【カタールW杯】識者が日本代表ドイツ戦を展望 カギ握る“バイエルンブロック”と19歳新星ムシアラ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【カタールW杯】識者が日本代表ドイツ戦を展望 カギ握る“バイエルンブロック”と19歳新星ムシアラ

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【カタールW杯】識者が日本代表ドイツ戦を展望 カギ握る“バイエルンブロック”と19歳新星ムシアラ
【カタールW杯】識者が日本代表ドイツ戦を展望 カギ握る“バイエルンブロック”と19歳新星ムシアラ 全 1 枚 拡大写真

FIFAワールドカップカタール2022が20日に開幕した。

森保一監督率いる日本代表は、23日にドイツとのグループリーグ初戦を迎え、27日にコスタリカ、12月2日にスペインとそれぞれ対戦する。森保ジャパンの集大成となる戦いが始まる中、今回はドイツ在住歴があり、長年日本サッカーを追ってきたスポーツライターの木崎伸也氏に、日本が初戦で挑むドイツ戦の展望と、森保ジャパンがこの一戦を迎える上でのポイントを聞いた。

木崎伸也(きざき・しんや)

●スポーツライター。小説家。漫画原作者

1975年、東京都出身。金子達仁氏主宰の塾を経て、スポーツライターに。2002年にオランダに移住し、03年から6年間ドイツを拠点にして欧州サッカーを取材した。各媒体に寄稿する一方で小説家、漫画原作者としても活動中。著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『直撃 本田圭佑』(文藝春秋)など。漫画『フットボールアルケミスト』(白泉社)が文化庁メディア芸術祭・漫画部門審査委員会推薦作品に選出。

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■左SBは長友か伊藤か

日本は17日にカナダと本大会前最後の親善試合を行い、1-2で敗れた。怪我で戦線離脱していた板倉滉や浅野拓磨、田中碧といった選手たちが先発し、チーム全体としてのコンディション維持が大きな比重を占めたこの試合。木崎氏は「攻撃の形ができてないとか、相手が3バックに変化した時の日本の守備の仕方はやや不安」としつつも、「結果については不安視する必要はない」と語る。

ドイツとの対戦において、ベースとなるのは9月の欧州遠征でアメリカと戦ったメンバーだ。

森保監督はW杯アジア最終予選で採用してきた[4-3-3]から、フランクフルトで好調を維持する鎌田大地をトップ下に据えた[4-2-3-1]に布陣を変更。前線からの連動したプレッシングやショートカウンターが機能し、2-0で勝利を飾った。冨安健洋や遠藤航、守田英正といった選手がカナダ戦で不在だった点は気がかりだが、チームとして手応えを得たこの布陣と戦い方が、「9月に話し合って形が見えた」とし、「怪我人が戻ってきていたらあのメンバーだと思います」とドイツ戦でも基本になってくると木崎氏は予想する。

その中で焦点となるのが左SBの人選。アメリカ戦で先発した中山雄太がアキレス腱負傷の重傷を負いメンバー外に。現状の選択肢として考えられるのが長友佑都伊藤洋輝となった。木崎氏はW杯初戦で経験が求められることや、マッチアップの可能性があるセルジュ・ニャブリヨナス・ホフマンといった縦に速いウインガーへの対応を考えて、「安定感を重視して長友選手じゃないかなと思います」と4大会連続出場のベテランをスタメンに推奨。「セットプレーのことを考えると背が高くて計算できる」という伊藤は、後半の60分~70分からの途中出場が考えられるとしている。

■バイエルンが直近の公式戦で10連勝

一方のドイツは17日にオマーンと親善試合を行い、1-0の辛勝。ドイツ国内では批判の声も挙がったというが、「サブ組のベースアップと初招集の選手のテスト、怪我明けの選手のコンディショニング」が重要なウェイトを占めたこの試合の本大会への影響は少ないと木崎氏は見ている。また、ブラジルやアルゼンチン、フランスといった優勝候補とされる国より下馬評では劣ると言われるものの、主軸を担うバイエルン・ミュンヘンの選手たちが直近の公式戦10連勝で、好調を維持してW杯に乗り込んでいる。「2014年も優勝候補ではなかったのに優勝した。ダークホースとして上位に勝ち上がる可能性はある」と木崎氏は指摘する。

木崎氏にドイツのスターティングメンバーを予想してもらった。中盤には“バイエルンブロック”を採用し、GKのマヌエル・ノイアーを含めて6人のバイエルン所属選手の先発を見込んでいる。焦点となるのが両SBの人選で、右サイドがティロ・ケーラールーカス・クロスターマン、左サイドをダヴィド・ラウムクリスティアン・ギュンターが争っている。所属クラブでのパフォーマンスと怪我によるコンディションを考慮して、右にケーラー、左にギュンターが入るとみている。

タレントをそろえたドイツの中でも最大の脅威になり得るのが、バイエルンのジャマル・ムシアラ

19歳の新星は今季のブンデスリーガでリーグ4位の9ゴールを挙げるなど急成長を見せており、独特なタッチの柔らかさや狭いスペースでもボールを失わないドリブルで、日本守備陣を混乱に陥れる可能性は十分。2010年の南アフリカ大会ではメスト・エジルが台頭し、大会終了後にブレーメンからレアル・マドリードに移籍した。木崎氏は「当時のエジルの注目度を考えると、今回のムシアラのほうがパフォーマンスはさらに上だなと思います」と太鼓判を押し、「今大会がもしかしたら『ムシアラの大会』となるかもしれない」と期待をかける。

