず、つい最近までシミュレーターによる国際大会に終始していたという。齋藤にとって海外大会参加は、19年の韓国のみで、まさにハレの舞台となる。こうした新しいスポーツにスポットを当てる「ワールドゲームズ」、7日の開幕が楽しみだ。

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著者プロフィール

たまさぶろ●エッセイスト、BAR評論家、スポーツ・プロデューサー

『週刊宝石』『FMステーション』などにて編集者を務めた後、渡米。ニューヨーク大学などで創作、ジャーナリズムを学び、この頃からフリーランスとして活動。Berlitz Translation Services Inc.、CNN Inc.本社勤務などを経て帰国。

MSNスポーツと『Number』の協業サイト運営、MLB日本語公式サイトをマネジメントするなど、スポーツ・プロデューサーとしても活躍。

推定市場価格1000万円超のコレクションを有する雑誌創刊号マニアでもある。

リトルリーグ時代に神宮球場を行進して以来、チームの勝率が若松勉の打率よりも低い頃からの東京ヤクルトスワローズ・ファン。MLBはその流れで、クイーンズ区住民だったこともあり、ニューヨーク・メッツ推し。

《SPREAD》

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