【MLB】大谷翔平がMVPを獲れない理由 アメリカにおける「61」の魔力 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【MLB】大谷翔平がMVPを獲れない理由 アメリカにおける「61」の魔力

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【MLB】大谷翔平がMVPを獲れない理由 アメリカにおける「61」の魔力
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MLBアメリカン・リーグの最優秀選手(MVP)が17日(日本時間18日)に発表される。

日本国内のスポーツ新聞各紙はあたかもロサンゼルス・エンゼルス大谷翔平の2年連続MVP獲得の可能性があるかのように書き立てるが、今回はア・リーグ記録を61年ぶりに塗り替えるシーズン62本塁打を放ったニューヨーク・ヤンキースアーロン・ジャッジで決まりだろう。ジャッジは本塁打王に加え、131打点でリーグ2冠を獲得。打率も3割1分1厘でリーグ2位と、1位のミネソタ・ツインズのルイス・アラエスの打率3割1分6厘に肉薄し、三冠王の一歩手前まで迫った。

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■「MVPとなると決め手に欠ける」

ポストシーズンで苦杯をなめたとはいえ、今シーズンのヤンキースのアメリカン・リーグ東地区の独走はジャッジの活躍があったからこそだといえる。

対する大谷は昨年に引き続き、二刀流でフル稼働し、規定打席と規定投球回数をダブルでクリアする偉業を達成した。打撃成績はリーグ4位の34本塁打、同7位の95打点。投手としても同4位の15勝、同4位の防御率2.33、同3位の219奪三振をマークするなど、投打ともに文句のつけようのない、これもまた球史に刻まれる成績を残した。

しかし、全米野球記者協会に所属する30人の記者の投票によって決まるMVPとなると、いまひとつインパクトが弱い。「(大谷は)発表されるトップ3の選手には間違いなく入るだろうが、MVPとなると決め手に欠ける(在米スポーツ紙記者)」。

 ジャッジが今季61年ぶりに塗り替えたのは同じくヤンキースにいたロジャー・マリスが1961年に記録した年間最多本塁打記録の61本だった。そのマリスが同年、更新したのがこれまた同じくヤンキースだった球聖ベーブ・ルースが1927年に記録した60本だった。

不幸なことに当時のマリスの記録更新は球聖ベーブの神聖な記録への不遜な挑戦と捉えられ、ホームラン数が60本に近づくにつれ、さまざまな嫌がらせを受けたという。同じヤンキースでプレーしたベーブ・ルース、ロジャー・マリス、そして、アーロン・ジャッジへと引き継がれたア・リーグのシーズン最多本塁打の更新とその系譜はMVPを投票する全米野球記者協会所属の30人の記者のみならず、米国の市井の野球ファンにとっても“特別な重み”を持つ。その“特別な重み”がジャッジのMVP当確への決め手となるようだ。

日本では今季、東京ヤクルト・スワローズの村上宗隆が、世界の王貞治が1964年に放ったシーズン55本を上回る56本を記録、MVPを獲得している。もし大谷が日本にとどまり歴史に残る二刀流の成績を残したとしても、村上が選出されたと見ることができるだろう。日本の「55」とアメリカの「61」は、それほどまでに特別な数字、マジックナンバーなのだ。

■1941年、「最後の4割バッター」もMVPで次点

 “特別な重み”がなくとも、たとえ今回、MVPに選ばれずとも今季の大谷が投打に残した記録はメジャー・リーグ史に特筆される記録だ。ジャッジのア・リーグ年間本塁打記録更新が今年でなかったらMVP選びももっと違った展開になっていただろう。

 今年以上に甲乙付け難い事態が1941年に起きた。ボストン・レッドソックスのテッド・ウィリアムズが4割6厘とメジャーリーグ最後の4割打者となったのは1941年だった。ホームラン37本で、首位打者とともに本塁打王も獲得した。打点も120点を叩き出し、125打点で打点王となったヤンキースのジョー・ディマジオに5点差まで迫った。

◆【実際の得票】1941年、MVP選手選出の得票(英語)

記者投票で年間MVPに選ばれたのは二冠王のウィリアムズではなく、打点王のみのディマジオの方だった。この年、ディマジオは今も破られない不滅のメジャー・リーグ記録の56試合連続安打を記録していた。

 こちらの方が記者たちの印象も強烈だったようで、1位のディマジオの291ポイントに対し、ウィリアムズは254ポイントと37ポイントの差をつけられた。ちなみに3位は25勝、260奪三振のクリーブランド・インディアンスのボブ・フェラー投手の174ポイントだった。

 巡り合わせと多少の運があれば、3人のうち誰もがMVPになってもおかしくない成績を残した。この年、最終的にMVPに選ばれたのは“不滅の記録”56試合連続安打のディマジオで、4割を打ったウィリアムズではなかった。

 大谷は今季、投打に特筆されるべき成績を残した。ただ、投票する記者に与えるインパクトはジャッジに比べると見劣りしたと言わざるを得ない。大谷には来季がある。シーズン50本塁打、20勝も大谷なら、この数年のうちにきっと難なくやり遂げてくれるに違いない。

何、そうすれば、大谷に再びMVPも転がりこんでくる。それも時間の問題だろう。

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著者プロフィール

本田路晴(ほんだ・みちはる)●フリーランス・ジャーナリスト

読売新聞特派員として1997年8月から2002年7月までカンボジア・プノンペンとインドネシア・ジャカルタに駐在。その後もラオス、シンガポール、ベトナムで暮らす。東南アジア滞在歴は足掛け10年。趣味は史跡巡り。

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