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前半戦も終了し、オールスターブレイクとなった今年のMLB。ドジャース移籍1年目からチームを牽引する大谷翔平は、投手としてのリハビリ期間中にも関わらず、圧巻の活躍をみせている。後半戦もこの勢いを保てれば「50本塁打&30盗塁」や日本人初のトリプルスリーなど、数々の偉業達成も見えてくる。
しかし、そんな大谷でも過去にDH専門でMVPを獲得した選手がいないことを考えると、MVPは至難の業と言えるだろう。大谷の“タイトル独占”に待ったをかけるライバルたちの存在が、今季のメジャーリーグを非常に面白くしている。この記事では、編集部が独自に選出した前半戦MVPとサイ・ヤング賞を各リーグそれぞれ紹介する。
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■前半戦MVP
ナ・リーグMVP:ハーパー(ナショナルズ)
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フィリーズのブライス・ハーパー(C)Getty Images
前半戦を62勝34敗、勝率.646とナ・リーグ東地区で首位をひた走るフィリーズ。地区は異なるものの、同リーグのドジャースの勝率.577を大きく上回るなど前半戦終了の時点でメジャー最強を誇るチームを牽引しているブライス・ハーパー内野手を、前半戦のMVPに選出したい。
打率、本塁打、打点、OPS,長打率といった主要な打者数値すべてでトップ5入りしているハーパーだが、この数値だけをみれば、そのすべてを大谷が上回っている。しかしながらDH専門の大谷と比較して、ハーパーは一塁での守備でもチームに貢献しているという点はやはり加味すべきポイントだろう。実際に、ナ・リーグ最高勝率を挙げているチームにおいて、打率と本塁打の二冠に輝いていることを考えても“チームを勝たせている選手”として最大限に評価したいところ。前半戦終盤に怪我での欠場が続いたが、オールスター前に復帰したことから後半戦の出場も問題なさそうだ。
ア・リーグMVP:ヘンダーソン(オリオールズ)
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オリオールズのガナー・ヘンダーソン(C)Getty Images
2022年にメジャーデビューし、昨季の新人王を獲得した22歳が圧巻の活躍をみせている。オリオールズのガナー・ヘンダーソン内野手はここまで、打率、本塁打、打点、安打数でチームトップ。激戦区であるア・リーグ東地区の首位を走るチームの原動力となっている点を評価し、前半戦のMVPに選出した。
リーグ全体で見ても、打率こそトップ10入りしていないものの、本塁打数はアーロン・ジャッジ外野手(ヤンキース)に次ぐ2位で、打点5位、OPS4位という好成績。そして打撃だけでなく、守備や走塁といった総合的な貢献度を図る「WAR」でもジャッジに次ぐ数値を叩き出していることから、チーム勝利への貢献度が高いと言える。新人王の翌年にMVPという史上5人目の快挙達成にも期待が高まる。
■前半戦サイ・ヤング賞
ナ・リーグ サイ・ヤング賞:スキーンズ(パイレーツ)
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パイレーツのポール・スキーンズ(C)Getty Images
5月のデビュー以降、圧巻の活躍をみせているパイレーツのポール・スキーンズ投手を前半戦サイ・ヤング賞に選出した。最速164キロの剛速球を武器に、ここまで11先発し負けなしの6勝とナ・リーグ中地区で3位、48勝48敗の勝率.500にとどまっているチームの中で奮闘を続けている。自身もアマ時代に二刀流として活躍するなど、大谷へのあこがれを持っているスキーンズ。初対決では全球ストレートで空振り三振、2打席目ではそのストレートをバックスクリーンに叩き込まれるなど、大谷との“力と力”の勝負は非常に見応えがあったことでも記憶に新しい。
登板数が少ないものの、前半戦最終登板では7回11奪三振のノーヒット投球を見せるなど、メジャーによりアジャストしてきている。18先発13勝で復活を印象付けたクリス・セール投手(ブレーブス)、フィリーズのエースであるザック・ウィーラー投手などライバルは非常に多いものの、このままの活躍を見せれば「新人王&サイ・ヤング賞」のダブル受賞も決して夢ではない。
ア・リーグ サイ・ヤング賞:タリク・スクバル(タイガース)
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タイガースのエースで球宴にも出場したタリク・スクバル(C)ロイター
今季開幕投手を務めたタイガースのタリク・スクバル投手が5年目にして飛躍のシーズンを送っている。肘の手術を終え、昨季シーズン中盤から復帰すると15試合に先発し7勝を挙げるなど活躍の片鱗をみせていた。今季は前半戦終了時点ですでに10勝とキャリアハイ。特に印象的なのがその制球力の良さだ。116回を投げ、与四死球27。奪三振と与四球の比率で制球力を示す数値であるK/BBは6.67とメジャートップクラス。防御率もリーグトップの2.41と非常に安定感のある活躍をみせている。
100マイルに迫る速球の力強さに加え、チェンジアップ、シンカー、スライダーといった多彩な変化球を投げ分けるクレバーさは、まさに“剛柔を兼ね備えた”投球スタイル。ライバルはオールスターで先発を務めたコービン・バーンズ投手(オリオールズ)、リーグトップの勝ち星(11勝)で並ぶセス・ルーゴ(ロイヤルズ)やグレイソン・ロドリゲス投手(オリオールズ)らだが、前半戦の活躍をみればスクバルがサイ・ヤング賞最右翼だといえるだろう。
大谷が打者一本でどこまで数字を伸ばしMVPに近づくかに加え、今回独自選出した4選手の活躍にも注目しながら後半戦を楽しんでみてほしい。
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