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FIFAワールドカップカタール2022でベスト4まで勝ち進み、アルゼンチンは優勝まで残り2試合となった。1986年メキシコ大会以来36年ぶり3度目のW杯制覇に向けて戦うチームにおいて、大黒柱として牽引してきたのがリオネル・メッシ。
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■最高位は2014年大会の準優勝
35歳のメッシは5大会連続の出場となった今回のカタール大会を、“最後のW杯”と公言して挑んだ。グループリーグ初戦のサウジアラビア相手には、敗れたものの先制のPKを沈めると、メキシコとの2試合目では強烈なミドルシュートを決め、逆転でのGS突破の口火を切った。決勝トーナメントに進んでからも、オーストラリア、オランダ相手に得点し、5試合4ゴールの活躍でチームをベスト4に導いてきた。
メッシにとって2006年ドイツ大会から出場してきたW杯での最高位は、2014年ブラジル大会の準優勝。7試合4ゴールの活躍で大会MVP(ゴールデンボール)を受賞したものの、決勝でドイツに0-1と敗れ、惜しくも優勝を逃している。雪辱を誓った前回のロシア大会では、決勝トーナメント1回戦でキリアン・ムバッペ擁するフランスに3-4で敗れ、4回目の挑戦でもW杯のタイトルを掴むことができなかった。
クラブレベルではバルセロナやパリ・サンジェルマンで数々のタイトルを手にし、バロンドール(世界年間最優秀選手賞)を過去最多の7度獲得。サッカー史上に残る名選手としてメッシが語り継がれていくことは間違いない。しかし、史上最高のサッカー選手であるメッシにとって、自身の集大成とも呼べる今回のW杯で悲願のタイトルを手にし、そのキャリアにさらなる彩りを加えられるかは一つの見どころである。
■求められるのは「メッシの大会」
そんなメッシが同じアルゼンチンのレジェンドとして比較対象に挙げられてきたのがディエゴ・マラドーナ。 “神の子”と称された左利きの司令塔は、1982年大会から4大会連続出場を果たした。そして、1986年のメキシコ大会では準々決勝のイングランド戦で伝説となった“神の手”ゴールと“5人抜き”ドリブルを見せるなどチームを牽引し、7試合5得点の活躍。アルゼンチンに2度目のW杯をもたらし、「マラドーナの大会」として名を刻んだ。
マラドーナにあって、メッシに足りないのがW杯のタイトル。アルゼンチン代表としての成績はマラドーナの91試合34得点に対してメッシは170試合95得点。W杯に限ってもマラドーナの21試合8得点に対して24試合10得点と記録上ではマラドーナ超えを果たしている。しかし、メッシがアルゼンチン国民の記憶に残り、史上最高という自身のステータスを不動のものとするためには、W杯を母国にもたらし、「メッシの大会」としてその名を刻むことが求められる。
今大会、メッシにはそうした覚悟が感じられ、責任感の強さが随所に垣間見える。アルゼンチンの今大会初ゴールとなったサウジアラビア戦のPKやメキシコ戦でのチームを救うミドルシュート。また決勝トーナメント進出後も、オーストラリア戦の先制点やオランダ戦での1得点1アシストの活躍と、ここ一番での決定力でゴールと勝利をチームにもたらした。ここまでは「メッシの大会」と呼べる活躍で、チームをベスト4まで導いてきている。
■準決勝で挑む難敵クロアチア
メッシ率いるアルゼンチンの前に立ちはだかるのが、日本時間14日に準決勝で対戦するクロアチア。前回大会の準優勝国はグループFを2位で突破すると、決勝トーナメント1回戦では森保一監督率いる日本相手に、同点に追いついてのPK勝ち。続くブラジルとの準々決勝でも延長戦で同点に追いついて、2試合連続PKで勝ち抜けた。ルカ・モドリッチやイヴァン・ペリシッチら百戦錬磨のベテランを擁する相手は、容易に勝たせてはくれないだろう。
それでも今大会のアルゼンチンは、フリアン・アルバレス、ロドリゴ・デ・パウル、エンソ・フェルナンデス、レアンドロ・パレデスといった、戦える選手が中盤から前にかけて主力を担い、攻撃に専念するメッシを“働き者”たちが支える。大黒柱を周りがサポートする様は1986年大会のマラドーナのチームを彷彿とさせるものがあり、主将であり得点源かつチャンスメーカーのメッシを最大限生かす形ができあがっている。
長年にわたりサッカー界の頂点に君臨し続けてきたメッシは、5度目のW杯で躍動を見せる。自身のキャリアの集大成ともいえる大会での初タイトル獲得まで残り2試合に迫った中、“神の子”は母国の英雄マラドーナに並び、レジェンドを超える伝説を作り上げるのか。W杯で見せる最後の勇姿には引き続き注目が集まる。
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文●井本佳孝(SPREAD編集部)