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JLPGAの2024シーズン開幕は2月29日、早くもあと2カ月を切った。そこで今回は、24シーズンの行方を占う。山下美夢有が史上2人目の3季連続年間女王を勝ち取るのか、それとも山下の牙城を崩す選手が出てくるのか。ルーキーやQT上位組など新たな顔触れも含め、今季活躍が期待される注目選手を取り上げていきたい。
◆昨季大ブレークの櫻井心那が“ハタチの誓い” 「心遣いができる女性になりたい」
■山下中心も、明愛・櫻井も強い
今季のJLPGAツアーは、昨季から1試合減の全37試合。賞金総額は1億1734万9000円減の44億円。いずれも「楽天スーパーレディース」が消滅したことによるマイナスだ。この結果、今季のオープンウィークは7月に2週設けられることになる。
さて、今季の年間女王争いも山下なしには語れないだろう。終わってみれば、昨季はまさに記録ずくめの一年だった。今季は「海外メジャー制覇」を目標に、海外メジャー5大会へのフル参戦を表明。気になるとすれば、この辺りだろう。長距離移動、環境の違い、コンディショニングなど、クリアしなければならない課題は多く、失敗したときのリスクも大きい。
一方で、打倒・山下を目指す選手として、岩井明愛と櫻井心那を推したい。以下に、山下を含めた3人の昨季の主要スタッツをまとめてみた。
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山下、岩井(明)、櫻井のスタッツ比較
ご覧の通り、山下のスタッツは圧倒的だが、昨季大きく飛躍した明愛も負けていない。特に目を見張るのがパーオン率の高さだ。ドライバーで飛ばし、ショートアイアンでピンを刺すスタイルに磨きがかかれば、年間女王戴冠も十分可能とみている。
そして櫻井だが、山下・明愛に比べるとスタッツ的には劣っている。だが逆にいえば、一番伸びしろのある選手だということ。その一番伸びしろのある櫻井が昨季4勝したのである。そういう意味では、櫻井が独走で年間女王という展開もあり得る。本人も「年間女王になりたい」「毎月勝ちたい」と貪欲で、今季どこまで化けるのか楽しみでならない。
■桑木・竹田は台風の目になるか
山下・明愛・櫻井が年間女王争いの1番手とすれば、2番手グループとして、小祝さくら、岩井千怜、菅沼菜々、原英莉花を挙げたい。いずれも実績があり、計算できる選手たちだ。そして3番手グループには、昨季成長著しかった桑木志帆、蛭田みな美、竹田麗央の3人を抜擢したい。
ここからは桑木・蛭田・竹田の3選手について、直近2年の主要スタッツを比較しながら、昨季成長著しかった点と、今季の課題について触れていく。
桑木は昨季、優勝回数0でただ一人、メルセデス・ランキングのトップ10入り(10位)を果たした。その要因は一言でいえば、ショットメーカーとしての精度向上にある。
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桑木志帆、直近2年のスタッツ比較
22シーズンに比べて、パーオン率、平均パット数、平均バーディ数、フェアウェイキープ率がいずれも大きく改善され、10~20位台の好順位につける結果となった。持ち前の総合力に磨きがかかったといえ、今季も改善が進めば、初優勝は間違いないところだろう。
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蛭田みな美、直近2年のスタッツ比較
同じくショットメーカーの蛭田も各スタッツを伸ばした。新たなトレーナーと体調管理や体づくりを見直し、ドライバーの飛距離を10ヤード伸ばすことに成功。その分、短い番手で2打目が打てるようになり、パーオン率も向上したという。アマチュア時代に日本女子アマ、日本ジュニアの2冠に輝いた大器が、昨季後半からついに本格化した観がある。あとはパット次第で、メルセデス・ランキングのトップ10は十分射程圏内といえる。
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竹田麗央、直近2年のスタッツ比較
竹田も各スタッツを大きく向上させた。前出の櫻井のスタッツと比べても遜色ない数字を残している。唯一伸ばせていないのが平均パット数で、竹田の課題はまさにパッティングということになる。逆にパットが良くなれば、すぐに2勝、3勝してもおかしくない。
特に桑木と竹田は、今季早い段階で初優勝できれば、台風の目になる可能性を秘めている。
■安田、鶴岡の初優勝にも期待
最後に今季初優勝が期待される選手、ルーキーやQT上位の新顔選手について触れておきたい。初優勝については期待される選手が多いが、前述の桑木と竹田に加え、プラチナ世代の安田祐香、はざま世代の鶴岡果恋を挙げたい。ともに、昨季は飛距離が伸び、パーオン率が上昇、複数回の優勝争いを経験している。今季こその思いは強いはずだ。
QT上位組では、“セクシークイーン”ことアン・シネ(韓国)の復活。平均266.00ヤードを誇るジャンボ軍団の究極の飛ばし屋・小林夢果に注目したい。ルーキーでは、6度目の挑戦で合格をつかみ、新人戦でも優勝した髙木優奈。稲見萌寧の妹分、ショットメーカーで爆発力のある吉澤柚月らが、前半戦どんな戦いをするのか注視していきたい。
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文●河野道久