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昨季米ツアーで大きな結果を出したのが古江彩佳だ。メジャー、エビアン選手権を制しただけでなく、平均ストロークで1位に輝いた選手に贈られるベアトロフィーを獲得。
米ツアー公式スタッツでの平均ストロークは3位だったが、1位のジーノ・ティティクルと2位のネリー・コルダは、ラウンド数などのベアトロフィー獲得条件をクリアしていなかったため、古江がタイトルを獲得した。
世界ランキングは一時6位になるなど、日本女子ゴルフ界のエースと称されても不思議ではない活躍を見せた。
昨季のドライビングディスタンスが134位。飛距離が出る方ではない古江は、バーディを量産してスコアを伸ばすというよりも、ボギーを打たないゴルフをする。
ボギーなしでラウンドする‟ボギーフリー”が日本ツアーで代名詞になっていた時期もあるほど安定感が秀でていたが、ベアトロフィーを獲得したということは米ツアーでもその状態に近づいてきているようだ。
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■昨季のボギーフリーのラウンド数で1位
昨季のボギーフリーのラウンド回数は15回で1位だった。これは、他の選手よりも比較的多く試合に出場していることも影響しているが、ボギー(以下含む)を打つ確率が11.17%で1位。昨季の古江は、最もボギー(以下含む)を打たなかった選手である。
ボギーを打たない、というと、守りのイメージがあるかもしれないが、バーディ率も低くない。20.91%で22位。バーディとボギーの比率は1.89で3位だった。
パー5では、他の選手よりも遠い地点からグリーンを狙うことになるため、平均スコアが32位タイだが、パー3の平均スコアは1位。トータルで見た場合、同じ地点からグリーンを狙えるのであれば古江が世界ナンバー1、と言えるようなスタッツを記録した。
古江のSG:ティートゥグリーンは18位。SG:パッティングは6位。ショットよりもパットを強みにしてスコアを作っているが、パーオン率が7位、ボールストライキングが19位となっていることからもわかるように、飛距離のハンデを感じさせないショット関連の記録を残した。
■スイングの形よりも‟リズム”
古江のスイングはオーソドックス。方向の安定性が出る要素が詰まっている。
まず、クラブを短めに持っている点があげられる。ドライバーでもグリップエンド側を余らせ、短く握っている。こうすることで、腕とクラブの一体感が高まるのだろう。スイング中は頭の位置が変わらない。クラブが長くなるほど、頭が動きやすいが、古江はドライバーショットでも頭が動かない。
そして、レイドオフのトップオブスイング。トップの位置でシャフトが飛球線よりも左を向かせることで、切り返しのクラブのねじれを抑えながら、フラットなスイングプレーンを描いている。
古江のスイングを解説するとこのような感じになるが、古江本人は、スイングの形よりもリズムを大切にしているようだ。リズミカルにスイングできれば、結果的にトップは良い位置に収まるし、プレーンはフラットになる、というイメージで、自身のスイングをとらえている。
また、古江は緊張したことがないようで、心がけているのが‟自然体”。「試合、ということを強く意識すると良くない、という経験をしてきた」とのこと。一打一打に気負わずのぞんでいることが、再現性高くリズミカルにスイングすることにつながっているのだろう。
■第1Rの勢いを保てば年間女王も視野
総合的に見ると安定感が高いプレーを見せた古江だが、第1から第4のラウンドごとのデータからは、勝負どころでスコアを伸ばしきれていないことがうかがえる。
平均スコアを見ると、第1ラウンドが69.70で2位。第2ラウンドが69.91で7位。第3ラウンドが69.83で18位、第4ラウンドが70.60で30位。各大会期間中、試合が進むにつれてスコアが下がる傾向だった。
今季の古江には、決勝ラウンドでも予選ラウンドの勢いを失わずに戦ってもらいたい。今季米ツアーは3戦が終了したが、その3戦すべてに出場し、すべての大会でトップ25に入ったのは3人で、その内の一人が古江。
さらに調子を上げ、持ち前のボギーを打たない安定感抜群のプレーで、2年連続ベアトロフィー獲得だけでなく、年間女王を争う活躍を期待したい。
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