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キックボクシング・格闘技で47戦全勝という快記録を持つスーパースター、那須川天心(帝拳)のボクシング第2戦が18日に有明アリーナで開催される。
はたして、どんな試合を見せてくれるのか。同じリングで行われる寺地拳四朗(BMB)、中谷潤人(M.T)の防衛戦と合わせて展望する。
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■世界チャンピオンを思い描けば、KO勝ちが必須
那須川は4月のボクシングデビュー戦で、当時の日本バンタム級2位、与那覇勇気(真正)に完勝した。持ち前のスピードとテクニックがボクシングでも通用することを証明した。しかし、その反面、KOできなかったことに対する「物足りなさ」を指摘する声もあった。
見る側の要求が高いのは、目指す目標が高いから。国内や東洋太平洋のタイトルを取っても、誰も満足してくれない。目標はあくまでも世界タイトル。スーパーバンタム級の世界チャンピオンは、我らが大将、井上尚弥(大橋)だ。
もちろん、現時点で将来の対戦相手にモンスターの名前は上がっていないが、気の早いファンはどうしても妄想する。最強チャンプへの挑戦を思い描くには、強烈なアピールが必要だ。本人も「(トレーナーは無理をするなというが)KOしたい気持ちは強い」と述べている。ノンタイトル8回戦で判定勝ちではトーンが下がる。KO勝ちは必須だろう。
■獰猛なファイターの姿を見せてほしい
今回の試合前に、那須川は2週間のアメリカ合宿を行った。そこでは元WBOスーパーバンタム級チャンピオン、アンジェロ・レオ(アメリカ)などとのスパーリングを精力的に行った。本人が「こんなにやらなきゃいけないのか」というほどのハードな練習だったという。
キックボクシングのときは、短ければ2カ月ほどの間隔で試合を行ってきたが、今回のインターバルは5カ月。「冬眠していたみたい」と表現するほど、試合に飢えた状態だ。試合開始のゴングから襲いかかる、獰猛なファイターの姿を見せてほしい。
■相手が誰かは関係ない。注目は天心のボクシング
今回は、1日にファン・フローレス(メキシコ)のコロナ陽性が判明し、急きょ対戦相手がルイス・グスマン(メキシコ)に変更になった。グスマンはメキシコ・バンタム級チャンピオンで、戦績は10勝(6KO)2敗。ビデオで見る限り、左右のフックを振るう右構えのファイターだ。1日に予定されていた試合が中止になったばかり、コンディションに問題はないそうだ。
しかし、相手が誰かは関係がない。みんなが注目しているのは、「那須川天心がどんなボクシングを見せてくれるか」、それだけだ。期待が大きいだけに、長くは待ってくれない。今後の2、3試合の間に世界ランカー上位選手との対戦を実現したいところだ。そのためには早いラウンドのKOが必要だろう。
■ファイターに転身した拳四朗の右ストレートが爆発する
WBA、WBCライトフライ級統一王者、寺地は、ベテランの指名挑戦者、ヘッキー・ブドラー(南アフリカ:35勝11KO4敗)と防衛戦を行う。ブドラーはミニマム級とライトフライ級でベルトを巻いたことがある元世界チャンピオン。田口良一からタイトルを獲り京口紘人(ともにワタナベ)に明け渡したことで、日本でも馴染みのある選手だ。
寺地は2021年9月に矢吹正道(緑)に負けてからボクシングが一変した。矢吹との再戦、京口との統一戦、そして4月のアンソニー・オラスクアガ(アメリカ)との防衛戦をアグレッシブなファイター・スタイルで連続KOした。ブドラーは実績のあるテクニシャンだが、寺地のパンチが動きを止めるだろう。切れ味鋭いストレートでのKO防衛を期待する。
■中谷の中盤でのKO防衛が有力
WBOスーパーフライ級チャンピオン中谷は、アルジ・コルテス(メキシコ)の挑戦を受ける。25歳の中谷は世界戦4戦4KOと全盛期に入った印象だ。最近は接近戦でのアッパーカットに威力が増し、ボクシングの幅が広がった。
コルテスの戦績は25勝(10KO)3敗2分。そのなかでは、イスラエル・ゴンサレス(メキシコ)に勝った星が光る。メキシカンらしいファイターだが、中谷のスピードに対応できないだろう。こちらも中盤でのKO防衛が有力だ。
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著者プロフィール
牧野森太郎●フリーライター
ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。