
「皐月賞 傾向」で検索すると必ず表示される「10年間の種牡馬成績」。
「ディープインパクトが3勝であとはバラバラかぁ」などという安易な見方で終わってしまう方は、あまりにもデータを無駄使いしている。データは掘り下げてこそ馬券に繋がる重要ファクター。
まずはこの種牡馬成績にメスを入れ、皐月賞に隠された思惑を解剖する。
◆【皐月賞2025予想/危険な人気馬】想定3人気内を“消し” シンエンペラーも馬券外の「0.0.0.9」全滅データ該当
■種牡馬成績のバラツキには社台SSの影が……
競馬場や芝・ダート、距離、レースの格など条件により種牡馬成績の偏りが見られるのは当然のこと。でなければ血統による予想など成り立つわけがない。ところが10年間の皐月賞における勝ち馬はディープインパクトの3勝を除く7勝が全く違った種牡馬たちによるもの。
この違和感は何だろう?導き出した答えが下図だ。

2015~24年 皐月賞勝ち馬種牡馬成績
ご覧の通り不思議なデータが表れた。
キズナ産駒が皐月賞に初年度産駒として初出走したのは2020年。そして昨年ジャスティンミラノが産駒2戦目で勝利している。同様にキタサンブラック産駒は2023年に産駒2戦目で、ドレフォン産駒は22年に初年度産駒で、エピファネイア産駒は21年産駒1戦目、ロードカナロア産駒も19年産駒2戦目、18年はオルフェーヴルが初年度産駒で勝利している。
以前、社台の募集馬見学ツアーでノーザンF場長(当時)秋田氏と、昼食をご一緒したことがある。その時、秋田場長は「うちの若い連中は1、2年で新種牡馬の仔の育成方法を見つけちゃうんだよね」と熱く語ってくれた。
労せず初年度産駒から能力を発揮する種牡馬もいるが、多くの場合は種牡馬デビュー2年目以降に産駒育成方法を確立することが重要。飼葉や放牧、調教など工夫しながら各種牡馬産駒のベストな育成方法を見つけ出す。
これはまさしくノーザンFスタッフの能力やノウハウの裏付けの現れ。『馬を知り尽くした人から聞いた言葉』だからこそ改めてその重さを感じると同時に、それが皐月賞のデータとして表面化していることに驚く。
■種付料で稼ぐのが、社台SSの生業
それにしても妙なのが、このデータが皐月賞にしか現れていないところ。他のレースにこれだけ顕著な例はほぼなく、連動するはずのダービーでも「近年」は見られていない。「近年」としたのは、
1993年ウイニングチケット(トニービン初年度産駒)1994年ナリタブライアン(ブライアンズタイム初年度産駒)1995年タヤスツヨシ(サンデーサイレンス初年度産駒)
がそれぞれ勝利。筆者はこのパターンに気づいて、1996年に勝利したフサイチコンコルドとビワハイジ(ともに持込のCaerleon産駒で1戦目)の2頭からダンスインザダークに流して馬連2点で大儲けした経験があるからだ。
話を戻すが皐月賞のこのデータには必ず社台スタリオンステーションの種牡馬が絡んでおり、ほとんどの競走馬が社台系牧場で生産・育成されていることも注目に値する。
GIを勝てば種牡馬の種付け料も当然上がる。すなわち「新種牡馬は皐月賞で結果を出して価値を上げる」という社台スタリオンステーションを核とした『社台グループ全体のシナリオ』があるのかもしれない。
今や皐月賞は「社台スタリオンステーションの新種牡馬展示場」。種牡馬の経歴を知ることが、皐月賞攻略への一つのカギであると言えるだろう。
■王道路線・弥生賞組の復権なるか
2015年からの10年間と、それ以前の2005年から14年の10年間では皐月賞好走の前哨戦が大きく様変わりした。筆者同様、オールドファンなら共感いただけるだろう。2015年~24年の主流は共同通信杯とホープフルS、2005年~14年は弥生賞とスプリングS。

皐月賞好走の前哨戦一覧
今年は番組変更によりスプリングSが2回中山8日から2回6日に、弥生賞の翌週に変更。皐月賞との間隔が中3週から中4週に1週間延びた。
これにより前哨戦を3月に考えていた陣営は、弥生賞かスプリングSの2レースからより選択しやすくなった。「同厩舎や同馬主での使い分け」「相手関係を見極めての出走」など…。とくに皐月賞を本気で狙う陣営にとっては、この2レースに有力馬が分散することは願ってもないところ。
多くの陣営は「皐月賞の前に大きな消耗はしたくない」と考えており、それゆえに近年の主流前哨戦を共同通信杯またはホープフルSとしてきた。
それが番組変更による有力馬分散で「相手関係を見極めての出走」が可能なら、弥生賞またはスプリングSに検討の余地が出てくる。言わずもがな弥生賞は皐月賞と同条件。ここを楽に経験できれば大きなアドバンテージとなる。もしかすると弥生賞の王道路線復活元年となるかもしれない。
■人気薄から高回収率を目指せ
極端に硬くもなく大荒れも少ない皐月賞。できれば人気薄を軸に絞って買いたい。
今回のデータにピッタリなのはヴィンセンシオ。父はリアルスティールで産駒2戦目。リアルスティールは昨年ブリーダーズ・スタリオン・ステーションに移動してしまったものの、2023年64勝のリーディング24位から25年3月末時点で26勝の6位に大躍進中。
ここを勝てば社台スタリオンステーションへの復帰があるかもしれず注目だ。ヴィンセンシオ自体は中山芝2000mの葉牡丹賞で1分58秒8のレコード勝ちがあり、前走「今回はあくまで皐月賞への前哨戦でしかない」と稍重の弥生賞へ。プラス10キロの仕上がり途中ながら際どい2着。上積みと経験に期待したい。
もう1頭はカラマティアノス。父はレイデオロで産駒2戦目。前走の共同通信杯は外伸び馬場を内から伸びての惜しい2着。脚質から距離が伸びても大丈夫なタイプ。
父のレイデオロは昨年50勝の26位で成績がイマイチ。今年が正念場なだけに『社台グループ全体のシナリオ』的にはこちらの方が狙い目かもしれない。
◆【皐月賞2025予想/危険な人気馬】想定3人気内を“消し” シンエンペラーも馬券外の「0.0.0.9」全滅データ該当
◆【皐月賞2025予想/前走ローテ】単勝回収値「437」の伏兵に穴妙味 「0.0.1.7」のサトノシャイニングに灯る“黄信号”