【甲子園】よみがえる「カット打法」の是非を問う 投手の渾身の一球をファウルで逃げることは打者の技術とほめてよいのか | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【甲子園】よみがえる「カット打法」の是非を問う 投手の渾身の一球をファウルで逃げることは打者の技術とほめてよいのか

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【甲子園】よみがえる「カット打法」の是非を問う 投手の渾身の一球をファウルで逃げることは打者の技術とほめてよいのか
【甲子園】よみがえる「カット打法」の是非を問う 投手の渾身の一球をファウルで逃げることは打者の技術とほめてよいのか 全 1 枚 拡大写真

ちょうど10年前の夏の甲子園で騒ぎがおきた。

ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平が卒業した年の夏、岩手県の強豪校になっている花巻東は2回戦で彦根東を9-5で、3回戦で現東北楽天ゴールデンイーグルスの安樂智大擁する済美を延長10回7-6で、準々決勝では鳴門を9-5で、それぞれ破り準決勝に駒を進めた。

準々決勝の相手投手は、このときは安樂ほど有名ではなかったが、今福岡ソフトバンク・ホークスで活躍する板東湧梧であった。

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■投球を意図的にファウルにする「カット打法」の是非

2回戦で彦根東投手陣の投球数は160球、3回戦では安樂が10回を完投して183球、準々決勝の板東は完投して163球も投げている。打者別の投球数は不明だが、準々決勝のころから世間と高野連の審判が騒ぎ始めた。

10年前のことで多くの高校野球ファンが覚えていると思うが、花巻東の打者が相手投手の投球を意図的にファウルにする「カット打法」を繰り返し、賛否両論が巻き起こった。板東はひとりの打者に40球も投げたと報じられている。

見かねた高野連の審判が準決勝の試合前に、意図的なファウル打ちはバントとみなす、と注意し、この打法を封じられたことが起因したとはいえないかもしれないが、花巻東は準決勝で敗退している。

このとき、非力な打者の戦法として、ルール違反でないのだからこの打者に味方する意見はプロ野球経験者からもファンからも聞かれた。県大会で認められていたことが甲子園のしかも準決勝前に禁止されるということも納得がいかないと本人も監督も思ったのではないだろうか。その意見も多かったのを記憶している。

しかし、日本語には目に余るということばがある。ファウルにするのももちろん大変な練習の結果習得した技術かもしれないが、この打法を9人がすれば相手投手は炎天下で360球も投げることになる。

いやな打者と、言葉を選ばずにいえば、不愉快な打者は違う。ルールで認められるなら相手投手がどうなろうが知ったことではない、という戦法を取り続けるのならば、審判が一定の歯止めをかけるよりほかはない。そこまであの打者がやめず、監督も手段を選ばず勝つという方針を取ったのは残念だと私は思った。

当時この欄を持ってない私はだれにも言えなかったのだが、今回この打者が全日本クラブ選手権で準決勝に進出して再び話題になったのを機に、触れておきたい事象となったのである。

■プロでも見受けられるようになった「打法」を問う

このときには呼び起こされることはなかったと記憶しているが、実はそのさらに21年前、1992年のセンバツ甲子園で同じようなことが起きている。

両手をくっつけてはいるもののフォロースルーは取らず、2ストライクから意図的なファウルを繰り返す「打法」を見かねて球審が「スリーバント失敗」を打者に宣告したのである。このときは高野連で話し合う、という機会もなく球審ひとりの判断だった。 実はプロでもこの打法がないわけではない。この夏の甲子園での騒ぎから数年経ったころ、この件でヒントを得たとは思いたくないが、意図的にファウルをする一部の主力打者が現れたことがあり、これが自分の生きる道、という発言も出たことがある。

これに対して異を唱える選手や首脳陣は他球団にもいなかったし、野球解説者も粘りの好打者と片づけていたが、他球団の投手や投手コーチは本当に納得していたのだろうか。

特段メディアではあのときの甲子園のようにはメディアには出なかったけれども、ファンの知らないところで「やはりやめるべきだ」という声が球団内部あるいは球団同士の間でもなかったのだろうか。

いつしか、内外でそのような声があったのかどうかは今もわからないものの、その当時のカット打者はその「打法」をやめている。それと同時に、レギュラーポジションを失っている。ところが、今年になって、そういう「打撃」がまたちらほら見受けられるように私は思っている。

投手がコースいっぱいの見事なストライクをそう何度も投げられるものではない。投手の渾身の一球をファウルで逃げることを打者の技術とほめてよいのか、あらためて投手と投手コーチに問いたいものである。

「球数制限が導入される世の中にあってこんなことは子供がまねしたら少年野球の投手が故障してしまう。うちの投手も疲弊する。うちの打者にもやらせないからやめようではないか。バットは打球を前に飛ばすために振るものだ」と監督会議で提唱する人はいないものだろうか。

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著者プロフィール

篠原一郎●順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授

1959年生まれ、愛媛県出身。松山東高校(旧制・松山中)および東京大学野球部OB。新卒にて電通入社。東京六大学野球連盟公式記録員、東京大学野球部OB会前幹事長。現在順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授。

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