カタールW杯に出場する日本代表(C)Getty Images

■ドイツの速い攻撃を封じられるか

日本はドイツ相手に9月のアメリカ戦と同様に前田大然、鎌田、伊東純也久保建英の4人を前線に並べ、[4-4-2]のブロックでプレスを掛けていくことが予想される。木崎氏は「最初の15分くらいは主導権を握りたいので、かなり激しくいく」としつつ、「ただ体力が持たないので、15分~20分経った時くらいから真ん中で待ち構えるスタイルに変える」とラインを下げてのミドルプレスを推奨する。アメリカ戦で安定感を見せた戦いが個々のタレント力や経験で勝るドイツにも通用するか。試合トータルを考えてのゲームプランがカギを握ってくることは間違いない。

ハンジ・フリック監督が志向するのは、ポゼッションをしつつも常にゴールへ矢印が向いた縦に速い攻撃。ボールを失っても即時奪回を狙い、試合を通してドイツがゲームを支配する展開が想定される。その中で日本は連動したプレスでパスコースを限定し、アントニオ・リュディガーニクラス・ズーレといったドイツの最終ラインから送り込まれる縦パスを拾って、いかにショートカウンターにつなげられるか。主導権を握るであろうドイツの攻撃を食い止め、日本が優位に立つ時間帯を作るためにも、ドイツが狙ってくる縦パスを逆に狙っていくという姿勢は求められる。

その中で木崎氏が日本のキーマンに挙げたのが、ボランチで先発が予想される遠藤。

シュツットガルトの主将を務め、2020-21シーズンから2季連続でブンデスリーガの「デュエル王」に輝いた遠藤の球際の強さとボール奪取力は、日本がドイツ相手に流れを引き寄せる上で必要不可欠。脳震盪の影響でカナダ戦を回避しており、コンディション面は懸念材料である。また、「ボランチの遠藤選手とそれに付随したCB2人ですかね」と、吉田麻也を中心に形成する最終ラインとの関係性もカギを握るとし、普段のリーグ戦でドイツサッカーを体感する彼らを中心に90分間を凌げるかは、日本が初戦で勝ち点を拾うためのポイントとなりそうだ。

ドイツ戦で日本のカギを握る遠藤航(C)Getty Images

■考えられるシナリオは…

木崎氏にドイツ戦で考えられる展開についても話を聞いた。

「ワーストシナリオ」として挙げたのが前半で大差がつく流れ。森保ジャパンの課題として相手に先制点を取られた際の勝率の悪さや試合中の修正力はテーマとして挙げられてきた。「前半で0-2とか0-3とかという大差がついてしまう展開もあり得る。アンラッキーな形で失点するとどどどって崩れてしまう」と最悪の展開について想定する。

そんな中で日本に求められるのが同点、もしくは先制点を許しても慌てずに粘り強く時計の針を進めていくことで、後半に勝負が来る展開が森保ジャパンにとっては理想的だ。個人の力で相手を突破できる三笘薫が“ジョーカー”として控えているが、木崎氏は「三笘選手のドリブルはドイツにすごく相性がいいと思うので、突破によって1点を取って追いつくということも可能」と言及。ブライトンで調子を上げてきたウインガーの打開力で、ドイツの守備網を突破しての勝ち点奪取という可能性もあると期待をかけている。

日本はカタールW杯でドイツ、コスタリカ、スペインの順に対戦していく。その中でいきなり激突するドイツは中心選手の好調さも相まって、厳しいグループとなった中でも最もタフな相手として立ちふさがることになる。初戦のパフォーマンスはよくも悪くもその後を左右するだけに、フリック監督が率いるチームの勢いを封じ込め、いかに自分たちの時間を作れるか。4年の歳月を重ねてきた森保ジャパンが、世界最高峰の舞台で初陣に挑む。

■日本の先発メンバー予想

GK権田修一(清水エスパルス)DF酒井宏樹(浦和レッズ)吉田麻也(シャルケ)板倉滉(ボルシアMG)長友佑都(FC東京)MF遠藤航(シュツットガルト)柴崎岳(CDレガネス)鎌田大地(フランクフルト)伊東純也(スタッド・ランス)久保建英(レアル・ソシエダ)FW前田大然(セルティック)

■ドイツの先発メンバー予想

GKマヌエル・ノイアー(バイエルン)DFティロ・ケーラー(ウエストハム)二クラス・ズーレ(ドルトムント)アントニオ・リュディガー(レアル・マドリード)クリスティアン・ギュンター(フライブルク)MFヨシュア・キミッヒ(バイエルン)レオン・ゴレツカ(バイエルン)ジャマル・ムシアラ(バイエルン)セルジュ・ニャブリ(バイエルン)レロイ・ザネ(バイエルン)FWカイ・ハフェルツ(チェルシー)

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取材・文●井本佳孝(SPREAD編集部)

《SPREAD》

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