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野球の世界一決定戦ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は10日、プールB・1次ラウンド第2戦で日本が“宿敵”韓国に大勝。序盤の劣勢を猛打で巻き返し、準々決勝進出に大きく前進した。11日第3戦チェコ共和国戦には完全男・佐々木朗希が先発する。
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■死者・行方不明者2万2318名
WBC開幕前、中国、韓国、チェコ、オーストラリアと4連戦が続く中、スポーツ番組でもどこで誰が先発登板するのか、長らく取りざたされていた。蓋を開けてみれば、わかり易いほど順当に、大谷翔平、ダルビッシュ有、佐々木、山本由伸となった。
だが、中でもひと月ほど前からチェコ戦だけは、佐々木の名が挙がっていた。それは、もちろん…としてさしつかえないだろう。チェコ戦は日本人にとって決して忘れられない日だからだ。
2011年3月11日、未曾有の大災害となった東日本大震災が発生。12都道府県にわたり死者・行方不明者2万2318名(23年3月1日現在、消防庁調べ。関連死含む)にも上った。佐々木は岩手県陸前高田市で被災。当時9歳。大津波に実家は流され、祖父母および父・功太さんを失っている。以降、大船渡市に転居、後に令和の怪物と呼ばれるようになった。
世界一を争う国際的大舞台を日本に向けた11日、現在の侍ジャパン・メンバーにおいて佐々木ほど先発にふさわしい投手はない。佐々木の先発登板は、もはや暗黙の了解だった。
もちろん、被災した過去があるから勝てる…スポーツにはそんな甘い筋書きはない。2001年9月11日、米同時多発テロ発生の年、ニューヨーク・ヤンキースはワールド・シリーズへ進出したものの、感動物語は与えられず世界一を逃している。佐々木も肉親を亡くしたから、令和の怪物となったのではない。肉親を失った者の数は、死者の数以上なのだから。
それでも、佐々木が3月11日を背負って投げるのだろう。そして、令和の怪物なら、日本に世界一の夢を見させてくれることだろう。
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文●SPREAD編集部