
今週は、牝馬のマイル最強馬決定戦・第20回ヴィクトリアマイル(GI、芝1600m)が東京競馬場で行われる。
一昨年の阪神JF覇者アスコリピチェーノに、昨年の桜花賞馬ステレンボッシュと2頭のGI馬が参戦。対するは前哨戦の阪神牝馬Sを制したサフィラ、福島牝馬Sを制したアドマイヤマツリをはじめ、金鯱賞など重賞3勝のクイーンズウォーク、チャレンジCなど重賞2勝のラヴェル、ターコイズSを制したアルジーヌ。さらに中山牝馬S覇者シランケド、最強の1勝馬ボンドガールなど、マイル女王を狙う猛者たちの激しい戦いが見られそうだ。
そんな中、GI2勝目を狙うアスコリピチェーノが、今回の「危険な人気馬」の標的となる。
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■前走1着はなぜか勝てない……最強牝馬でなければ消しでも
久々のGI制覇を狙うアスコリピチェーノ。2歳時は無傷の3連勝で阪神JFを制したが、昨年春は桜花賞、NHKマイルCともに2着と惜敗。秋の京成杯AHを制して、勇躍挑んだ豪州の超高額賞金レース・ゴールデンイーグルでは外枠発走やスタート直後の不利などもあって、キャリア初の12着に大敗。不完全燃焼の一年となった。
今季初戦はサウジアラビアの1351ターフスプリントに参戦し、ウインマーベルとの一騎打ちを制して海外の重賞で初勝利。間隔を空けて帰国初戦の今回は実績面でも優位に立ち、負けられない一戦といえよう。しかし、絶対的な存在かと問われると疑問符は付く。
アスコリピチェーノは1番人気に支持される公算大。しかし、過去10年のヴィクトリアマイルで、1番人気の成績は【2.2.2.4】と馬券内率60%を誇るものの勝った2頭は2020年アーモンドアイ、21年グランアレグリアで、いずれもすでに牡馬相手にGI勝ちを収めていた。つまり、牡馬勝りのスーパー牝馬じゃないとヴィクトリアマイルは勝つことができず、牝馬限定のGI勝ちによる実績で1番人気に推されていても意外と勝ち切れないのがこのレースの特徴だ。
また、前走1着馬が【0.3.1.33】と勝ち切れていない点もアスコリピチェーノにとって懸念材料。1351ターフスプリントからの臨戦といえば、22、23年のソングラインと同様のローテとなるが、同馬は22年は1351ターフスプリントを制して臨んだヴィクトリアマイルは5着に敗退。一方、23年は1351ターフスプリントで10着に大敗したものの、ヴィクトリアマイルは1着と巻き返しで奏功している。果たして、アスコリピチェーノは前走勝ってしまったことが本番に繋がるのだろうか。
ダイワメジャー産駒はマイルでの9勝を含む、GI10勝をマーク。ただ良績は2~3歳時に集中しており、古馬でのGI勝ちは14年高松宮記念を制したコパノリチャードのみ。古馬になってマイルのGIを制した例はなく、牝馬に限るとマイルGIは【0.0.1.13】の成績で、22年ヴィクトリアマイル3着のレシステンシアが唯一馬券圏内に入っただけ。この点もアスコリピチェーノにとってはマイナス材料だ。
先週のNHKマイルCでは3連単150万馬券が飛び出す荒れた一戦となったが、07年のNHKマイルCでピンクカメオが制して、973万馬券が飛び出した翌週のヴィクトリアマイルも、コイウタが制して228万馬券となった。荒れ相場は連動することが多いが、今年もその傾向に合致するのではないか。アスコリピチェーノは、1番人気に支持されるようであればそこまで信頼できるほどのスーパー牝馬ではなく、不安要素の多い前走1着馬。そして古馬GIで勝てないダイワメジャー産駒と妙味ほどの信頼度はなく、少なくとも「頭」勝負は避け、場合によっては「消し」でいってみたい。
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◆著者プロフィール
石川豊●いしかわゆたか20代から競馬メディアに寄稿。「ユタカ人気」と言われた時代、武豊が騎乗する過剰人気馬をバッサリと切り捨てる馬券術を駆使し、年間回収率100%超に成功。以来、「1番人気の勝率は3割」を念頭に、残り7割の可能性を模索し、「危険な人気馬」理論を唱え続ける。