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女性アスリートと切っても切れないのが生理問題。
オンラインピル診療サービスを展開する『mederi株式会社』が23日、都内で記者会見を行い、2023年1月よりスタートしたスポーツアンバサダープログラムの就任チームを発表した。
アンバサダーに就任したのは、東京ヴェルディ女子ホッケーチーム、FCふじざくら山梨、法政大学体育会水泳部、中京大学体育会水泳部、KYOTO TANGO QUEENS、至学館大学水泳部の6チーム。会見には『mederi株式会社』の坂梨亜里咲CEOと、東京ヴェルディの瀬川真帆、FCふじざくらの五十嵐雅彦GM、産婦人科医の郡詩織先生が登壇し、女性特有の健康課題の現状と今後の展望について語った。
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■「生理痛で3人くらいうずくまってるのが当たり前だった」と瀬川
坂梨CEOは、スポーツアンバサダー2023の年間活動について「ゴールは、スポーツ業界全体に女性の健康課題の正しい知識と、一つでも多くの選択肢を知っていただくこと。それが結果的に社会全体に広がっていくと良い」と抱負を語った。
現役プレイヤーの瀬川は、高校生までは生理痛に悩むことは少なかったが、実業団に入り運動量が増えウエイトトレーニングを始めると、腹痛やむくみが気になり始めたという。「初めて練習中に痛さに耐えられなくなりトイレで目がくらんだ。生理周期も乱れはじめたが自分では気づかず、相談して初めて気がついた。不調は個人では気づきにくいと感じた」と現場の悩みを打ち明けた。
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「生理痛で3人くらいうずくまってるのが当たり前だった」と瀬川(右) 左は坂梨CEO
指導者の五十嵐GMは、指導者には男性が多いので健康課題の共有と、学ぶ姿勢が大事とした。「(FCふじざくらは)監督、コーチが男性で、トレーナーが女性。指導者は『トレーニングができない』という認識でも、トレーナーがヒヤリングすると『実は生理で……』といった女性特有の不調であることがある。指導者のリテラシーが低いと『試合に出せない』と間違えた判断をするし、選手側も今までの環境で『弱音』と受け取られてしまうから言えないという問題があると思う。そういうことを言っていいんだよ、と言える環境づくりが、女子スポーツ界全体の課題」と指摘した。
生理痛について、瀬川は「“根性”みたいなところがあるので、いつも痛み止めを飲んでしのいでいた。ピルの良さを知らないと、痛み止めを飲むしかない。先輩も生理がきている中で練習しているし、やらなきゃと。ランニング(練習)で、お腹が痛くてうずくまっている人が3人くらいいるのが当たり前だったので、逆にそれが染み付きすぎて違和感がなかった」と過酷な練習環境を吐露し、女性特有の不調に対する理解を訴えた。
さらに、坂梨CEOは「よく選手の記事で見かける『生理が止まってラッキー』というのは、かなり異常なこと」と言及。これに対して、郡先生は「将来的な骨粗鬆症のリスク、さらには現役時代の疲労骨折のリスクにも繋がる」と生理が止まる状態が続くことで骨が弱くなるとし、3カ月間止まったら産婦人科を受診してほしいと呼びかけた。
■郡先生「ドーピングに引っかかる薬はないので安心して」
若い世代にとっては産婦人科を受診するハードルが特に高いという意見も出たが、オンライン診療サービス『mederi』はLINEでかんたんに受診でき、最短翌日に薬が届くことからそのメリットが生きてくる。
瀬川は課題改善のために「自分に合うピルに出会えたこと」が役立ったとし、「最初合わないピルを服用したところ、体重が急増してしまったが、先生がすぐに対応し新しいピルにシフトしてもらえた。お仕事で忙しい人にもオンライン診療はありがたいと思う」とその必要性を強調。さらに郡先生は、「ピルはアスリートの健康課題の解決に1番ベストな選択。ドーピングに引っかかる薬はないので安心して」とピルの使用を推奨した。
五十嵐GMは所属チームで『デジタル管理ツール』を導入し、生理周期と体重の増減を把握できるようにしたことで、体重増加が生理によるものなのか、不調が生理痛によるものなのか判断できるようになったという。さらに、選手ロッカー横にトレーナーベッドを配置することで、選手と女性トレーナーのコミュニケーションの頻度が増えて、体調面でのマネジメントがしやすくなったとした。
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「指導者には男性が多いので健康課題の共有と、学ぶ姿勢が大事」と五十嵐GM
■五十嵐GM「女子スポーツ界全体のフレーズが上がる取り組み」
最後に、mederiスポーツアンバサダーとしての意気込みを問われると、瀬川は「競技力アップのためには毎月来る生理とどう向き合うかもすごく大事だと感じている。スポーツ選手にも『女性にいろんな選択肢がある』ことを伝えながら競技力向上に向き合っていきたい」と現役アスリートとして自他の競技力向上に活用したいと語った。
五十嵐GMは「選手のパフォーマンス向上にどういう結果が出るのか楽しみ。選手、スタッフ全員のリテラシーを高めることで女子スポーツ界全体のフレーズが上がる。そういうリテラシーを高めることによって、社会におけるスポーツの価値が変わると思うし、女子スポーツ界だからこそできる取り組み、発信があるというのは次世代のスポーツ界にも影響を与える。そういう高い示唆と意義を持ちながら取り組み、発信できれば。経営層や中間管理職は男性が多いので、スポンサーや郊外でも(女性課題の)理解を深めるため広げるきっかけにしていきたい」と課題解決に意欲を燃やした。
郡先生は「ピルというものを正しく理解してもらえるように発信していきたい」と簡潔に述べ、坂梨CEOは「生理が来なくてよかったなど偏った意見もあると思っていたので、『スポーツ×生理』だけでなく、そのあとの将来の結婚などもサポートしていきたい。今日少し話しただけでも、スポーツの健康課題が見えてきたので、コミュニケーションさせていただくのが楽しみです」と意気込みを述べた。
mederiのスポーツアンバサダープログラムでは、女子スポーツの発展と女子アスリートの健康管理をサポートすることを目的とし、社会人・学生を含む6チームを対象に、オンラインピル処方、生理やPMS(月経前症候群)をはじめとした女性の健康相談、セミナーを無償提供する。
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文●工藤愛梨(SPREAD編集部)