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30日から、アメリカ、ペンシルバニア州のランカスターカントリークラブで全米女子オープンが開催される。
全米女子オープンといえば、フェアウェイやグリーンを外した時に、難しい状況になるラフが特徴的。長くしたり、長さはなくても、入ると‟スポッ”とボールが沈むようにセッティングされていることが多い。
そのような状況からは、どのようなことに注意して打つべきなのだろうか。
一般ゴルファーも、全米女子オープン並みではないにしても、長いラフや沈むラフからショットを強いられる場合がある。そうなった時のために、ラフの対応は知っておくべきポイントだろう。
グリーン周りからのアプローチショットは、今回の全米女子オープンで初のメジャー制覇を狙う、畑岡奈紗の打ち方が参考になる。畑岡は昨季のSG:アラウンド・ザ・グリーンが14位だ。
◆「ひとつの大きな目標…いつか勝ちたい」 畑岡奈紗は“特別な”全米女子OP制覇へ全集中
■全米女子オープン2023での畑岡奈紗
畑岡は昨年の全米オープンでは優勝を争った。第3ラウンド終了時に単独トップに躍り出て最終日に最終組でプレー。バック9で後退したものの、メジャーのタイトルを持つにふさわしい選手であることをあらためて感じさせた。
グリーン周りからのショートアプローチに関しても、米女子ツアーでの経験値を随所に見せた。
第3ラウンドの11番ホールではグリーン左のボールが少し沈んだライから距離を合わせてパー。16番ホールでも、グリーン奥のボールが少し沈んだライからのアプローチとなったが、そこではジャストタッチでチップインバーディを奪取した。
いずれも、打ち方に注目してみるとフォロースルーは小さめ。
グリーン手前の花道から寄せてパーを拾った15番ホールのアプローチショットとは、フォロースルーのクラブヘッドの出方が違うことがわかる。
芝が綺麗に刈られたライからのアプローチショットでは、フォロースルーで感じを出すようにボールを運んでいた。
■ラフからのアプローチショット
ラフからはボールをクリーンにヒットすることはできない。ボールとクラブヘッドの間に芝が挟まる形でインパクトすることになる。
腕力に頼ってボールをクラブヘッドで押し運ぼうとすると、クラブヘッドが芝の抵抗に負けやすくなる。「ならばもっと強く」と、より腕力を使おうとすると、スイングバランスが崩れてミスヒットしやすくなる。
インパクト時の芝の抵抗が強いほど、クラブの重みを使ってスイングをする必要がある。ボールをクラブヘッドとの衝突で飛ばすイメージだ。
体の回転と合わせて‟ストン”とクラブヘッドを落下させることで、“適度な”ダウンブローになるため、腕力を使わなくてもボールに力が伝わりやすくなる。
そのイメージを表現できた場合、フォロースルーは小さくなる。それが、畑岡のアプローチショットを見ても表れている。
ただ、無理にクラブにブレーキをかけてフォロースルーを小さくしてはいけない。過度にグリップ圧が強まることなく、自然にフォロースルーが小さくなるスイングをしたい。
芝が長くなるほど、ボールが沈む度合いが強いほど、フォロースルーは小さくなる。
上からのぞきこむようにしなければボールが見えないほどの、ラフの長さと沈み具合のライでは、フォロースルーを取らないで打ったりする。スイングはインパクトで終わり、といった感じだ。
■今回の開催コースは日本人選手と好相性か
畑岡は、2023年大会だけでなく2021年大会でも優勝にせまった。この時は笹生優花とのプレーオフの末の2位だった。
2021年、2023年の惜敗、敗北。メジャータイトルに対する意識は人一倍強いであろう畑岡だが、中でも全米女子オープンへの想いは強いのではないだろうか。
2015年の全米女子オープンはランカスターCCで開催された。アマチュアだった畑岡は出場していないが、日本勢では大山志保が5位タイに入った。また、初出場の葭葉ルミが14位タイに入った。
ランカスターCCは日本人選手と好相性かもしれない。
初のメジャー制覇を狙う畑岡の、難しいコースセッティングで耐え抜く、グリーン周りからのアプローチショットに注目だ。
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著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。